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23/05/22(月)22:59:27 泥の更新 のスレッド詳細

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23/05/22(月)22:59:27 No.1059883707

泥の更新

1 23/05/22(月)23:11:18 No.1059887942

ウィーンは仮完結か 味方側マスターは全員生還して良かった…

2 23/05/22(月)23:23:59 No.1059892552

ラスボスのブレスは我様ポジで良いのかな 他のルートとかにも出てきたりするんだろうか

3 <a href="mailto:sage [1/6]">23/05/22(月)23:40:43</a> [sage [1/6]] No.1059897976

『付かず離れずついてきて、私が止まったらゆっくりと近寄ってきて、5歩進めば私の元まで来れるところで止まって』。 真剣な表情で伝えられた言いつけ通りに後から追いつくと、セイバーはひとりの成年と並んで立っていた。 背の高い大男だった。190cmにやや届かないくらいだろうか?縦にも大きいが、その凶悪なまでの肩幅や骨太な四肢により横にも大きい。 これだけ大柄なのに細身にも思える。整った背広を着ているのも理由にあるんだろうけれど、それ以上に本人の体格が綺麗だからだ。 スポーツ選手のように無駄のない体つきをしている。肉体労働者たちのようなバランスの悪い筋肉の付き方をしていない。その偉丈夫ぶりにルネサンス期の人物彫刻を連想した。 両手を後ろ手に組んで優雅に直立し、美術品でも鑑賞しているかのように微動だにしない。立っているだけで強靭な体幹というものを感じさせる。 雄々しい体躯とは裏腹に、顔立ちはとても涼やかだ。童顔というわけではないものの、輪郭や鼻筋、目元の柔らかさは若々しさを帯びている。 銀糸の長髪は肩まで伸ばして自然に流しているが鬱陶しさは微塵も感じない。トルコ石の瞳が煌々と輝く明かりを反射させていた。

4 23/05/22(月)23:40:53 No.1059898021

書き込みをした人によって削除されました

5 <a href="mailto:sage [2/6]">23/05/22(月)23:41:07</a> [sage [2/6]] No.1059898098

「───壮観だな」 不意に成年が口を開く。両腕を頭の後ろで組み、崩した姿勢でやや行儀悪く同じものを眺めていたセイバーが成年へ顔を向けた。 「このメインパビリオンの巨大なドームが王のためではなく、人民のために建てられたものだというのが実にいい。  大きな建築物とは私にとって常に王の権威を護るためにあったものだからな。このドームを見ると新しい時代へやってきたという感慨がある」 「ふーん。ま、私も嫌いじゃないよ、こういうの。なんであれ大きく作られたものはいい。趣味さえ悪くなければだいたいはカッコいいからね」 「確かに。同感だ」 セイバーのぶっきらぼうな返事に青年の真一文字に引き結ばれていた唇が綻んだ。 彼らがいたのは万博会場の中央にある、ロタンダ建築の大ドームの前だった。 高さ84m、直径108m。オーストリアが威信をかけて築いた、そんな巨大建築物を臨む広間の真ん中に立っている。 日も暮れたのに照明がいくつも焚かれているせいで、呆れるほど広い大パビリオンの中は昼間のように明るい。まばらではあるが人も行き交っていた。 そんな中にあっても私の目の前のふたりはまるで光を放っているかのように存在感がある。

6 <a href="mailto:sage [3/6]">23/05/22(月)23:41:19</a> [sage [3/6]] No.1059898171

女性としては高い身長のセイバーも長駆の成年の横に立つと20cmは低いが、不思議とふたりの背中は釣り合って見えた。 「展示物にはもう目を通したか?」 「ううん。何かと忙しくてね。美術館にはちょっと興味があるんだけど」 「お、美術に興味が?」 「見る方も創る方も私のことだからセンスはあると思うんだよね。もうちょっと絵を描いておけば後世に伝わったかと今更後悔してるよ」 「ははは。自信家だな。そう言うやつは極端に上手いか、極端に下手なものだ」 和やかにふたりは談笑しているが、少し後ろから様子を伺う私の胸中は氷柱でも突っ込んだみたいに冷え冷えとしている。緊張感でだ。 急にセイバーが『誘われている』だなんて言ってあらぬ方向へ歩きだして、そうして大男と並んで言葉を交わしている。勘の鈍い私にだって青年の正体の予想はつく。 青年は私にもセイバーにも視線をやらぬまま、ドームをのんびりと眺めている。その横でセイバーはまるで旧来の友人へちょっとした雑談を投げかけるような調子で言った。 「君、サーヴァントでしょ?」 「そうだ。そう言う君もだな。軽く気をそちらにやってみて探る、というのは君にとって無礼にあたったか?」

