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23/02/26(日)23:59:43 助けて... のスレッド詳細

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23/02/26(日)23:59:43 No.1031008614

助けてくれる人。 それはとてもありがたい存在。 自分にも、それができてほしいと思った。 それが、あの人になるとは。 あの人と出会った時には、想像もしていなかった。

1 23/02/27(月)00:00:06 No.1031008771

「うーん…」 身体がだるい。 朝起きて、レッドが真っ先に思ったのはそれだった。 頭が痛い。 喉も痛い。 関節も痛い気がする。 額に手を当ててみる。 いつもより、明らかに熱い感触がした。 「これって、風邪かなぁ…」 口にしてみれば、余計に疲労が襲う。 具体的な名称を言うと、症状まで明確になった気がする。

2 23/02/27(月)00:00:30 No.1031008957

「えーと、体温計どこだっけ…」 億劫に思いながら、部屋を探す。 しばらく探してみたが、見つからない。 「あれ?」 どこにやったのだろう。 心当たりがない。 痛む頭を押さえて考えていると、見かねたのかニョロがボールから出て体温計を見つけてくれた。 「ありがとな…、ニョロ」 礼を言って、熱を測る。 38.5度。 明らかに平熱ではない。 「やっぱり風邪かぁ…」 ベッドに倒れ込む。

3 23/02/27(月)00:00:48 No.1031009084

この体調では外出も控えた方が良いだろう。 今日の予定はトレーニングくらいしかないのが不幸中の幸いだった。 ボールに手を伸ばし、ピカも出す。 「悪いんだけど、薬買ってきてくれないか?」 ピカとニョロが頷く。 念のため、メモ帳に風邪薬と書いてそこだけ破って渡す。 「店員さんにこれを見せたら、用意してくれると思うから。 頼むな…」 財布を持って、両者が部屋から出ていった。

4 23/02/27(月)00:01:09 No.1031009212

「あいつらに任せておけば、大丈夫かな…」 安心して、ベッドに倒れ込んで瞼を閉じる。 すぐに眠気が襲ってくる。 別に二度寝したいというわけではない。 疲れから来るものだろう。 改めて、自分は風邪をひいたと認識する。 「ニョロ、ピカ、頼んだ…」 そう言うと、レッドは意識を手放した。

5 23/02/27(月)00:01:35 No.1031009398

「みんな、今日は晴れてて良かったね」 ブルーが仲間たちに話しかける。 みんな、笑顔を見せてくれる。 たまには、と手持ちを全員ボールから出していた。 都会ならともかく、マサラでなら自然も多くてポケモンを大量に連れていても周りに迷惑をかけることもない。 みんなもたまには外の空気を目一杯吸いたいだろう。 みんなと過ごす穏やかな日。 こういったことは自分が手に入れたくて仕方なかったものだ。 それを今、こうして体験している。

6 23/02/27(月)00:02:31 No.1031009738

こうなれてよかった。 不幸続きな過去だったが、こうして手にした幸福を実感できるのなら今では悪くないとも思える。 「…あれ?」 見覚えのあるものが、視界に入った。 ニョロボンとピカチュウだ。 どちらか片方だけなら、野生のポケモンなのかもしれない。 だけど2体が揃っているなら話は別だ。 このマサラで、その2体に関係の深い人が思い浮かぶ。

7 23/02/27(月)00:02:47 No.1031009844

「ニョロくんにピカちゃん?」 ニックネームを呼ぶと、こちらを見て駆け寄ってきた。 どうやら合っていたようだ。 「どうしたの?レッドは?」 ニョロ達が身振り手振りで何かを伝えようとする。 その内容自体はわからない。 が、この場にレッドがいないということから推測は出来る。 「もしかして、レッドに何かあったの?」 かがみ込んで目線の高さを合わせ、聞いてみる。 すると両者が激しく頷いた。 次にニョロが何かを見せてくる。 紙だ。 そこに風邪薬、と書いてあった。

8 23/02/27(月)00:03:09 No.1031009983

「レッド、風邪ひいたの!?」 ニョロ達に肯定される。 「大変じゃない。アタシも薬局についていっていい? 人間相手の方が店員さんに聞くのもスムーズだと思うし」 了承されたので、両者と共に行く。 「みんなもいい?」 カメちゃんたちに聞いても、反対はされなかった。 彼が体調を崩しているのなら、放っておけない。 助けてあげたい。 単純にそれだけがブルーの頭にあった。

