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23/02/15(水)09:47:27 ジオン... のスレッド詳細

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23/02/15(水)09:47:27 No.1026739739

ジオン残党――ジオン系組織による幾度もの大規模な蜂起が鎮圧されてなお連邦政府に対する武力闘争を継続する者たち――との闘いは0080年代に比べればだいぶ小規模なものになったとはいえ宇宙世紀が100年の節目を迎えようとしている今も終わってはいない。 僕は医者だ。だからいたずらに戦火をもたらすだけの彼らの活動の意義を理解できない…と言い切れたらどんなに良かっただろうか。彼らが外部からの支援を受けて活動しているというのは半ば公然の秘密だ。ジオン共和国の自治権の放棄も間もなくというこの時代に彼らを支援できるような余力のある勢力がどれだけあるのか…と心当たりを探そうとしてみること自体が危険な行為であると知っているからこそ、僕らはその問いの意味を知っている。確かなのは彼らの活動に意義を見出しているのは彼らだけではないということだ。

1 23/02/15(水)09:47:40 No.1026739775

「だから」と言うべきか「それなのに」と言うべきか…僕は軍医という仕事を続けている。戦いが終わらない限り、軍医という仕事もなくなることはない。そしてより具体的に言えば僕の仕事…通称「ジオン残党軍討伐部隊」あるいはただ単に「討伐隊」所属の軍医の仕事はジオン残党と戦うためにあちこちへと駆り出される本隊に随行して、主として傷病兵の治療を行うことである。 噂によれば様々な理由から地球連邦軍とジオン残党が言わば「馴れ合い」になっていて、戦いが起きようと血は流れないような場所もあるらしいが、幸か不幸か少なくとも僕の職場であるところこの部隊においては僕の存在意義が疑問視されたことはない。一度戦いが起きれば血が流れ、そうでなくとも戦場というのは病が付きものだ。…今日も僕にはやらなければならないことがたくさんある。

2 23/02/15(水)09:48:00 No.1026739835

昨今のジオン残党の活動地域は連邦のお偉いさん方からしたら「辺境」にあたることがほとんどだ。従って「討伐隊」の仕事もその「辺境」ですることになるのだが、当然ながらそんな場所に満足な医療設備はない。 医者はアスクレピオスの使徒だが、アスクレピオスのように人智を超えた力を振るうことはできない。医療設備がなければ医者にできることはあまりにも少ない…というのは日頃から痛感していることの一つだ。しかしそんな僕にも救いの神と言うべき者はいる。もっともその神は機械の体を持つ巨人だが。 「先生、頼まれてた医薬品はちゃんと持ってきたぜ」 「ああ。ありがとう。いつもすまないね。」 僕は補給物資が満載されたコンテナが積み重ねられた集積所の一角からこちらに手を振る鋼鉄の巨人――ジムⅢワーカーに手を振り返した。

3 23/02/15(水)09:48:19 No.1026739892

「何だい、先生。今日はやけに機嫌が良さそうじゃないか」 「首を長くして待っていたものがくれば機嫌だって良くなるさ。ケチな上層部にこれだけ出させるのは苦労しただろう」 「色々とコツがあるのさ。ああ、そうだ。ここの医療責任者のあんたからもサインをもらわないと」 「責任者ってのはサインしないといけないものが多くて嫌になるね」 「お偉いさん方に同情する気になったかい?」 「実に不本意ながら多少は」 「ガハハ!あんたは相変わらず口が悪いな!」 通信機越しに聞こえる声からだけでも豪放磊落な大男の姿が目に浮かぶようなその声の持ち主であるジムⅢワーカーのパイロットは、確かにその印象に違わないような男だ。どちらかと言えば上背がある僕よりも縦にも横にもデカいし、いつもガハハと笑っている。彼と彼の愛機と知り合ってからもう幾年になるだろうか。

