ここでは虹裏imgのかなり古い過去ログを閲覧することができます。
23/04/03(月)00:00:55 No.1043111864
暖かな日差し。 爽やかな風。 舞い散る桜の花びら。 「春だなぁ」 ついレッドは呟く。 マサラの桜の木が咲いている。 町を歩くと、どこでも目に入る。 風に乗って、飛んでいく花びら。 咲き誇る花。 綺麗だと、思って目を向けてしまう。 視界に入ると、ついそちらを見続けてしまう。 と、何かにぶつかった。 視線を正面に戻すと、人がいた。
1 23/04/03(月)00:01:54 No.1043112277
「あ、すみません」 「いえ、こちらこそ」 視線が重なる。 と、そこにいたのは見慣れた人だった。 白い帽子に青赤のシャツとスカート。 見慣れた格好の女性。 「あ、ブルーか」 「なんだ、レッドじゃない」 安心したような、謝って損したような感情が混ざった口調で相手の名前を呼び合う。 「桜見てたの?」 「ああ、綺麗だなぁって」 「ふぅん」 気のないような返しの後、ブルーがこちらを上目遣いで見つめる。
2 23/04/03(月)00:02:23 No.1043112480
「アタシと桜、どっちが」 「ブルーの方が綺麗だよ」 「あら嬉しい」 笑いながら、軽く胸板を叩かれる。 「最後まで言う前に先行して言われるなんてねー」 「ブルーはそういうこと言うだろうって、なんとなく予想できたからな」 「アタシのことちゃーんとわかってるのねー。 さっすがダーリンね♡」 ウインクまでしてきた。 あからさまに上機嫌になっている。 交際しているとは言え、彼女のそういった仕草が可愛く見える。
3 23/04/03(月)00:03:15 No.1043112834
「それはそうと、せっかく会ったんだし花見しない?」 「花見?」 聞き返すと、ブルーが頷く。 「たまにはいいじゃない。 綺麗な桜見ながらもっと綺麗な彼女侍らせて昼から呑んじゃいましょ」 「そうだなぁ…、それもいいかもな」 何もない日に、昼から酒を飲む。 大人になったらやってみたいと思っていたことの一つではある。 堕落した大人、と思われるかもしれない。 だけど、いやだからこそ。 一度くらいはしてみたくなる魔力がある。 「レッド、なんだか悪いこと考えてる顔してない?」 「ブルーもだろ?」
4 23/04/03(月)00:04:34 No.1043113304
悪戯を思いついた子供のように、2人で歯を立てて笑う。 子供では絶対にしてはいけないことをしようとしているのだが。 「じゃ、まずは買い出し行きましょう。 それから花見できるとこ探して」 「先に花見の場所探しからにしないか? ニョロ達にその場所に待機してもらってその間に買いに行こうぜ」 「じゃ、どっちにするかジャンケンね」 「いいぜ」 2人とも手を突き出す。
5 23/04/03(月)00:05:39 No.1043113737
「じゃ、行くぞ。さーいしょーはグー!」 「じゃーんけーん、ポン!」 レッドがグーで、ブルーがチョキを出していた。 「それじゃレッドの案にするわ。 どこにしようかしら」 あっさりとこちらの意見に変えて、ブルーが歩き出す。 こちらも隣を歩く。 指が触れたので、手を繋ぎたいというサインだと思ってそうした。 もう何度も繋いだ手。 こうしていると安心できる。 ブルーも同じなようで、こちらを見てはにかんだ。
6 23/04/03(月)00:06:44 No.1043114167
そうして準備を整えて。 「それじゃ、かんぱーい!」 「かんぱーい!」 缶を打ち鳴らし、一気に飲む。 「んー、美味しい! 昼間に飲むお酒っていいわね」 「だなぁ。やってよかったよ」 ブルーシートの上で腰を下ろして、また酒を飲む。 周りでは、2人の仲間のポケモンがいる。 窮屈なボールから出て、彼らも食事を楽しんでいた。 「さすがに全員出したらすごいスペースとっちゃうな」 「いいじゃない。 他の人達もポケモンと一緒に花見してるし」
7 23/04/03(月)00:08:00 No.1043114662
自分たちだけが花見をしているわけではない。 美しく咲いた桜の木が並ぶ公園。 混んでるというわけではないが、ここでそうしている人は多い。 その中にはポケモンと飲食を共にしている人もいる。 レッドたちが浮いているというわけではなかった。 「ちょっと一口ちょうだい」 「おう」 お互い缶を交換して、飲む。 先程飲んでいたビールとは違って、こちらはレモンサワーだ。 柑橘類の甘酸っぱい味が舌を刺激する。
8 23/04/03(月)00:12:22 No.1043116483
「ありがと」 また交換して、元に戻ってからまた飲む。 飲むペースが早い。 いつもより酒を口にする頻度が多くなる。 「なんか、いつもよりか酒が進むな」 「お花見しながら飲むなんて初めてだし。 いつもと違うことしてテンション上がってるのかも」 「そうかもなぁ」 また缶を傾ける。
9 23/04/03(月)00:18:58 No.1043118956
そうしてまた飲んでいき。 気がついたら、もう何個目かの缶を空にしていた。 「大丈夫?なんかふらふらしてるけど」 「んー、大丈夫」 「全然そうは見えないけど」 言われて、レッドは自分が無意識に身体を揺らしていることに気がつく。 落ち着かない。 身体の動きを止めようにも、そうすると変な力が入ってしまう。 「ブルー、ちょっとごめん」 「いいよ」 彼女にもたれると、肩を抱かれる。
10 23/04/03(月)00:27:11 No.1043122022
