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23/05/15(月)04:35:46 泥の平日 のスレッド詳細

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23/05/15(月)04:35:46 No.1057297112

泥の平日

1 <a href="mailto:企画お疲れ様でした">23/05/15(月)04:36:32</a> [企画お疲れ様でした] No.1057297132

  ──その戦闘は無謀であった。  アーチャー、バーサーカー擁する『座長』陣営は、聖杯戦争開幕早々にランサー、アサシンを率いる"残影"陣営に交戦を仕掛ける。  いくら火力に長ける『座長』陣営とはいえ、陣地による守りを固める"残影"陣営に真正面から立ち向かうなど、無謀にして蛮勇。誤りとは言えないが、ハイリスクな行為だろう。  ──でも、その方が面白いでしょう?

2 23/05/15(月)04:36:54 No.1057297148

「マスターは前線に出てこない。片割れは会話のできない獣。随分と寂しい総力戦ね。……まあ、獣の戦闘力くらい知っているとも。それにあなた、人の意図が理解できないわけではないでしょう?」 「……」  バーサーカー、ストーンカは答えない。ただ息を荒げ、敵対陣営の陣地の方に視線を向けている。ならば、とアーチャーもそちらに目を遣る。  相手の素性はわからない。得体の知れない自分の主より、あるいは話のわかる人間かもしれない、と思いながら。 「──真名、解放」 「魔力充填。無限連装。……これがディルムッドと並び称された実力、などと語っても、誰も聞くものはいないかしら」 「放て、『骸・螺旋剣』(ゲル・ナ・グコラン)……!」  一方的に全出力で、戦闘は開始された。

3 23/05/15(月)04:37:29 No.1057297175

「ダ◾️k……木た……」 「ダメ三騎士、三騎士対決の時が来ましたよ。ほら、相手は情報通り。神代の英雄、オスカルです。そろそろ陣地が保たないので、さっさと出ていってもらえないでしょうか」 「断る! やぶさかではないが断る! なぜなら荒れ狂う嵐のような弾幕は、耐えて耐えてこそ乗り越えるに値するのだ! あれは前座。偉大なる劇場の幕開けを告げるにすぎない!」 「それで壊滅しそうだから言ったのですが。やっぱり役に立ちませんね、私も守るしか能がありませんが。……とはいえ」  アーチャーの放つ「銀の弾丸」は、"残影"陣営が隠れる森を瞬く間に薙ぎ払う。木々はねじれ大地は抉れ、それでも絶え間なく砲撃は続く。このままではアサシンの構える陣地は完全に崩壊し、全員の心の臓が撃ち抜かれるのはそう遠くないだろう。  ──だが。

4 23/05/15(月)04:38:04 No.1057297196

(陣地はあれど、貼った本人の気配がない。相手は変則的なアサシンクラスか? それでも姿が見えないなら、いっそこのまま更地になるまで撃ち続ければ……っと、これは)  突如。 「──出でよ。閉じよ。其は堅牢にして無情の砦、絶望として阻むもの。……すなわち、残酷(ウクルトニー)」 「神話の騎士よ、貴方の物語にはいなかったのか?」 「絶対的な防御を誇る、絶望的な敵というものは」 「『礎築く残酷城塞』(ウクルトネー・フラディ)。……根比べと、いきましょうか」  アーチャーの眼前に、何重もの石の壁が出現した。 「姿も見せずに、あえて守りに徹する。そこまでして時間を稼いでどうするのかしら、アサシンさん?」 「稼げる時間が無限なら、それだけで城主の誉れですよ、アーチャー……オスカル」 「なるほど。私のことはわかっていたから、迎え撃つ体制は万全と。……ならとりあえず、その『迎撃』までは辿り着かせてもらいましょうか! ……バーサーカー!」 「……!」

5 23/05/15(月)04:39:03 No.1057297244

 アサシンの宝具、『礎築く残酷城塞』(ウクルトネー・フラディ)。まさに「城塞」の名に相応しく、アーチャーの銀弾を受け止め、耐える。そう、火力が足りない。  「このままでは」、火力が足りない。 「……なるほど」  故に、アーチャーが選択したのは。 「魔獣を乗りこなした経験などないから、振り落とさないように頼むわよ」  バーサーカーの上に騎乗しての、まさに猪突猛進といった突撃であった。 「……もう少し時間が稼げると思ったのですが」  当然、騎乗スキルは持ち得ない。しがみついて振り落とされないように、その細くてしなやかな腕で喰らいつくだけ。片腕にはきっちりと、折れた螺旋剣を離さずに。人馬一体には程遠い、それでも獣の手を借りる意味はただ一つ。

