ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
23/04/30(日)00:21:44 No.1052125877
泥の夜
1 23/04/30(日)00:39:17 No.1052132203
キャスター出しました 遅くなって申し訳ない… https://seesaawiki.jp/kagemiya/d/%bd%f7%b2%a6%a5%b9%a5%af%a5%eb%a5%c9
2 23/04/30(日)00:43:26 No.1052133598
遂にキャスターも出てきたか 残す泥はあと少し
3 23/04/30(日)00:48:11 No.1052135140
じゃ1時くらいにしておくか
4 23/04/30(日)00:53:18 No.1052136701
キャスターに関してはあと誰と契約するかもあるな…
5 23/04/30(日)01:01:18 [1/5] No.1052139087
薄暗い部屋にふと響いたのは、枝葉の茂った森の風音のように朴訥とした雰囲気のある女の声だった。 「最近のこの国のまともな料理といえばフランス料理ばかりになってしまったものだ」 「はぁ…」 椅子に腰掛けてそれを聞いたセルヴィスは生返事するしか無い。生粋のブリテン人であるセルヴィスにはそれが当たり前だ。 「最近、というのはいつ頃までのことをさすのです?」 「100年くらい前かな」 そんなに。巷では二度目の産業革命がイギリスにも到来しているというが、その一度目の頃ではないか。 セルヴィスの真正面からふたつずれた席で肉の塊をナイフで刻んでいた女は何でも無いことのように言う。 魔術師とはいえただの人間であるセルヴィスには彼女の時間の感覚は計り知れない。だってこの方は人間ではないもの。 「開放耕地から農民を追い払っちゃったからね。食材を手に入れるすべを彼らは失ってしまった。 田舎のブリテン料理というのは素朴で美味しかったのだけれど。こうやって文化というのは効率を求めることで死に絶えていくんだね」 「僕にとってはまともな食事というとフランス人のシェフに作らせるものですから、いまいち共感しにくい話です」
6 23/04/30(日)01:01:30 [2/5] No.1052139154
「そうだろうな。時計塔の貴族も最近はフランスの料理人を雇い入れているらしい。彼らも人間なんだね」 そう言って女は肉の切れ端を口に運び、ワインで流し込む。髪も肌も目も色の薄い、雪のような女だった。 セルヴィスにとっては実質の上司にあたる。法政科のイリーナといえばそれなりに有名人だ。 そんな彼女に高級レストランへ呼びつけられたセルヴィスは懐から一通の手紙を取り出す。 上質な真っ白い紙へ金箔によって舌を巻くほど精緻な刻印の刻まれた便箋には「Barthomeloi」の綴りがある。 古臭い貴族主義の主はちょっと前ならスクロールで書簡を送ってきていたのだが、さすがに手紙くらいは時代へ迎合する気になったらしい。 「通達を拝読させてもらいました。率直にお伺いしますが、僕でよろしいのでしょうか?」 「不安?」 「所詮眉唾ものの儀式とたかをくくれるほど僕は不用心ではありませんよ」 そう答えてセルヴィスは顔をわずかに歪める。 『近くウィーンで執り行われるとされる聖杯戦争へ法政科は神秘の隠匿にあたられたし───』 ご丁寧に、ひたたび目にすると既読したことが向こうに伝わる特性のインクでそのようなことが文面に書かれていた。
7 23/04/30(日)01:01:41 [3/5] No.1052139215
要するに火中の栗を拾ってこいというのだ。バルトメロイらしい驕った態度だが、実際法政科の管轄でもある。 聖杯戦争。万能の願望器たる聖杯を巡って境界記録帯という超存在を呼び出し戦わせるという、気の触れている内容の儀式。 記録によれば今世紀の初頭に一度目が執り行われ、陰惨な結果に終わったのだという。 不満を垣間見せるセルヴィスに対し、付け合せのポテトをフォークで突き刺して齧っていたイリーナは視線だけで小さくうなずいた。 「あなたが適当だよ。法政科の内部でも英霊を喚び出せるということを軽視する子は多くてね。その点、セルヴィスくんは慎重でしょう?」 「それはそうです。虎や獅子に首輪をかけたからって飼い犬と同じようにはいきませんよ。ましてそれを檻の外に放つんですからね」 セルヴィスもこの聖杯戦争の噂が流れ出してから過去の記録については調べていた。 英霊。人理の影法師。人間を遥かに超越したいにしえの兵を使い魔として現世に顕す。内容だけだと何とも眉唾な話だが、それが聖杯戦争だ。 過去の聖杯戦争も失敗には終わったものの英霊の召喚については成功していたという話だ。なら今回も成立すると考えるのが妥当だろう。
