虹裏img歴史資料館

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23/05/23(火)23:50:46 泥次 のスレッド詳細

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画像ファイル名:1684853446365.jpg 23/05/23(火)23:50:46 No.1060206469

泥次

1 <a href="mailto:sage [1/9]">23/05/24(水)01:05:25</a> [sage [1/9]] No.1060227791

そうして着替えていた私は水場の扉が勢いよく開いたので(ほわぁ)と思いました。 「ほわぁ」 口にも出してしまいました。 なんせ現れたのはバスタオル一枚羽織っただけで裸身のセイバーだった。まだ髪の毛から水滴さえ落ちていた。 思い切り目に映してしまったので忘れようがない。肌はまるで表面が光を帯びて輝くかのよう、血管が透けて視えるような乳白色。 風が吹くと柔らかく靡く、あの溜め息が出るほど美しい髪をセイバーは普段頭の後ろで括っている。それも今は解かれて肩のあたりまで滑り落ちていた。 そして何と言っても身体にまるで無駄がない。余分な贅肉というものを一切感じさせない肢体はどこまでも伸びやかだ。 それでいてがりがりに痩せているというわけでもない。必要な量の筋肉、必要な量の脂肪、人体を構成するための要素を黄金比で配置してある肉体だ。 世の美術家が見れば泣いてモデルになってくれとせがむだろう。こんなに美しい身体の人間は世界中何処を探したって見つかるまい。 目の当たりにした時に羞恥心を覚えるのではなく、ただただ見惚れて放心してしまったのは満場一致で不可抗力であり───

2 <a href="mailto:sage [2/9]">23/05/24(水)01:05:35</a> [sage [2/9]] No.1060227836

「───ひゃあぁっ!?」 「なにさ急に、変な声をあげて」 そこで思考能力が回復した私は思わず着ようとしていた服をかき集めて下着姿の前を覆った。 セイバーの方は身体の何処を隠すでもなく、きょとんとした表情でこちらを見ながらバスタオルで髪の毛を拭いている。前!胸とか!………のところとか!隠して! 「なんで堂々としているんですか!?」 「別にいいじゃん。裸のひとつやふたつ珍しいものでもなし。まして男に見せるわけでなし」 「なるべく裸を見せないようにするのは常識ですっ!家族にもですっ!」 「そうなんだ。むつかしいな、現代というのも」 セイバーは呑気に言うが、一応従ってくれるのか髪を拭くのを一旦やめて自分の服を畳んであるあたりに寄って下着を見繕っている。 私はというと彼女が背中を向けている間に急いで着替えを済ませるのだった。ああ、びっくりした………。 結局セイバーは下着を着用しただけでお腹も手足も胸元も丸出しでベッドに座り髪を乾かしだしてしまうのだが、もう私もそれ以上言わないことにする。

3 <a href="mailto:sage [3/9]">23/05/24(水)01:05:46</a> [sage [3/9]] No.1060227902

「しかし水道というのは便利だね。霊体化できないから身体を清めようとすると水を浴びるか拭くかしないといけないけれど、蛇口を捻ったら水が出たのには感心しちゃった」 無造作に足を組みバスタオルに髪の水気を吸わせながら、セイバーは楽しげに語る。 ついその美貌をまじまじと観察しかけては視線を明後日の方向にやるというのを繰り返しながら、私はウィーンに来るまでに仕入れた予備知識を脳の片隅から引っ張り出した。 「ここは南にあるアルプス山脈から水を引っ張ってきているんですよ。この万博に合わせて突貫工事で作られたそうです。  最近になってそれが開通して、今は街の至るところにその水が供給されているんです。何でも水源は皇帝陛下の秘蔵の泉だったそうですよ」 「ほー。彼方に聳える霊峰から引いた水か。道理で何処の店に行っても水が出てくるわけだ。美味しいよねぇ、この街の水」 ………そういえば、私の一家がウィーンに訪れるタイミングが今だったのもその水道が理由のひとつだった。 アルプスからの水が引かれるならウィーンに蔓延しているというコレラの心配も少なくなる。だから安心だ………ということを兄様が言っていたのを覚えていた。