「あー、ブルーの身体柔らかい」 「もう、変なところ触ったらダメでしょ」 口ではそう言いつつ、レッドを拒んでこない。 むしろ向こうからこちらを抱きしめてきてもいた。 彼女の身体。 何度も触れたことがある魅惑の肢体。 そこに身を預けると安心する。 自分を受け入れてくれる。 そんな気持ちで心が温かくなる。 「酔ったついでにアタシに触りたくなったんじゃないの?」 「それは否定できないなぁ」 邪な気持ちがあったのも確かだ。
11 23/04/03(月)00:33:20 No.1043124047
そうしていると、身体から力が抜けていく感覚がした。 瞼が重い。 今にも倒れてしまいそうなほど、ふらつきが抑えられない。 「眠い?膝枕したげよっか?」 「ごめん、頼むよ…」 抱擁が緩むと、ちょうどブルーの太ももに顔を埋める格好になった。 剥き出しのなった脚の箇所がレッドを待っていたかのように柔らかく、そして張りのある感触で出迎えた。 「おやすみなさい」 「おやすみ…」 返事をきちんと口にできたかわからないが、そのままレッドは意識を手放した。
12 23/04/03(月)00:40:18 No.1043126286
「…ん、ふぁ~あ…」 欠伸混じりに目を覚まして、身を起こす。 「…おはよう、よく眠れた?」 「ああ、おはよう。すごいスッキリしたよ」 「そう…」 今度はブルーがふらついていた。 目も焦点が合わず、瞼が降りそうになってした。 「今度はブルーの方が眠いのか…」 「うん…、お願い」 今度はブルーがもたれてきた。 それを受け止める。 「っとと」 バランスを崩してしまって、そのまま倒れてしまう。 2人の帽子が取れ、シートの上に転がる。
13 23/04/03(月)00:44:53 No.1043127752
「大丈夫か?」 「うん…、おやすみなさい…」 すぐにブルーが寝息を立てた。 規則正しい呼吸音に安心する。 乱れた彼女の髪を撫でる。 指を滑る滑らかな感触。 男の自分とは全く違うもののように思える。 しばらくそうしていると、レッドも眠気が蘇ってくる。 「オレも、またおやすみ…」 誰も止めるものはない。 上を見ると、桜が花びらを落としてきた。
14 23/04/03(月)00:49:50 No.1043129280
ブルーの顔や髪に何枚か落ちる。 眠る美女を彩るような、数枚の花びら。 絵画になりそうな光景。 しばしレッドは重い瞼をこじ開け、それを見つめていた。 写真に収めようと思ったが、身体を動かすのが億劫で断念した。 せめてこの光景を忘れないように、と思ってレッドは瞼を閉じた。
15 23/04/03(月)00:57:26 No.1043131539
「う…」 瞼を開く。 うっすらと視界が開けていく。 目の前にはブルー。 彼女の顔が間近に見える。 「おはよ」 唇を重ねられる。 「…!?」 突然、寝起きでそうされた。 野外のはずなのに。 それを認識し、レッドの意識は覚醒した。 勢いよく身体を起こす。
16 23/04/03(月)01:01:33 No.1043132715
「…あれ?」 すでに周りには人が減っていた。 空は夕暮れ。 帰宅する人も増える時間帯だろう。 「そんなに慌てなくても、どうせみんなこっちなんて見てないわ。 帰り支度で忙しいだろうし」 「そうみたいだなぁ」 脱力するが、その隙にまたキスをされた。 今度は頬に。 「そこに花びらついてるわよー」 指で触れると、確かに花びらが張り付いていた。
17 23/04/03(月)01:05:08 No.1043133786
顔や髪、身体をはたいて花びらを落とす。 ブルーから帽子を受け取って被ると、彼女も同じようにした。 「じゃ、帰りましょう。 アタシお腹空いちゃった」 「今の時間帯だと、花より団子かな」 「花を見るのは素敵だけど、それだけじゃ人間生きていけないからね」 片付けをして、帰途につく。 仲間達もボールに戻して、2人で並んで歩く。
18 23/04/03(月)01:09:10 No.1043134860
「寝てばっかりだったなぁ。 あんまり桜見てない気もするし」 酒を飲んでばかりいた様にも思える。 「いいじゃない。 アタシはレッドと一緒なら何しても楽しいもの」 「…そうだな。オレもだよ」 いつのまにか、手を繋いでいたことに気がつく。 まだ酔いが覚めていないのか。 それとも、無意識でしてしまうほどに常態化していたのか。
19 23/04/03(月)01:13:08 No.1043135891
桜の木の側を通る。 桜は何も答えない。 ただそこに咲いている。 風に吹かれ、散った花びらが道を彩る。 いつもの家路が、違って見える。 「レッド」 「ん?」 「また、こんなことできたらいいね」 「…ああ」 手を握り合う。
20 23/04/03(月)01:14:49 No.1043136344
何にもない一日。 のどかな日常。 それが今日限りなのかもしれない。 明日には、災いが起こるのかもしれない。 だけど、一日でも。 こんな日が続くことを。 それがなくなっても、少しでも早く取り戻せることを。 レッドは願っていた。
21 23/04/03(月)01:15:05 No.1043136392
以上です 閲覧ありがとうございました
22 23/04/03(月)01:16:54 No.1043136817
>「あ、すみません」 >「いえ、こちらこそ」 >視線が重なる。 >と、そこにいたのは見慣れた人だった。 >白い帽子に青赤のシャツとスカート。 >見慣れた格好の女性。 >「あ、ブルーか」 >「なんだ、レッドじゃない」 >安心したような、謝って損したような感情が混ざった口調で相手の名前を呼び合う。 ここラストがお互いの気安さ?出てて好き
23 23/04/03(月)01:19:05 No.1043137319
最近エロ展開が続いてたのでここらで健全なのにしました 流石に野外ではエロさせられない…