23/06/29(木)00:00:55 泥の運命 のスレッド詳細
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23/06/29(木)00:00:55 No.1072742060
泥の運命
1 <a href="mailto:シン・企画主">23/06/29(木)00:12:31</a> [シン・企画主] No.1072745664
メニューバーに企画追加しておきました これもうオリジナルでいいですよね それにしてもメニューの企画もだいぶ増えたなぁ そろそろ折りたたみも考えたほうが良いのかもねぇ……
2 23/06/29(木)00:39:33 No.1072754750
思えば企画も色々やったもんだな
3 23/06/29(木)00:44:14 No.1072756432
お風呂の続きを書きました fu2316470.txt
4 23/06/29(木)00:48:42 No.1072758075
風呂スチルCGシーン来た
5 <a href="mailto:1/4">23/06/29(木)00:57:08</a> [1/4] No.1072761064
湯船の向こうで亞海が何やらどぎまぎとしている。 対面で湯に浸かる己のサーヴァントを忙しない動きでまじまじと見たり、縮こまって目を逸らしたり。 セイバーは自分の中にその原因を探し、そしてとんと思い至らなかった。 英雄色を好むというか、そういった愛には事欠かない人生だった“らしい”が、現代の少女の心理となると勝手が違う。 これといった不手際もないはずだ。指南されたように体を洗って入ったし、湯に髪も浸けていない。 であれば亞海から指摘されるまでは気にしないでおいていいだろう。 亞海に気づかれない程度に小さな溜め息をセイバーはついた。不快だからではなく、快さによって。エーテルで編まれた仮初めの身体を湯水が温める。 風呂はいい。水に浸かるという行為がそもそも好きだ。冷水を掻き分けて泳ぐのもいいが、温い水に包まれるのも心地よくていい。 だがセイバーにはそれが『どちら』の記憶によるものかが分からなかった。 カール大帝の人生。そして彼をシャルルマーニュという物語にするために消費されたある英雄の人生。 どちらの好みだったのだろうか。割合鮮明に存在するカールの記憶は『彼』が水泳や温泉を愛したと如実に語る。
6 <a href="mailto:2/4">23/06/29(木)00:57:22</a> [2/4] No.1072761139
では名も無い『彼女』はどうだったのだろう。同じだったのか。そんな気はする。だが確証はない。 この霊基は叫んでいる。はっきりと残るカールの記憶も、おぼろげでしかない名のない英雄の記憶も、そのどちらもが『存在した』と告げている。 だからこそセイバーは常に苛まれていた。片側を無かったことにされたという空虚感。それを埋めたいという飢餓感。 自分ひとりなら耐えればいい。だが自身を取り巻いていたあらゆる瑞々しきものまで奪われるのは我慢ならない。 思い出せさえしないそれらがかけがえのないものだったという認識がセイバーの心に爪を立てる。 だのに座は『彼女』をシャルルマーニュであると認めた。塗り潰されるに足る存在であったと定めてしまった。もう覆ることはない。 座から立ち去り己を無に帰すという願いはそれに対する細やかで惨めな、だが純真たる抵抗のはずだった。 「………」 「うぇ。え、えっと………ど、どうしたのかなセイバー」 「はい。改めて見るとツグミは可憐な少女だと再認識していました」 「か、かれんっ!?」 見つめていた理由を素直に答えると亞海は顔を真っ赤にしてぶくぶくとあぶくを吹きながら湯船に沈んでいく。
7 <a href="mailto:3/4">23/06/29(木)00:57:38</a> [3/4] No.1072761251
そう、亞海。この少女がセイバーを変えてしまった。 最初は気に入らない主だった。功名心に逸る愚かなマスター。それはそれでいい。願いさえ叶うならば。そう思っていた。 だが共にある内に必要以上に感じていった苛立ちの理由を今のセイバーは理解できる。 ───同じだった。彼女は己の写し身だった。 無念と後悔でわんわんと泣きじゃくる亞海を見た瞬間に雷に打たれたような気持ちになった。 これは私だ。無力感に打ちひしがれて何もかも投げ出す前の私。ただ認められたいというあまりにも幼く、しかし原初の願い。 何よりも自分自身が自分を認められないから、誰の視界に入っても決して満たされることがない少女。 見限ったはずなのに目が離せないはずだった。この子こそがお前が諦めて忘れたことにしたものだと突きつけられていた。 それに気付けたことでセイバーの中で膨らんでいた亞海への嫌悪感は今ではひっくり返っている。 支えたい。この何でも器用に熟そうとする不器用な主のことを。亞海の行き着く先が何処だとしても、彼女が善き道を歩めるよう。 この聖杯戦争で自分のように絶望と諦念で自らを砕いてしまわぬように、そんな運命から亞海を守りたい。
8 <a href="mailto:4/4">23/06/29(木)00:57:50</a> [4/4] No.1072761316
「そ、そのっ!セイバーもすっごく綺麗だと思うよっ!身長高いし、スタイルいいし、肌にも艶があって………」 「ありがとうございます」 ざぶんとにじり寄って───年齢不相応な豊かな実りがたぷんと揺れた───真剣な表情で言う亞海にセイバーは目線で礼を返す。 ………だがその決意は亞海を最後まで注視するということ。セイバーは懸念する。 我が願いを見つめ直すということ。人理にさえ踏み潰された『彼女』の世界が確かにあったと認められて欲しいという、聖杯にさえ叶えられぬ真の願い。 未だにそれを希求する心がある一方で、亞海の存在は果たしてそれで本当のいいのかという自問自答を呼び起こす。 自分の存在を全て消し去って『それは決してシャルルマーニュの物語ではなかった。ひとつの世界があり、人々が息づく物語があった』という慰めを最期に与えたいという願い。 いわば諦めであり逃げであるその思いは、亞海が自分自身を諦めないように支えるという己の決心と矛盾しているのではないか。 矛盾していたとして、聖杯でも解決できない己の中の問題とどういうふうに向き合えばいいのか。 私はそれに、どのような決着を用意すればよいのだろう───?
9 23/06/29(木)01:37:12 No.1072770607
なんかこう すごい湿っぽい すごいじめっとしている