4 23/02/15(水)09:48:40 No.1026739951

ジムⅢワーカーは僕らの仕事には不可欠な存在だ。現地で物流や施設の設営のみならずその他にも様々な作業に従事するジムⅢワーカーがいなければ前線の人間はたちまちその日のパンや雨風を凌ぐ屋根にも不自由することになるだろう。病院の役割を果たす施設を前線に設営し、そこに各種医薬品を取り揃える必要がある僕もその世話になっている人間の1人というわけだ。 鋼鉄の巨人の助力のおかげで円滑に進む作業の何と多いことか。例えばこの「討伐隊」であればジオン残党と直接戦うMS部隊の活躍ばかりが注目されがちだが、僕としてはその後方を支えているジムⅢワーカーたちの活躍もそれに決して劣るものではないと思っている。しかも何かと人手不足な前線においてはジムⅢワーカーは簡易とはいえ武装して物資輸送などの護衛にあたることさえある。現に僕の目の前のジムⅢワーカーはいつもマシンガンを携えている。

5 23/02/15(水)09:48:59 No.1026740006

そこまで考えてからあることに気が付いた。我らが救いの神について僕はこれだけ知っている。ではその救いの神を動かしている者については? 「どうしたんだ、先生?」 「いや、ふと思いついたことがあってね」 よくよく思い返してみると僕はこのジムⅢワーカーのパイロットであるところの彼のことをよく知らない。自分でも述懐したように知り合ってから短くはない共に仕事をする仲だと言うのに。 「なあ君、酒は好きかい?」 「何です藪から棒に?まさか奢ってくれる気にでもなったんで?」 「そのまさかさ。仕事仲間と親睦を深めたい気になったんでね。現在の作戦が終わったら飲みにでも行こうじゃないか」 「おお!そいつはありがたい!ぜひお願いしますぜ!もっともお互い生きてたらですがね!」 そう言うと彼はまたしてもガハハと笑った。僕はその言葉の意味をもう少しよく考えておくべきだったのかもしれない。

6 23/02/15(水)09:49:28 No.1026740105

─── 「…やあ、先生。ちょっとヘマをしちまいました」 彼と再会したのはその僅か数日後だった。 「油断してたつもりはなかったんですがね…」 野戦病院で医者と重傷を負った患者という形で。 「話は聞いているよ。物資の輸送中に襲撃を受けたんだってね」 「腹が減って気が立っているやつらがいたんでしょうな。…先生、物資は?」 「無事だよ。輸送部隊の損害も軽微だ」 「ああ…そりゃあ良かった」 その筋骨隆々としたら体をいつも見上げさせられていた大男は今は簡易病床に横たえられ、僕に見下ろされている。何故だろうか。その姿はひどく現実感がなかった。僕らがやっていることは戦いであり、戦いには流血が伴うというのは身をもって知っていたことのはずなのに。

7 23/02/15(水)09:49:45 No.1026740161

「先生の金で高い酒が飲めるチャンスが不意になっちまった」 「僕だって別に高級取りじゃないからいずれにせよ高い酒は飲めなかったと思うよ」 「ハハハ…違いない」 彼の姿が小さく見えたのは初めてのことだった。 「なあ先生、今は先生は大忙しだってのはわかってる。だが…少しだけでいいから話を聞いてくれませんかい?」 「僕は口の悪さが祟って前線に飛ばされたような不良だからね。少しばかり同僚に仕事を押し付けても今更のことさ」 「それが医者の言うことですかね…」 彼はいつもとは違いどこか寂しそうに笑うと言葉を絞り出すようにして言った。 「先生、俺は……俺はティターンズだったんだ」

8 23/02/15(水)09:50:09 No.1026740248

「…初耳だよ」 「初めて言いましたからね」 僕は軽口しか言えなかった。他に何と言えばいいのか分からなかった。 「大した話じゃないんです…俺は一年戦争で親友をなくした。俺は正義ってものを信じてた。…だからティターンズに入りました。毎日が充実しているように感じられましたよ。新型機だって優先的に回してもらえたもんです」 「こことは大違いだね」 「全くですね」 野戦病院の壁に相当する部分の隙間から生温い風が吹き込んできた。 「ある日のことでした。俺たちはテロリストの拠点の制圧だと聞かされていたんです。信じていたんですよ。自分たちに正義はあると。そうしたら…そしたら…」 嫌な予感がして僕はその太い…今は弱々しく震える腕を取って脈を取った。ああ、どうして嫌な予感ほど当たるのだろう。脈が弱い。