6 23/05/15(月)04:39:40 No.1057297268

「……たああぁぁぁーっ!」  アーチャー唯一の弱点である、機動力の確保。迅速に接近し、攻撃対象に密接する。  跳躍。再び武器を構える。魔力のすべてを、輝ける銀に変換する。骸となった「螺旋剣」(カラドボルグ)のその刀身を、自らの魔力で補い紡ぎ出す。  死に絶えただろう。  悲惨な結末に終わっただろう。  それでも再び虹を描く、彼の宝具の暴威は。 「さて王様、壁は何枚? どう重ねてる? 私はただの騎士に過ぎないから、どうしたって守りのいろははわからないけど」 「……それだけじゃない。ディルムッドのような武芸も、祖父のような智慧もないとも」 「それでも、私が騎士であるのは」 「どんな敵だって、諦めないから!」 「蘇れ神のカケラよ! 魔力全開! 神装一閃!」 「『蘇・虹霓剣』(カラドボルグ)!!」  ──在りし日の栄光のように、光溢るるのだ。

7 23/05/15(月)04:41:10 No.1057297322

「……これ、は」  幾重にも重ねられた石壁が、発泡スチロールのように粉々になっていく。アサシン、ボレスラフ一世は守りの天才である。史実の通り決して破られない鎧のような城塞を、絶望的な壁を打ち立てていた。遠距離攻撃主体である並のアーチャーの火力では、この壁を壊すことなどできなかったであろう。  されど、アーチャーはその上を行く。  その理由は二つ。一点を全力で貫くことに特化した、奥の手とも言える宝具の存在が一つ。   「……無事、撃ち抜けたようね」  オスカルという人物が、絶望の前でも諦めない英霊であるのが、二つだ。  かくして、緒戦は決着した。  最後に一つ、幕間を残して。

8 23/05/15(月)04:42:06 No.1057297358

「……最後に、いいかしら。えっと、アサシン」 「なんでしょうか。ちなみに、ボレスラフ一世と申します。以後お見知り置きを」 「そう、覚えておくわ。……奥の手が、あったでしょう。なぜ、使わなかったの」 「……そう、ですねえ」  ──そう、アサシンは一つ宝具を隠していた。『聖王断罪生誕祭』(スヴァティークラール・ストラクヴァス・オドソウゼニー)。ボレスラフにとってもっとも忘れられない日であるヴァーツラフ暗殺の光景を再現し、敵対者を断罪する「裁く者」を産み落とす固有結界。その効果は、己の生涯を悔いる者相手ほどに活躍する。  ……アサシンはアーチャーの真名を把握していた。彼に「後悔」があることは、当然理解していた。自らの宝具が強力な対抗手段になると、わかっていたはずだった。  されど、使わなかったのだ。  その宝具の性質までは理解せずとも、アーチャーは理解していた。彼女は自ずから、敗北を認めたのだと。

9 <a href="mailto:徹夜したので仕事まで寝ます">23/05/15(月)04:42:39</a> [徹夜したので仕事まで寝ます] No.1057297377

「そうです、ね。もう少し、足掻くことはできたでしょう。時間稼ぎは、できたんでしょうね」 「……なるほど」 「はい。時間稼ぎにしか、なりません。それなら私の役目としては、残りの二人を逃がせた時点で達成しているんです。作戦は成功、といったところでしょうか」  そしてそれが、敗北を認めた理由だった。アサシンは城主である。一人の人間であり、"代替わり"を知っている存在である。彼女は「人には人の役目があること」を理解している。言い換えれば、「死んで次に繋ぐことこそ意味がある」、ことを。"残影"陣営を生かしつつ、最大限『座長』陣営のリソースを削る。聖杯戦争における役割は、もう十全に果たしていたのだ。  ……そして。 「まあ、そもそも」  本当に、少しだけ。ほんの少しだけ、敗北を受け入れた理由があるとすれば。 「後悔に立ち向かうことを選べた英雄相手じゃ、本当に時間稼ぎにしかならないんですよ」  そう言い残して、アサシンの姿は光と消えた。

10 23/05/15(月)05:50:26 No.1057299874

朝からいい物が見れた

11 <a href="mailto:「」スカル">23/05/15(月)08:40:15</a> [「」スカル] No.1057314434

リアルタイムで企画見れてなくてごめんなさい! アサシン解釈違いあったらごめんなさい! オスカルくんの扱いがよくて嬉しかったです 男だからそこんとこよろしくな!

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