9 23/02/27(月)00:03:26 No.1031010098

それからしばらくして。 「うぅん…」 変な声を出してしまい、それが元でレッドは目を覚ます。 まだ身体が重い。 重りでもついたかのように、動くのに力を必要とする。 布団すら跳ね除けることができない。 元気が取り柄だとは思っていたのだが、それを奪われるとここまで弱るとは。 そんな自分にショックを受ける。 と、額に感触があった。 見上げて見ると、微かに布地が見えた。 おそらく、濡れたタオルだろう。

10 23/02/27(月)00:03:47 No.1031010217

ニョロ達がそこまでしてくれたのか。 彼らには面倒をかけているな、と申し訳ない気持ちになる。 と、ドアが開く音がした。 疲れからそちらを向く気もせず、礼だけ言う。 「ありがとな」 「いいのよ。レッドが辛いなら助けてあげたいから」 予想外の声がした。 人の声。 それも聞き慣れたもの。 「ブルー…?」 「うん。大丈夫?」 「…ああ」

11 23/02/27(月)00:04:06 No.1031010299

ブルーの顔が目の前に来る。 動けないこちらの代わりに、向こうから覗き込んでくれたのだろう。 タオルが外され、入れ替わりに彼女の手が置かれる。 ひやりとした感触。 だけど、女性の手に触れられている。 そう考えたらまた熱が戻ってきたような感覚になる。 「まだ熱いわね…」 「う、うん」 答えはしたが、動揺から少し吃ってしまった。 「食用ある? おかゆかうどんくらいなら作ってくるけど」 「…じゃあ、おかゆで」 「わかったわ。ちょっと待ってて」

12 23/02/27(月)00:07:13 No.1031011402

そう言うと彼女が退室した。 「…まさかブルーが来てくれるなんてな」 そう呟くと、今度こそニョロ達が覗き込んできた。 「ありがとな。ニョロもピカも」 心配そうに見てきた2体も、そう言うと安心したように緊張をほぐした顔になった。

13 23/02/27(月)00:14:34 No.1031014090

しばらく待つ。 ベッドの中で。 そろそろ眠気がまた来そう、と思ったくらいで足音が聞こえた。 「お待たせ。食べれる?」 おかゆを入れた食器を手にして、ブルーが戻ってきた。 近くにあった椅子を引いてそちらに座って、レッドの側に待機する。 「あなたはそのままでいいわ。 アタシが食べさせてあげるから」 「え、えっと…」 「恥ずかしいかもしれないけど、今は言う通りにして。 自分で食べるのも辛いんでしょう?」 「う…」 正論を言われ、沈黙する。

14 23/02/27(月)00:21:52 No.1031016622

「じゃあ、はい。あーん」 「…あー」 彼女に従って、口を開ける。 スプーンが口の中に入れられる。 口を閉じて、おかゆを食べる。 「美味しい?」 「…多分。正直、風邪で味がよく分からないけど」 正直に言う。 不味いとは思わないが、美味いかというと自信を持てなかった。 だがブルーは怒らない。 優しく笑ってくれた。 「仕方ないわ。なら元気になったらまた食べさせてあげる。 またあーんしてね」 「別の意味で味がわからなくなりそうだなぁ…」

15 23/02/27(月)00:30:01 No.1031019427

そうして、また彼女に食べさせてもらう。 食器が空になるまでそれは続いた。 「意外と食欲あったのね。 まさか全部食べちゃうなんて」 食器を片付けて、ブルーが戻ってくるとそう言った。 「ブルーのおかゆがよかったのかもな」 「よかったのは、アタシみたいなかわいい子にあーんって食べさせてもらえたからじゃない?」 「それも否定できないなぁ…」 言う途中で、あくびが出た。 「眠い?寝るならお薬飲んでからにしてね」 「ああ…」 彼女から薬と水の入ったコップを受け取る。 薬を飲んで、水で喉の奥に流し込む。

16 23/02/27(月)00:36:07 No.1031021679

ブルーにコップを返そうと手を伸ばす。 と、そこで力が抜けた。 コップは手放しはしなかったが、身体自体が倒れそうになる。 「あっと」 ブルーに抱き止められる。 「大丈夫?」 「え、あ、ありがとう…」 「いいえ」 背中を撫でられる。 身体に触れる、柔らかな肌。 衣服越しでも、その感触がわかってしまう。 静まったはずの熱が、また顔に登ってしまう。 「また熱出てない?早く寝た方がいいわ」 「う、うん。そうするよ」

17 23/02/27(月)00:39:45 No.1031022996

ブルーが丁寧に、レッドをベッドに寝かせてくれる。 「…ありがとう」 「ううん。じゃあおやすみ」 「おやすみ…」 目を閉じて、眠気に身を任せる。 眠りに落ちる直前、頭を撫でられた気がした。