9 23/02/15(水)09:50:34 No.1026740329

「テロリストなんかいなかった。そ、そのコロニーにいたのは…と、年端も行かないガキたちが…」 彼の目はここではないどこかを見ていた。 「俺が全てを知ったのはグリプス戦役が終わってからだった…毒ガス、人体実験、未遂とはいえコロニー落とし…俺がやっていたことは俺が憎んでいたジオンがしたことと変わらなかった。…俺は残党の連中に何か偉そうに言う資格はない」 それは僕が見慣れてしまった…見慣れたくなかった輝きを失っていく目だった。 「…っ!しっかりしろ!おい誰か来てくれ!患者の具合が急変した!」 「いいんですよ先生。俺はもうダメだ…いやこの時をずっと待ってたような気さえする」 「そんなことは…!」 「あんた…自分が思っているよりずっと嘘が下手なんですぜ。知らなかったでしょう?」 僕は思わず自分の顔を触った。引き攣っている顔がそこにはあった。

10 23/02/15(水)09:50:51 No.1026740384

「こんな場所で腹が吹き飛んじまったら助かるものも助からないだろ…なあ先生。ジムⅢワーカーは良い機体だったよ。俺にはもったいない機体だった…」 言葉が出てこない。舌が干からびてしまったようだ。 「あんたは自分で思ってるより冷たい人間でも悪い人間でもないですぜ、先生。むしろ…そうだな…たぶんこの世に正義があるとすれば人の命を救うことなんじゃねえかな」 違う、僕はそんな立派な人間じゃない。 「俺は間違えちまった…あんたは間違えないでくださいね」 何か言おうとしたがやはり言葉は何も出てきてはくれなかった。

11 <a href="mailto:sage">23/02/15(水)09:52:57</a> [sage] No.1026740754

深夜のオリジムⅢ怪文書に触発されて熱に浮かされて書いたやつだから色々と許してほしい

12 23/02/15(水)09:54:01 No.1026740980

いいもん書くじゃ…ほら来た!!

13 23/02/15(水)09:56:03 No.1026741364

ほらきた!

14 23/02/15(水)09:57:39 No.1026741651

空前のジムⅢ怪文書ブーム…

15 23/02/15(水)10:04:00 No.1026742760

ジムⅢ民間払い下げって何時頃だろう…UCですら現役かもしれんのに

16 23/02/15(水)10:08:50 No.1026743627

なあ…ジム3ワーカーはいいだろう…?

17 23/02/15(水)10:09:11 No.1026743693

>空前のジムⅢ怪文書ブーム… いいんだぜザクでもよ!

18 23/02/15(水)10:11:30 No.1026744120

ジェガンが初期型とはいえ転用されるんだからジムⅢも転用されたのはいた…はず

19 23/02/15(水)10:12:37 No.1026744333

トリントンの隅っこに回されるような扱いだから辺境どころか民間に払い下げられるジムだっているだろう

20 23/02/15(水)10:22:36 No.1026746130

ジムⅢはジム→ジムⅡ→ジムⅢって強化パーツ付け足し付け足しでテセウスの船みたいになったMSだから 基礎設計として限界があるのでジェガンが一気に広まる口実もあってこういう話ありそう感が絶妙

21 23/02/15(水)10:26:32 No.1026746851

名目とはいえ作業メカとして生み出されたMSが作業機器に戻るか…

22 23/02/15(水)10:31:33 No.1026747825

いやジムは純粋な戦闘メカな気が…

23 23/02/15(水)10:35:04 No.1026748528

マシンガン装備のジムⅢでも成り立ついつもの護衛任務 しかし目の前に現れたのは同じ旧式、しかしドライセンと呼ばれた重モビルスーツの小隊であった

24 23/02/15(水)10:37:14 No.1026748952

>マシンガン装備のジムⅢでも成り立ついつもの護衛任務 >しかし目の前に現れたのは同じ旧式、しかしドライセンと呼ばれた重モビルスーツの小隊であった すげーな元ティターンズ物資の被害軽微で済む相手じゃないだろ普通