8 23/04/30(日)01:01:51 [4/5] No.1052139267
犬に噛まれるだけならともかく噛み殺されるのはセルヴィスだって御免だ。 かちゃり、と金属の音。視線をやると皿の上にカトラリーが置かれていた。あんな分厚いステーキだったのにいつの間に全部平らげたのだろう。 常日頃から食事を趣味だと言い切るイリーナはグラスへなみなみと注がれたワインで唇を湿らせた。感情の抑揚は見受けられない。いつものことだ。 「聖杯戦争を侮った子が死ぬのは別にいいんだけれど、それは枠の外から神秘の隠蔽を行う要員の話。 法政科から直接参加させる枠がそういうわけにはいかない。面子もあるからね。というわけで私はセルヴィスくんを局長に推した。恨んでくれていいよ」 「まさか、今更です。それにそう言うからには僕単身の任務でもないんでしょう?」 「ま、それはね」 本当に今更。これまでもイリーナはまるで世間話でもするような穏やかさでセルヴィスを危険な任務へ放り込んできた。 今回の件もその延長線上だ。さすがに不安材料は多々あるが、イリーナが推すと言うからには現地には複数のサポートがあるだろう。 つまり代表がセルヴィスだというだけでこれはひとりきりの戦いではない。となればある程度は飲み込めた。
9 23/04/30(日)01:02:02 [5/5] No.1052139317
「セルヴィスくんに求められているのは生き残ること。最悪、サーヴァントを自害させて投了しても構わない。 令呪という自分の英霊への絶対の命令権が参加者には与えられるという話だ。それには歯向かわれた際の対処手段という意味が含まれているんだろう。 もちろん命令権を持つからにはなるべく戦力としてキープしておきたいところだけど…。 私たちの責務はあくまで神秘の隠匿であり、聖杯戦争という儀式を何事もなく終わらせることだからね」 「分かりました。………ああ」 便箋を懐にしまいながらちょっとした思いつきをセルヴィスは口にした。 急に特大の無茶振りを叩きつけられたのだ。少しくらい仕返ししたって罰は当たるまい。 「なんなら、イリーナさんが代表として参加してもいいのでは?」 「私は駄目だよ。昼間に外を出歩けないというのは無視できないデメリットだし、それに───」 ワイングラスを揺らしたイリーナが喉へと赤い液体を流し込む。生き血のようにドス黒くて真っ赤なワインを。 「───人理の味方である英霊と違って、私は人理の嫌われ者だからね」 ワインで濡れた唇をぺろりと舌で舐め、白い女は何でも無いことのように呟いた。
10 23/04/30(日)01:05:01 No.1052140146
バベルマンもやってランサーもやってキャスターもやるのか
11 23/04/30(日)01:08:07 No.1052140976
セルヴィスちゃん未定なのもあってどっちも王道とは離れた感じだな鯖
12 23/04/30(日)01:09:01 No.1052141235
ライダーズとバーサーカーは間に合うか
13 23/04/30(日)01:18:42 No.1052143688
ライダーとバーサーカーが遅れるとはね
14 23/04/30(日)01:21:44 No.1052144486
セルヴィスちゃんと病んでる妖精絡みの少女
15 23/04/30(日)01:22:52 No.1052144807
土地柄ドイツらしい感じのが多い
16 23/04/30(日)01:25:00 No.1052145372
普通に考えて地域制限ないなら地元に近い神秘体系の英雄呼ぶよね
17 23/04/30(日)01:34:23 No.1052147607
セルヴィスちゃんどっちと組むにしても妖精関連なのか
18 23/04/30(日)01:40:12 No.1052149004
雰囲気のSSだった
19 23/04/30(日)01:45:39 No.1052150337
バーサーカーも来たか