虹裏img歴史資料館

1 <a href="mailto:1/3">23/04/12(水)00:30:45</a> [1/3] No.1046184753

『闇夜渡し（カローン）』というあだ名をつけられるだけのことはある。 それほどまでにナギィ・ニュレーネスの画舫捌きは静かなものだ。そう、あらゆる点で。 波音は立たない。オールは飛沫をあげない。ナギィは何も喋らず、画舫は珊瑚の海の暗闇の中を気配もなく渡る。 珊瑚の海の画舫乗りでもトップクラスの腕前なくして成立しないその無音の渡しを好む客というのは必然と偏りを生んだ。 画舫乗りとの遣り取りを必要としない客はまだいい。行方を探られたくなかったり、何かから逃げているといった後ろ暗く危ない事情の客も少なくはない。 ただ、どちらにせよナギィの渡しは基本的にとても静かだ。ナギィの客がその宵闇を往く画舫に求めるものは基本的にその『静かさ』だった。 ───ごく少ない、一部の客を除いては。 「ラーメン！そう、新しいお店なんです！美味しいんですよ、とっても！なんというか…背徳の味がするのです！」 「…」 何が楽しいのか、にこにこ笑って喋る客に対してナギィの返事は決まっている。見つめて、瞬き。それだけだ。 ナギィがいくら静かに画舫を操ろうと、ぺらぺらとその女が喧しく喋っていては静寂なる操舵に何の意味もなかった。

2 <a href="mailto:2/3">23/04/12(水)00:31:01</a> [2/3] No.1046184834

『音無（カーム）』という名の己の画舫へその大きな尻をどうにか収めている女はナギィの常連客だ。 暗色の特徴的な法衣はただそれだけで彼女が何者かを知らしめる。海淵教の祀り手であることは誰が見ても明らかだ。 イヨン・メルセルタというこの焦げた小麦色の肌をした女は珊瑚の海においては多くの民に敬われる教えの神官だった。 この客は最初こそナギィの画舫をこっそり使っていたのだが、最近はその『静かさ』を利用しようという気がまるでないように見受けられる。 だって、よく喋る。わざわざ静かに操舵しているのに、ナギィから何の返事も無いと知っているだろうに、あれこれ語りかけてくる。 「罪深いのです…いえ教えに反しているというわけではないのですが…脂がスープの上に浮いているのを見ると…凄いんですよ…！」 「…」 返事がないのを知っているだろうに。表情をころころと変えながらナギィへと語りかけてくる。 鈍くさい客だ。画舫から桟橋に移り渡るという珊瑚の海の民なら誰もが出来て当たり前の動きに失敗して運河に落ちること2回。 海淵教の祀り手ならそれなりに支払われているはずの電子通貨たるルコイの支払いに失敗してまごつくこと3回。

3 <a href="mailto:3/3">23/04/12(水)00:31:12</a> [3/3] No.1046184905

こんな調子なのできっと普段の仕事ぶりも駄目駄目なのは予想するまでもない。海淵教のお荷物なのであろう。 その上、美味いものを食べたいけれど同僚にバレたら恥ずかしいから、という理由でナギィを利用していたはずなのにその理由も忘れている始末である。 「元気が出るんですよ。ちょっと体に良くないもの食べて罰当たりだな～という気がしないでもありませんが！不思議と！」 「…」 ナギィは相槌さえ打たないのにイヨンはよく喋る。 理由はナギィには分からない。それに普段からお喋りというようでもないようにも見受けられる。 この大きな胸と尻を法衣の中へ窮屈そうに収めた神官の喋りはあまり上手くはない。説法はともかく世間話は得意ではなさそうだ。 それでも水面に石を投げるような無意味な会話をイヨンは連ねている。ナギィが反応することはないのに、こうも怯まないとこれではまるでナギィが彼女の話に聞き入っているかのよう。 「…」 分からない。オールを漕ぐナギィに分かるのは自分を見つめるイヨンの視線が好意的であるということくらいだ。 まさかイヨンが仲良くなってみたいというだけで常連をやっているなんてナギィには想像もつかなかった。

4 23/04/12(水)00:55:30 No.1046192670

なんか来とる！

5 23/04/12(水)00:57:19 No.1046193137

なんだね昨日今日とTELLA百合デーなのかね

6 23/04/12(水)01:06:26 No.1046195445

無口無表情無感動痩身ゴンドラガールに鈍臭神官をぶつけたまえ

7 23/04/12(水)01:31:04 No.1046201016

足とか尻の大きさ2倍くらい違いそう