25 23/02/15(水)10:39:46 No.1026749435

ドライセン基本性能あの時代でも高い方なのに…

26 23/02/15(水)10:39:52 No.1026749464

>「テロリストなんかいなかった。そ、そのコロニーにいたのは…と、年端も行かないガキたちが…」 >彼の目はここではないどこかを見ていた。 >「俺が全てを知ったのはグリプス戦役が終わってからだった…毒ガス、人体実験、未遂とはいえコロニー落とし…俺がやっていたことは俺が憎んでいたジオンがしたことと変わらなかった。…俺は残党の連中に何か偉そうに言う資格はない」 おつらい

27 23/02/15(水)10:48:13 No.1026751175

一年戦争経験してる元ティターンズが弱いわけないもんな…

28 23/02/15(水)11:19:24 No.1026757808

発電というものが始まって以来、人類の歴史はいかに電力を生み出すかの歴史と言っても過言ではなくなった。 西暦時代、人はタービンを回す所へ行き着き……そして宇宙に旅立ってはや100年を過ぎて尚、タービンを回し続けている。 火力であり、水力であり、原子力。何か大きな力で以てタービンを回す。そうであれば。 今日の発電事情というものは、モビルスーツが一端を担っていた。 遥か昔、奴隷が石臼を回し粉を挽くが如き光景。回すのはタービンで、回しているのはモビルスーツの金字塔、ザクだ。 MS-06ザク2。性能向上にあたり、体外へ動力パイプを露出させる力技で解決したこの機体は、大気圏内における運用効率が極めて高かった。 パイプを通して、熱を大気が持っていってくれるのだ。時代遅れなんてものじゃない、博物館に飾られるのが妥当な存在は、こうして新たな職場を得た。

29 23/02/15(水)11:19:41 No.1026757881

ザク1機を動かすエネルギー、整備にかかるコストより、それで相応なサイズのタービンを回して得る発電量が勝る。勝ってしまう。 ジオニック社とて想像もしなかったであろう未来。1つ目の巨人が何やら持ち手を掴み、無限に周回するだけの姿。 その身からマシンガンも、ショルダーアーマーも、ニーアーマーさえ取り除かれて酷使されるのは、哀れか。 いいや、そこに誇りはある。戦って誰かの命を守るために生まれたのがMSならば、電気を生み出し多くの人々の生活を守るのも、また戦いだ。 地球人類に恐怖と死を撒き散らした、忌まわしきジオンの1つ目は、今人知れず地球人類の生活を支えている。 無改造のこの機体は、連邦軍に存在したと言われる軽装のジムになぞらえ、ライト・ザク……人々の夜を照らす、明るいザクという意味も込めたダブルミーニングの愛称が付けられている。

30 23/02/15(水)11:20:20 No.1026758002

ていうか深夜の奴とは別なのかよ…

31 23/02/15(水)11:23:49 No.1026758774

サンキューザク!

32 <a href="mailto:sage">23/02/15(水)11:34:38</a> [sage] No.1026761169

>ていうか深夜の奴とは別なのかよ… 別人でゲム

33 23/02/15(水)11:43:06 No.1026763161

ジムⅢでドライセン複数は無理だろ 斧当たったら寝ちゃうしそもそもマニュ抜く手段もないし… というかトラブレ投げつつバズ打ち込まれて終わる…

34 23/02/15(水)11:43:33 No.1026763259

>別人でゲム 怪しいやつめ!撃て!

35 23/02/15(水)11:46:50 No.1026763984

>ジムⅢでドライセン複数は無理だろ >斧当たったら寝ちゃうしそもそもマニュ抜く手段もないし… >というかトラブレ投げつつバズ打ち込まれて終わる… お前ちょっとバトオペのやりすぎだぞ…

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