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23/04/23(日)01:43:36 No.1049909891
近頃、視線を感じるような気がする。 ペルレイノで過ごすようになってからしばらく、何故かそんな感覚を覚えるようになっていた。 初めて気づいたのは入浴している時だった。ペルレイノ下層の外れにある温水地帯を少し整備し、人間用の小さな露天風呂として使えるようにした場所。そこに行く度に自分以外の誰かの気配を感じるのだ。 手を出してくる訳でも危害を及ぼすでも無く、ただ物陰からじっとこちらを見つめているだけ。下手に刺激してしまうとどうなるか分からないので、こちらから見に行く事もできない。 身体を洗い終えた後には気がつけばその気配は消えているので、あえて意識しないようにしていた。だがここ最近は、同じような視線を感じる機会が多く…思い切って、誰かに相談してみる事にした。
1 23/04/23(日)01:43:51 No.1049909953
「そう、そんな事が…ねえ、アンタは何で私に相談しようと思ったの？」 話を聞いてくれていたのはシェイレーンだった。 少し冷たいように見えるが、面倒見の良いシェイレーンなら信頼できる。そう思って相談したことを伝えると、頬を少し青く染めた彼女は恥ずかしそうに目を背けた。 「ふぅん…別に、そう言われて悪い気はしないけど。あと、あんたのストーカーをしてるのも誰かは大体分かったわ」 やはりシェイレーンに相談して正解だったようだ。だが彼女は事の真相を語る前に、こちらにも問いかけを投げかけてきた。 「本当は、あんたも誰が犯人か分かってたんでしょ？今の壱世壊にいる住民はそこまで多くないんだから。何で姫様に直接相談しなかったのよ…ハゥフニスのこと」
2 23/04/23(日)01:44:07 No.1049910030
その発言で確信を持つ。やはり今までの行動はハゥフニスの仕業だったのだと。 何事も隠れて様子を伺うのが癖になっている彼女は、この世壊に来たばかりの自分のことを信用できずにこちらの事を観察していたのだろう。 それに、彼女の言う姫様…この世壊の本来の支配者である人魚たちの姫、ルルカロスは最近世壊の統合に向けて忙しそうに働いている。 自分の些細な事情で呼び戻すのは悪いと思い、今回はシェイレーンを相談相手に選んだという訳だ。 「姫様ならあんたが呼べば大喜びで戻ってきて撫でられたがると思うけどね。そんな物まで渡してるんだし」 そんな物、とはルルカロスに手渡された真珠の首飾りの事だろうか。水中で息ができない自分の為に、彼女が作ってくれたものだと聞いているが…。 「聞いてないんだ…それ、姫様の流した涙から作った特別なやつだから。あんたに何かあればきっと飛んでくるわよ、こういう風に外せば気づかれないけどね」