18 23/02/27(月)00:47:42 No.1031025771

「眠っちゃったわね…」 レッドの頭を撫でながら、ブルーが呟く。 安らかな寝息。 苦しんでるような様子もない。 「ニョロくんもピカちゃんも、多分もう大丈夫よ」 そう言うと、2体がホッと一息ついた。 彼らの頭も撫でる。 「じゃあアタシ帰るわ。 後はよろしくね」 彼が快方に向かっているのなら、もう自分はいなくてもいいだろう。 そう考えて、立ちあがろうとする。 と、それが出来なかったことに気づいた。

19 23/02/27(月)00:51:50 No.1031027203

「あれ?」 手を掴まれている。 ニョロでもピカでもない。 レッドの手だ。 彼に、掴まれていた。 「ええ…」 弱々しい手の力。 その気になれば、容易く振り解けるだろう。 でも、それでいいのか。 自分を頼りにしてきている。 例え無意識で、伸ばしてきた手でも。 救いを求めてくるのなら、受け入れてあげたい。 彼を、助けてあげたい。

20 23/02/27(月)00:56:25 No.1031028838

「もう、仕方ないわ」 観念して、椅子に座り直す。 「レッドの気持ち、多分わかるからね」 1人でいる住処。 そこで体調を崩してしまうのはどうしようもない不安にかられる。 助けてくれる人はいない。 仲間のポケモンはいるが、それでも。 誰かに助けてもらいたい。 そう思うのは自分にもわかる。 だから、苦笑しつつもレッドに寄り添った。 彼の不安を、取り除いてあげたくて。

21 23/02/27(月)01:00:18 No.1031030063

それから、またしばらく後。 「うん…」 また、自分の声でレッドは目を覚ました。 さっきとは違う。 疲労感も軽減されている。 頭ものども、痛みが気にならない程度になっている。 薬が効いたのか。 朝とはまるで違うほどに、身体が軽くなっていた。 が、身を起こそうとして違和感に気づいた。 まだ、何かがある。 何かが自分にのしかかっている。 そんな感覚がレッドを押さえつけていた。

22 23/02/27(月)01:04:30 No.1031031450

「起きた?」 声をかけられ、そちらに目を向ける。 ブルーが、自分に身体を寄せていた。 いや、覆い被さっている。 「ごめんね。 ちょっと眠っちゃってレッドの方に倒れてたわ」 「いや、いいよ」 ブルーが起き上がり、自分もそれに続く。 「ありがとうな。 おかげですごい楽になったよ」 「そう、よかった」 ふっと、ブルーが柔らかく微笑む。

23 23/02/27(月)01:08:43 No.1031032601

「じゃあアタシ今度こそ帰るわ。 レッドも元気になりそうだし」 「今度?何かあったのか?」 「…秘密。ね?」 ブルーがウインクしてそう言うと、ニョロとピカも同意するように頷いた。 「え!?何があったんだよ!?」 「さぁね。それじゃあお大事にねー」 オホホと軽く笑いながら、ブルーが去っていった。 「ニョロ、ピカ。どういうことなんだよ?」 訪ねてみても、両者は目を逸らしていた。

24 23/02/27(月)01:12:34 No.1031033748

「なんなんだろ…」 気にはなる。 だけど、それと同時に温かい気分にもなれた。 1人の家。 助けてくれる人もいない。 そこに助けに来てくれた人。 ブルーに、そうしてもらえた。 その事実が、レッドに元気をくれる。 そんな気がした。 「今度お礼しないとな」 そう言ってレッドはまたベッドに寝転んだ。 早く、体調を治そう。 そして、彼女に健康な姿を見せよう。 まずは、それが礼になるだろうから。 そう思って、レッドは瞼を閉じた。

25 23/02/27(月)01:12:50 No.1031033831

以上です 閲覧ありがとうございました

26 23/02/27(月)01:16:30 No.1031034829

いい…

27 23/02/27(月)01:16:41 No.1031034886

そういえばレッドがブルーの看病をする話は書いたことあるけど逆はなかったなと思って今回のレブルとしました 室内が舞台だとそこに出しても良さそうで二足歩行で手も使えるニョロやピカを酷使しがちです

28 23/02/27(月)01:22:05 No.1031036357

>室内が舞台だとそこに出しても良さそうで二足歩行で手も使えるニョロやピカを酷使しがちです つるや手あるけどガタイ良すぎるフッシーとゴン! そもそも手がないに等しいプテとギャラちゃん!

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