ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
23/06/28(水)00:12:52 No.1072390157
どうして、こうなったんだろう。 「……良かった。私の耳カバー、サイズがピッタリで。ちょうど予備があったから……」 「本当に、アヤベさんとそっくりですねぇ」 アドマイヤベガとカレンチャン。ダービーウマ娘と短距離女王にしてウマスタグラマー。 どちらもテレビの向こう側でしか見たことがないウマ娘で、一般人の俺とは無縁の筈だったのに。 「……やっぱり、服はこのままでも……」 「ダメよ」「ダメです!」 この二人に、こんな間近で。パーソナルスペースを踏み越えるくらいの距離で絡まれる日が来るなんて。本当に、どうしてこうなったんだろう──俯き、溜息を吐く。 足元に落としてしまったスマホの真っ暗な液晶の中で、アドマイヤベガに瓜二つの顔が、眉根を寄せていた。
1 23/06/28(水)00:13:37 No.1072390413
少し遠出をして山に星を観に来たら、ウマ娘になってしまった──なんて、昨日の自分に言っても信じはしないだろう。星を見上げていたら突然青い流れ星が自分目掛けて降ってきて、全身が光に包まれて、光が収まった頃には身体が変わってしまったなんて。 それも、あのダービーウマ娘、アドマイヤベガそっくりの姿になるなんて。 最初は夢か幻覚を見ているのだと思った。急に服や靴がダボダボになって、かと思ったら胸が丸く膨らんでいて、まさかと思って股間に手を伸ばしたら無くて、耳の感覚が何か変で、鏡の代わりにスマホで自分を見たらアドマイヤベガが映っていて──と。 「……! あなたは……!」 さらに畳み掛けるように、本物のアドマイヤベガがやってきて── 「アヤベさーん! 急に走り出してどうしたんですか!──え?」 ちょっと遅れて、カレンチャンもやってきて── 「……っ!」 驚いている暇も無く、アドマイヤベガに思いっきり抱き締められて──
2 23/06/28(水)00:14:09 No.1072390592
「……ごめんなさい……あの子だと、思ったから……」 痛いぐらいにアドマイヤベガに抱き締められスマホを落としてしまい、カレンチャンは「アヤベさんが二人……!?」と驚くばかりで──二人が落ち着くまでに、体感的には一時間くらいかかった気がする。 「でも、カレンもビックリしちゃいました……どう見てもアヤベさんにそっくりなんですもん」 「……えぇ、そうね……」 カレンチャンの丸く大きな瞳がじっとこちらを見てくる。アドマイヤベガも遠慮がちに視線を送ってくる。そして俺自身が、誰よりも驚いている。 「……あの、ちょっと聞いてもらってもいいかな。俺、実は──」
3 23/06/28(水)00:14:47 No.1072390798
本当は自分が人間の男性であることと、不思議な体験で瞬く間に身体が変わってしまったこと。 到底信じてもらえないだろう、自分でも信じられないのだから──なんて気持ちで二人に状況を説明したら、驚くことに二人とも否定することなく頷いてくれた。 「……私も、見たから。あの流星がこっちに向かって落ちてくるところを」 「確かに不思議なお話ですけど……でも、仕草とか、喋り方とかで……元々は男の人って言われた方がしっくりくるんですよね。その格好もヘンですし」 ……しかしこの二人に信じてもらえたからといって、どうにかできるものでもない。急にウマ娘の肉体に変えられて、所持品はダボダボになってしまったスーツと金の入っていない財布だけ。免許証も保険証も今の俺の身元を保証してくれはしないだろう。 「これから……どうしよっかなぁ……」 「そうね……まずは、服からかしら」 「同感です。何をするにしても、その格好は……めっ、ですね!」 「……はい?」 そして、話は冒頭に戻る。
4 23/06/28(水)00:15:59 No.1072391196
ピクピクと震える俺の耳はアドマイヤベガに着けられた耳カバーに覆われている。確かに無いよりはある方がしっくりくる。 だが── 「……いや、大丈夫だよ。心配してくれてるのは嬉しいけど……他人だし、俺に構わなくても……」 「そういう訳にはいかないわ……あなたを、見つけてしまったもの」 「カレンもです! 困ってる人を見過ごすなんてカワイくありませんから!」 「あ、いや……その──っ!?」 二人の勢いに押されてたじろぐばかりで。思わず数歩後退りすると、ずり落ちかけたズボンに足を引っ掛けて、思いっきり尻餅をついてしまって。 「きゃっ!?」 しまいには、女の子みたいな悲鳴をあげてしまった。
5 23/06/28(水)00:16:25 No.1072391334
