23/05/28(日)22:12:26 「頼む... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1685279546551.jpg 23/05/28(日)22:12:26 No.1061862720
「頼む、メイケイエール…………………さん」 いよいよ夏の暑さが近づいている5月28日の朝9時 栗東寮のその寮室の前まで足を運んだアタシは、扉をノックして彼女を呼んだ 心なしか嬉しそうな笑顔で扉を開けるその少女に、とある頼みごとをするために 「今回も…中間試験の勉強を…教えてください…」 「お任せくださああああああああい!!!!!!」
1 23/05/28(日)22:12:43 No.1061862832
■ 競技ウマ娘の姿ばかりが取り沙汰されがちのアタシたちトレセン学園生も、レースを除けば一般の中高生と大差ない学生の身分だ だから当然同じように授業を受けるし、そして同じように試験勉強で苦しめられる かくいうアタシもその苦しめられている側の一人だった さっそく栗東寮の食堂に移動したアタシたち。椅子に下ろしたカバンから教科書とその他一式を取り出して勉強の準備をしていた
2 23/05/28(日)22:12:56 No.1061862941
「実はですね…ソングちゃんからSOSが来ると思って、事前に色々準備していました!!!!!じゃーん!!!!!」 そう言ってエールが笑顔でカバンから取り出したのは、付箋がびっしりついた一冊のノートだった 「メイケイエール特製、数学問題集ノートでえええええええす!!!!」 「…おいおいおいちょっとまてメイケイエール!?もしかして自分で問題集を作ったというのか!?!?!?」 「そうです!!!!!!!!!ソングちゃんは数学が苦手でしたからね!!!!!!」 ノートを受け取り恐る恐る開いてみると、なんとそこには沢山の数学の問題がシャーペンで書き写されていた パラパラめくってみるとどうやら問題だけではなく、青ペンでちょくちょくヒントや注釈のようなものも挟まれている これをそのまま本にして出版しても遜色ないと思ってしまうほどの物だったのだ
3 23/05/28(日)22:13:08 No.1061863022
「ソングちゃんはいつも美味しいお弁当を作ってくださってますから!!!!!そのお返しです!!!!!」 「お返しといってもこれは気合入りすぎだろう!」 学問でも素晴らしい成績を残すメイケイエールは生粋の真面目っ子気質 そんな彼女の性格がこのノートにハッキリと表れていた にしてもすごいなこれ。20ページぐらいあるんじゃないか? 「すごく嬉しいが…なんだか申し訳なくなってきたぞ。アタシの為に時間を割いたわけだろう?」 「大したことないですよ!!!!!作問勉強法を試したかっただけですし!!!!!!これはその副産物みたいなものです!!!!!!」 あー…なるほど。作問勉強法。それならアタシも聞いたことがあるな なんでも、試験に出そうな問題を自分で作る事によって、「こういう問題が出たらこう対処しよう」という意識が高まるらしい。その上試験分野の理解が深まるとかなんとか… まあようはついでだから気にするな。ということなのだろうが…そうだったとしても、アタシの事を思っての行動であることには変わりはない。本当にいい親友を持ったものだ
4 23/05/28(日)22:13:21 No.1061863103
「…いつもありがとうな、メイケイエール」 「いいってことよ!!です!!!!!!!」 さて、彼女の優しさに応えるためにも、アタシもノートを開いて勉強するか …と気合を入れてシャーペンを握った時、「あ!!!忘れてました!!!!」と言ってメイケイエールは、カバンの中から細長いケースを取り出した 「…メガネケース?」 「そうです!!!!!!」 「メガネ新しく買ったのか?メイケイエール、目は悪くなかったよな?」 ケースを開けたメイケイエールは黒縁メガネの縁をそっと掴んで掛けた後、こちらに向かってニヤニヤしながら顎に指を当てる。その姿に、思わずアタシは失笑してしまった
5 23/05/28(日)22:13:33 No.1061863164