4 <a href="mailto:sage [4/9]">23/05/24(水)01:05:56</a> [sage [4/9]] No.1060227946

「………」 ちらり、と部屋の隅を見る。積まれたトランクにはウィーンで不都合がないように服や日用品が詰まっている。 持ってく服はどれがいいか、選んでもらったのも兄様たちだ。こうして服に袖を通しているともう二度と会って話すことのないあの人たちを連想せずにはいられなかった。 でもそれらをこうして私の手元に取り戻せたのもセイバーのおかげだ。まったく呆れ返るほど彼女の手際は優れていた。 『委細承知!任せておきなって、こういうのは得意なんだ。旅先でうまくやるのはね』 状況を私が説明し理解したセイバーはそう言い、何処に突撃したかといえば何とカフェ。そこからの流れはまるで巧妙な詐欺でも見ているかのようだった。 セイバーはまず賭けポーカーの席へ飛び込み、紳士がたの奇異の目の中で“適度に”勝ちながら巧みなトークと明るい人柄であっという間に彼らの心を掴んでいった。 頃合いを見計らい、セイバーは何人かに目星をつけて私のことを紹介していった。正確に言えば、カフェを訪れていた上流階級の方に、ラインプーフ家の私のことを。

5 <a href="mailto:sage [5/9]">23/05/24(水)01:06:06</a> [sage [5/9]] No.1060227994

自慢ではないが、ラインプーフ家はドイツの貴族の家柄だ。魔術師にだって外面というものはあるから魔術師とだけ付き合う訳にはいかない。 父様も表向きの顔を持っていたし、ヨーロッパの資産家とも何人か繋がりがある。そしてそれが4人目で引っかかった。その方が父様の知己だったのだ。 そこからは早かった。家紋入りの装飾品をたまたま身に帯びていたことで彼は私がラインプーフ家の息女であることを信用してくれ、身分保障が完了。 とっくに仲良くなっていたセイバーが『お願い♪』なんて頼むものだから気分を良くした彼は私の一家がウィーンへ先に送っていた荷物の行き先や銀行まで都合してくれた。 お陰で荷物と活動資金を確保したのである。ここまでほとんどセイバーの口八丁手八丁。それが数日前の話。改めて思う。何なんだろう、この人………。 「───それにしても、あいつら今頃どうしてるかな~?」 いつの間にか物思いに耽っていた私を現実に戻したのはセイバーのそんな呟きだった。 下着姿のままベッドに両腕を突っ立てて体を支え、窓の外を見ている。彼女の場合そんな格好でも端なさより野生の美の方を先に感じてしまうのがずるい。

6 <a href="mailto:sage [6/9]">23/05/24(水)01:06:19</a> [sage [6/9]] No.1060228053

「あいつら、というと………」 「昨日会ったあの二人だよ。マスターとサーヴァント、どちらも相手にとって不足はない。優れた戦士だ。心が踊るよ、彼らと剣を交えることを思うと」 横顔に浮かぶ微笑みは剛毅の香りがする。戦うことに己の存在意義を見出す勇士の顔になっていた。………私はそれに頷くことは出来ない。 「私は………そうは思えません。サーヴァントのあの方はともかく、ターニャさんのような決意と向き合う勇気も、釣り合えるような願望も………まだ私にはありません」 共に入ったカフェでの去り際、静かながら鋭い視線をしたターニャさんの言葉が脳裏に蘇る。 『先も言った通り、私が戦うのはあくまで祖国のため。そのために必ずこの地に現れる聖杯を手にするわ。  生き延びるため、奪われないためにあなたがセイバーを手元に置き続けるのは了解したし、今すぐ戦おうとも思わない。でもこれだけは覚えておいて。  最後に勝ち残って聖杯を手にできるのはひとつの主従だけ。もしあなたが生き残っていたならば、私は全力であなたと戦う。これは時間制限付きの休戦よ』