「大丈夫っ!? 怪我は!? もしかして脚が……!!」 「落ち着いてくださいアヤベさん!……大丈夫ですか?」 血相を変えて詰め寄ってくるアドマイヤベガとカレンチャン。足元は柔らかい芝だったため、お尻はそこまで痛くはない。 「……う、うん……だ、大丈夫……ぅ」 「本当に大丈夫なの……? 今すぐ病院に……」 「……ああ、なるほど。アヤベさん、多分大丈夫だと思いますよ」 声をあげてしまったのは、尻餅を付いただけで大きく揺れた胸と、その先端がシャツに擦れて与えられた刺激に対して。 思わず両胸を抱えるように丸くなる俺に、アドマイヤベガはオロオロと手をこちらに伸ばしては躊躇うように引っ込める。そんな彼女とは対照的に、カレンチャンは全てを察したように小さく頷いていた。 「ね? 何も着けてないと、揺れるでしょう?」 「……はい」
6 23/06/28(水)00:16:44 No.1072391452
とりあえずは新しく服を用意しよう、ということになった。しかし既に空には満点の星々が輝く時間帯。今から山を降りても店は空いていない。 じゃあまた今度にしようと、この場は二人を誤魔化して逃げようとしたのだが── 「外泊申請、出してきて良かったですね」 「そうね……こんなことになるとは、思わなかったけど」 「……俺もだよ……」 右隣にアドマイヤベガ。左隣にカレンチャン。寝っ転がって見上げた先にはテントの梁。 元々は天体観測キャンプのためにこの山に来ていたらしいアドマイヤベガの準備は万端で、俺を逃がしてはくれなかった。
7 23/06/28(水)00:20:48 No.1072392679
「……安心して。あなたの気持ちは、想像することもできないけど……私が、絶対に守るから……」 「……はは……ありがとう……」 アドマイヤベガの眼差しは庇護欲に満ちているように見える。まるで年下の弟妹を相手にしているかのような目付き。いま繋いできた手も、多分彼女の中ではごく自然な振る舞いなのだろう。 (……しかし、本当に……こんなことになるなんて……) アドマイヤベガと目を合わせていられなくて、瞼を下ろす。これから先、自分がどうなるかなんて想像もできない。人がウマ娘になるなんて有り得ないことだし、アドマイヤベガとカレンチャンの勢いに流されて、未来どころか明日のことも想像できない。 それに、俺は元々──
8 23/06/28(水)00:21:26 No.1072392886
「おやすみなさい」 「……おやすみなさい」 あの星空を人生で見る最期の景色にしようと思って、この山を訪れたのだから。 アドマイヤベガとカレンチャンの寝息を耳にしながら、俺は考えるのをやめて、意識を手放した。
9 23/06/28(水)00:22:26 [s] No.1072393248
色々あって絶望して人生の幕を自分で下ろそうとした一般青年君がなんやかんやでアヤベさんの妹分的な存在になって人生やり直し的な話が読みたくなったから触りだけぶん投げた
10 23/06/28(水)00:24:24 No.1072393868
自分の中の妹と折り合いがついた後か前かでこのアヤベさんの見方が変わる気がする
11 23/06/28(水)00:27:10 No.1072394792
人生一年生のアヤベさんと人生楽大生のTSアヤベさんの凸凹姉妹
12 23/06/28(水)00:34:14 No.1072397019
赤の他人そっくりになるTS好き
13 23/06/28(水)00:37:24 No.1072398040
なんやかんやあってアヤベさんの妹分みたいなポジションに収まって徐々に人生楽しめるようになっていくのいいよね
14 23/06/28(水)00:45:52 No.1072400798
信じてた人に裏切られたりとか色々不運が重なって絶望して自ら命を断つことまで考えてたけどTSしちゃって人生強制リスタート食らってアヤベさんが色々世話焼いてくれて 何度か抜け出してもう一度命を断とうと試みるけど躊躇うようになってせめてアヤベさんに恩を返すまでは……と踏みとどまるようになって それからオペラオーとかドトウとかウララとかとワイワイやる日常に巻き込まれたりなんだったりで前向きになるようになって 最終的にアヤベさんの妹分的な存在になって人生を楽しめるようになる そんな話が読みたいね…
15 23/06/28(水)00:50:28 No.1072402271
>なんやかんやあってアヤベさんの妹分みたいなポジションに収まって徐々に人生楽しめるようになっていくのいいよね 最初はお洋服買ってもらうのも躊躇ったりしてたけど段々自分からアヤベお姉ちゃんにお洋服プレゼントするようになったりデートしたりするといいよね
16 23/06/28(水)00:58:36 No.1072404833
元男がスーツ身一つで山奥でってことでカレンチャンなんか察してそうではある
17 23/06/28(水)01:26:23 No.1072412700
アヤベさんとかカレンのお陰で人生楽しめるようになったけど「今の俺の人生は俺だけのものじゃないんだ」って思うようになって 周りからの無茶なお願い聞いたりとかタキオンに実験頼まれたら断らなかったりと段々背負い込むようになって最終的に無茶をアヤベお姉ちゃんに叱られちゃうとかいいよね