「ふふっ…メイケイエール先生じゃないか!!」 「ドヤ!!!!!!まあ伊達なんですけどね!!!!!!」 「似合ってるのがまたじわじわくるな!」 「ソダシちゃんに選んでもらいました!!!!!」 どうやらそれは、ただの雰囲気作りのアイテムのようだった …前もって小道具を用意してるなんて。メイケイエールめ、さてはやる気満々だったな?相変わらず面白いやつだ 互いにニヤニヤした面を見せ合って、気分をすこし上げてから、さてとようやく勉強会を始めるのだった 「じゃあメイケイエール先生、本日はよろしくお願いします」 「びしばしやっていきますよおおおおおお!!!!!気合い入れていきましょおおおおおお!!!!!」 「あーでも、出来るだけお手柔らかにな…」
6 23/05/28(日)22:13:52 No.1061863277
■ 「2x²+20x+42…これ因数分解できなくないか?」 「できますよ!いいですか、まず全ての係数の共通点を考えてみましょう」 「…偶数?」 「そうです!つまり…?」 「…つまりどういうことなんだ?」 「んもー!2の倍数ってことですよ!」 「だからなんだって言うんだメイケイエール」 「全て2の倍数ってことは、共通因数として2を取り出せるってことなんですよ!」
7 23/05/28(日)22:14:09 No.1061863393
「ん~…?」 「もしかしてピンときてませんね!?ノート貸してください!」 「ちょっと書いて見せてくれ」 「2x²+20x+42 = 2(x²+10x+21)…つまり2を取り出すことで因数分解できるんです!」 「あー!なるほど!そういうことか!」 「ここまできたら自力で解けますよね!」 「もちろんだ!…いや待て」 「どうかしましたか!?」 「この外に出た2ってどうするんだ?」 「無視でいいんです!」
8 23/05/28(日)22:14:24 No.1061863489
「えっと…これはこうだから…=2(x+7)(x+3)?」 「正解です!!!」 「ふー…因数分解するのにちょっと時間をかけてしまうな」 「慣れてないうちはそんなものですよ!」 「次は…ax+bx+a²-b²!?どうやって解くんだこれは!?!?」 「あー。最初は困惑しちゃいますよねそれ」 「因数分解どころじゃなくないか?」 「まずわかりやすいところから解いてみましょう」
9 23/05/28(日)22:14:47 No.1061863654
「a²-b²は(a+b)(a-b)で大丈夫だよな。これはわかりやすいからわかるぞ」 「合ってます!」 「ax+bx…これは、一体どうすればいいんだ」 「さっきの2みたいにxを取り出せばいいんですよ!」 「x(a+b)ってことか?」 「そのとおり!」 「x(a+b)+(a+b)(a-b)…これが正解か?」 「いいえ、正解まであと一歩足りません!」
10 23/05/28(日)22:15:05 No.1061863762
「なにが足りないというのだメイケイエール…」 「まだ取り出せるものがあるはずです」 「…まさか(a+b)もか!?」 「やってみてください!」 「…(a+b){x+(a-b)}ということか!」 「そうでえええす!ちなみに(a-b)のカッコは外せるので、正しくは(a+b)(x+a-b)になります!」 「なるほどな…しっかり覚えたぞ」 「次はこの問題ですね…」 「どれどれ…」 …アタシはひたすら数式の問題を解いて、自分のノートに書き込んでいく メイケイエール先生はアタシの様子を見守り、時にはアドバイスをしてくれたり、時には褒めてくれたりと忙しない とまあこんな感じで、昼食の時間になるまで二人だけの勉強会は続いていった…
11 23/05/28(日)22:15:21 No.1061863906
■ 「しかし…容赦ないよなトレセン学園も。もうすぐ安田記念が控えているってのに、試験はちゃんと受けろってさ」 「わかります!!!!正直レースに集中したいでえええええす!!!!」 所変わって通学路。思いきり叫んだあと、メイケイエールは片手に持っていたファミチキを一口パクリ 栗東寮での勉強会がひと段落ついたので、安田記念に向けての特訓の為にトレセン学園へと向かう事になった このファミチキは、勉強会でちょっと疲れたということで、先ほどファミマに寄って買ってしまった これはコンビニをあまり使ったことのないメイケイエールに教えてみたら、いたく気に入っていた食べ物の一つなのだ 昼食にするには量が少ないが…まあこれは自分たちへの軽いご褒美みたいなものだ
12 23/05/28(日)22:15:42 No.1061864038