7 <a href="mailto:sage [7/9]">23/05/24(水)01:06:29</a> [sage [7/9]] No.1060228109

………そう。語り聞かされたあの人の願いは私のようにただの我が身可愛さではない。国を想い、国のため、そして国に生きる人々のアイデンティティのために戦っている。 私とは違う。なりゆきで巻き込まれ、なりゆきでセイバーを喚び出し、なりゆきで彼女に何もかも頼り切ってどうにかまだ生きているだけの私とは。 仮にセイバーが彼女のサーヴァントより強力だったとしても、ターニャさんの宿願を奪い取ってまで先へ進もうという覚悟は、私の中にはない。 「ふーん。勇気に釣り合う願望と来たか。勇気はこれから身につけるとして、あらゆる願望に貴賤はないと私は思うけれどね」 「そうなのでしょうか………?」 「そうとも。仮に片方の願いが明日の空腹を満たす食料を得ることであり、片方の願いが国の存亡を背負っていて、どちらかをかけて争うとして。  賭すに値すると信じられるなら互いの願いは等価だ。良いとか悪いとかじゃない。それは全く別の秤であって比較できることじゃないんだよ。  まだ生きていたい、自分が自分でありたい。それは人間の根源的な欲求であり、シンプルで強い願いだ。その否定を私は許さない。

8 <a href="mailto:sage [8/9]">23/05/24(水)01:06:39</a> [sage [8/9]] No.1060228167

 同時に国の未来に殉じようとする彼女の想いも私は肯定するけどね。賭し、戦う。そのどちらにも誉れあれとするのが英雄としての私の役割だから」 そう言ってセイバーは私の目を見つめてにこりと笑う。 裁定者、とも違う。セイバーはどちらをも裁き定めているわけではない。ただ双方を祝福しているのだ。 挑む者に誉れあれ。得る者に誉れあれ。失う者に誉れあれ。例え負けて何もかも奪われるとしても、願いをかけて挑戦したという選択に栄光が与えられますように。 ───少しだけこの英霊のことが私にも分かってきた気がする。 その時だった。急にセイバーが表情をきりりと結び、ベッドから勢いよく立ち上がって窓へと近づく。湖面へ薄く張った氷のように涼やかだが緊張感のある顔だった。 「どうしましたか、セイバー」 「………戦っている。サーヴァント同士がだ。そう遠くはないね」 そう言われても私には分からない。こんな時に使い魔でも放てれば比較的安全に様子を探れるのかもしれないが、生憎と私にはそんな能力さえない。

9 <a href="mailto:[9/9]">23/05/24(水)01:06:54</a> [[9/9]] No.1060228245

だから、私は椅子から立ち上がった。無言で私の方を向くセイバーへ、戦いの場へ近づくということで奥底に生まれた恐怖をどうにか押し殺して告げる。 「見に行く。そうでしょう?争いをなるべく避けたければむしろ争いに自ら近づいて知らなければならない。あなたが言ったことです」 「………ふふ。そうとも。ひたすら亀のように縮こまっていては、甲羅を踏み割りに来る足音に気付けないものさ」 こちらを振り返ったセイバーの細身の身体に燐光が灯り、下着姿からあの魔銀と黒鉄の鎧姿へと変じる。………私は深呼吸し、意を決した。 「はい。行きましょう、セイバー」

10 23/05/24(水)01:13:13 No.1060229898

ライン「ブ」ーフでは?

11 23/05/24(水)01:13:32 No.1060229978

>ライン「ブ」ーフでは? 腹を切ります

12 23/05/24(水)01:14:42 No.1060230271

合掌ばい!

13 23/05/24(水)01:17:13 No.1060230957

笑うたこと許せ

14 23/05/24(水)01:21:05 No.1060231918

泥スレの狂犬ども 「」ゲミヤとは貴様らの如きを言う!

15 23/05/24(水)01:23:07 No.1060232405

ここ最近投げられてるSS良いよね 最近の楽しみの一つ

16 23/05/24(水)01:33:30 No.1060234420

ていおーさまが全部やってくれました

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