7 <a href="mailto:sage [4/6]">23/05/22(月)23:41:32</a> [sage [4/6]] No.1059898242

「あまり褒められた作法じゃないけどいいさ。息を殺して様子を見ようとするのよりは気前が良くていい」 そこで初めて青年は軽く首を回し、セイバーの方へ視線を向けた。どこか感心したような色合いが視線に宿っていたのはセイバーの器量を認めたのだろうか。 サーヴァント───つまり、敵。小さくついた溜息の輪郭が角ばっている。ランサーでもなくアーチャーでもない。未だ見なかった新しい敵がそこにいる。 刃を振るい、刃を投げつけ、私の命を狙う───サーヴァント、恐ろしいもの。唇が戦慄き、心細さに思わず声が漏れた。 「せ、セイバー………!」 向けていた背に名前を投げかけられ、セイバーがこちらへと振り返る。唇が柔らかく弧を描き、私へ鷹揚に頷いた。 それだけで胸の内の凝りがすっと溶ける。父も兄もいない今、彼女だけが私が信じられる唯一の味方だ。 セイバーに呼応する形で青年───サーヴァントもこちらを向いた。青緑の目が穏やかに私を捉える。朗らかにセイバーは言った。 「そうそう、紹介するよ。私のマスターなんだ。私を喚び寄せたというただ一点でこの聖杯戦争で最も優れたマスターであることに疑いの余地はない、最高のマスターだよ」

8 <a href="mailto:sage [5/6]">23/05/22(月)23:41:48</a> [sage [5/6]] No.1059898311

「………本当に自信家だな。いっそ小気味よいくらいだ。ああ、君たちは場を弁えず襲ってくる不逞の輩というわけではないらしい。  ならば礼には礼で応えねばならないし、紹介されたならば紹介し返すのが道理というもの。少し待っててくれ、私のマスターを呼んでくる」 ───と、青年が私へ向けて微笑みながら言った時だった。 「その必要はないわ」 宵の風も揃って整列しそうなくらいの凛と筋の通った声だった。それを耳にしたサーヴァントがそちらの方を見てどこか嬉しげに笑う。 ドームの方から薄暗い広間を突っ切ってこちらに近づいてくる人影がある。ひどく小柄だ。私が無理なく見下ろしてしまえるほどに。けれどそれをそう感じさせないのは、その歩み寄り方、張った背筋、そして揺るぎない眼差しのため。 (ああ、紅い───………) 直感はそのように彼女を表現した。服装は真っ黒。けれども何故か紅い人だと思った。血のように、ルビーのように、鮮烈な紅の印象。 つば広の帽子を被っているせいで表情は近くまで来ないと分からない。でもそう遠い話じゃない。いつの間にか、あるいは英霊のふたりに気を取られていたからか、すぐ近くまで寄ってきていたから。

9 <a href="mailto:[6/6]">23/05/22(月)23:42:00</a> [[6/6]] No.1059898365

やがてある距離で止まると、彼女は嫋やかな手付きで帽子のつばに手をかけて脱いだ。私の感じたイメージ通りの、夜闇に明るく輝くような緋色の髪がふっくらと揺れる。 前髪を指で払ってその青い瞳を顕にした小さな女性は、勝ち気そうな眼差しで立ちすくむ私をじっと見つめた。 セイバーでも、彼女のサーヴァントと思しき青年でもない。私をだ。唖然としてしまった。あるいは見惚れてしまっていたのかもしれない。 だって、これまでの人生で私のことをそれほど真っ直ぐに見つめる人は兄様たちとセイバー以外にいなかったから。 『ひとりの人間として』、私を真っ向から噛みちぎるように見る人。それは私がセイバーという超戦力を手にしているというのが大きな理由だったのかもしれない。 だとしても、家族以外に、英霊という死者以外に、そんな風に見られたのは生まれて初めてだったのだ。 「こんばんわ、そして………あなたに対しては初めましてと述べる方が適切かしら。面と向かって話したことなど一度もないものね………ラインブーフ家のお嬢さん」 取った帽子を胸に当て、私を値踏みするように眺めて小さく微笑んだ彼女は、そう言って軽く目礼を送ってきたのだった。

10 23/05/22(月)23:48:25 No.1059900427

ウィーンのプロローグ締め切りに対して大分遅れましたが草案からある程度清書しました 意見要望などの記入ありがとうございました

11 23/05/22(月)23:52:55 No.1059901790

毎日SSが来る

12 23/05/22(月)23:58:45 No.1059903445

書き込みをした人によって削除されました

13 23/05/22(月)23:59:11 No.1059903556

ターにゃん!

14 23/05/23(火)00:04:55 No.1059905190

SSは綴られてるシナリオに従わずに書いてるのね

15 23/05/23(火)00:09:41 No.1059906514

ルートは幾つあっても良いからね

16 23/05/23(火)00:10:36 No.1059906762

書ききれるのならばマジで誰だって書いて良いんだ

17 23/05/23(火)00:11:26 No.1059907013

ひとつのシナリオを書ききれる人は偉いし凄い

18 23/05/23(火)00:12:44 No.1059907389

朗らかにお話してるセイバーとライダーの間の何かあればお前ぶっ殺すという緊張感

19 23/05/23(火)00:18:53 No.1059909059

この前からSSが連続して投げられていて非常に満足してる

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