「せっかく足が治ったメイケイエールとの最後かもしれないGIレースだというのに、試験のせいで身に入らないぞ」 「まあ、レース開催日と学校のスケジュール的に厳しい話ではあるんでしょうけどね!!!!!!特別延期処置ぐらいあってほしいですけど!!!!!」 「全くだ!おのれトレセン学園…」 恨み言を吐きつつ、また一口齧る ジュワっと肉汁滴るファミチキは、レースと勉強の板挟みに苦しめられている中での一つのオアシスのようだった その暖かさのせいで、いつもならあまり言わないような本音もポロッとこぼしてしまう 「…毎度、アタシに付き合わせて悪いな。メイケイエール」 「構いませんよ!!!!むしろ私を頼ってくれて、嬉しいくらいです!!!!」 「…そうか」
13 23/05/28(日)22:16:01 No.1061864168
頼ってくれて嬉しい…か。改めてそう言われると、なんだかくすぐったくなってしまう 昔、まだエールの学力を知らなかった頃…というより、ぶっちゃけ舐めていた頃があった。学力なら余裕で勝てるだろうと踏んだアタシが調子に乗って「テストの点数で勝負だ!」といい放った後…メイケイエールの点数にボロカスに負けて赤っ恥をかいたっけな アタシたちだけが知ってる、大切な思い出の一つだ 本当は今でも、レースも学問もメイケイエールに勝ちたいと思っている だが、学問に関してはどうしようもないことに、才女で努力家でもある彼女にはまったく歯が立たない だからその分をレースの場で、セントウルSの借りと一緒に返してやる シュネルマイスターにもロータスランドにもソダシにも勝ってきた。次はお前だメイケイエール! 今度はアタシのホームグラウンド、東京マイルの舞台で決着をつけてやる!
14 23/05/28(日)22:16:20 No.1061864323
「安田記念、今度こそ逃げるんじゃないぞメイケイエール!」 「逃げませんよ!!!!今度こそ東京マイルで正々堂々決着をつけましょおおお!!!!!!」 「マイルを舐めてかかるな!トレーナーさんにマイラーの才能があるとか言われたからって、簡単に勝てると思うなよ!」 「ソングちゃんこそVMの勢いでそのまま勝てると思ったら大間違いです!!!私がマイラーでも走れるところ、見せつけてやりますから!!!!」 「いいや絶対、絶ッッッッ対アタシが勝つからな!!シュネルもソダシもお前も追い越して、アタシの名前を歴史に刻み込んでやる!!」 「1200mのコースレコードの名前が誰だか忘れましたか!!!!!!歴史を刻んだあの日と同じように、今度こそ私がみんなのエールに応えるんです!!!!!!!」
15 23/05/28(日)22:16:36 No.1061864439
先程まで仲良く勉強会をしていたのが嘘のよう 今は互いに闘志をむき出しにして、宣戦布告の言葉を叫び合う ああ、本当に…本当にいい宿敵を持ったものだ 心に火がついたアタシは、残ってたファミチキを全部口に放り込み、空になった紙袋を握り潰すように丸めた
16 23/05/28(日)22:16:50 No.1061864556
6/4の指定席抽選落ちたので泣きながら書いた おのれJRA…
17 23/05/28(日)22:20:47 No.1061866323
そうかもうすぐ安田だ… 浮き足たつなぁ
18 23/05/28(日)22:22:12 No.1061866933
ソングちゃんがまたおのってる
19 23/05/28(日)22:24:07 No.1061867694
ナイス怪文書 彼女たち中等部のイメージあるよね
20 23/05/28(日)22:37:44 No.1061873072
今度は接戦だといいなぁ
21 23/05/28(日)22:41:31 No.1061874510
またエールちゃんとソングちゃんがいちゃついてる…
22 23/05/28(日)22:52:45 No.1061878827
この手の怪文書で実際に問題解いてるの初めて見た
23 23/05/28(日)22:53:25 No.1061879108
多分高松宮出れなかった悔しさがぶつけられてるなこのノート
24 23/05/28(日)22:55:41 No.1061879939
数式を見ると体が拒否反応を…
25 23/05/28(日)23:05:08 No.1061883553
良い怪文書をありがとう 安田A指定席当たったから久々の邂逅が楽しみだ
26 23/05/28(日)23:06:26 No.1061884047
ソダシはどう思う?
27 23/05/28(日)23:08:58 No.1061884983
勉強ができるバクシンオーみたいなキャラしとるな…