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23/02/02(木)21:20:59 No.1022212223
「……流石に、寒いね」 白く染まる息、1月のキャンプ場は雪こそ降っていないものの、耳の先が痛くなるほどの寒さに包まれていた テントを張る作業も、もう随分と慣れたものだ。とはいえ、今日のは……まだ、練習しかしたことがないのでしっかりと確認しながら 「やっぱ、冬は荷物が多くなるよね……」 夏に比べて冬は準備するものが非常に多い。ただでさえモコモコに着込まないといけないので、正直行きで結構疲れてしまった部分はある けど、せっかく道具まで買い揃えてしまった以上は徹底的に楽しまないと損だし 冬用のテントに寝袋。その他、諸々 少しずつ買い揃えてようやく出番が回ってきたそれらを、順番に少しずつ広げていく
1 23/02/02(木)21:21:09 No.1022212300
「やっぱ、冬のキャンプはキツイね」 焚火台を組み立てて、その横を見る いつもより少しだけ多めに買った薪の束。このくらいあれば大丈夫か、という安心と若干の不安感 「さて、始めようか」 まずは、寝床を作らないと 新年初のキャンプを成功させるためにも、気合いを入れていこう
2 23/02/02(木)21:21:24 No.1022212404
● 「……ん。こんな感じでいいかな」 テントを張って、さあ一休み……といきたかったけど この寒さだ。まずは火を起こして暖をとりたい。なので、今回は先ほど買ってきた薪を…… 「どんなもんかな………と」 バッグから慎重に取り出した大きめのナイフを、鞘から抜き放つ 何度か実験はしたけど、実際に現地でやるのは初めてだ。物が物だけに少し緊張するけど、何事も挑戦してみなければわからない 以前フェザースティックを作るのに使ったナイフよりも少し大きく刃が厚いそれは、何度触ってもまだ手に馴染まない。自分の手が小さいのもあるけど、こんなものなのだろうか
3 23/02/02(木)21:21:36 No.1022212498
(………チケットに滅茶苦茶騒がれたけどね) 危ないよおおぉぉぉぉと半泣きになってパニックになっていたけど、それでも必要なので何とか押し通して購入したそれ 今まで使ってたナイフでもできないことは無いんだけど、やはり安全の面でも大きめのが欲しかったのだ 「さて、バトニング初挑戦………」 バトニング。ナイフを用いて、薪などを割る技術のこと 鉈などを使えばもっと容易く工程なんだけど……テクニックさえ覚えてしまえば、力も必要なく確実かつ安全に、丁寧に割ることができる 以前から興味はあったけど、正直使ってるナイフの強度その他諸々が気になって……今回、新しいものを購入するに至った、というわけだ 「えと、木目に沿って………」
4 23/02/02(木)21:21:58 No.1022212650
平らな所に置いた薪に、木目に逆らわずに刃を置いて 別の薪を手に取って、刃の先端の背を叩く。力を入れて一気にいくのではなく、何度も叩いて少しずつ。下手に乱暴にすれば最悪刃が割れたりしかねないので丁寧に すると、段々と薪の繊維に沿って綺麗に割れていく。中ほどまで来ても焦らずゆっくりと 「よし、できた」 まずは一本。これを繰り返すことで、焚火に丁度いいサイズの薪を揃えていくことができる 斧なんかを使うよりも細く形の揃った薪を揃えることができるので、焚火の安定感も増す……はずだ 何とか一本できて一息つく。まだまだたくさん作らないといけないんだけど、流石に緊張する ……それにしても、ナイフのグリップが太い。これ、自分の手に合わせる方法は無いかなと 前にちょっと見て見たらナイフ自作キットみたいなのもあったし、そういうのを使って自分用のグリップを作ってみるのも手かもしれない 「それはそれとして、まずは薪を揃えないとね」
5 23/02/02(木)21:22:11 No.1022212736
一本、また一本と薪を揃えていく。慣れてくるとそこそこの早さで仕上げられるようになってきたけど、油断せずにしっかりやっていく こんなことで怪我なんてしたらつまらないどころの話じゃない ていうか、絶対キャンプに難色示されることになるし……それは避けたい と、何度かそれを繰り返していくと炊きつけに丁度いいくらいの薪が揃ってきた。最初はこのくらいでいいだろう 「次は、と………」 もっと小ぶりなナイフ。刃渡り10センチにも満たないそれを取り出す オピネルだったっけ。初心者から上級者までおススメという触れ込みであちこちの動画にも出てたそれは、先ほどのナイフと比べて手によく馴染む 繊維に刃を入れて、ささくれ立たせるようにして薄く、薄く削いでいく 「……リベンジ」
6 23/02/02(木)21:22:23 No.1022212807
フェザースティック。前回のキャンプでは初挑戦して若干……うん、若干失敗してしまったそれに再挑戦 細くした薪の先端近くまで削いでいって、彼岸花の花のようにしてくるりと巻いていく。こうすることで、少しの火種で点火しやすくしていく そっと、そっと丁寧に削いでいって……うん、できた 「前回よりは全然いい、よね」 時々その辺の枝を拾ってきて動画とか見ながら予習した甲斐もあって、前回の失敗作よりはよほど綺麗にできたと思う それをもう一本作って、と 焚火台の上に置いた薪の 「あとはこれだよね……本当に点くのかな」 取り出した金属棒を、カリカリと、カリカリと削ってその粉を焚火台のフェザースティックに落としていく どの程度振り掛ければいいのか、動画を見てもなかなかわからなかったけど……もう少しやった方がいいのだろうか
7 23/02/02(木)21:22:48 No.1022212980
「………あんまり多すぎて大きく火が出ても嫌だし、このくらいでいいかな」 ファイヤースターター。マグネシウムの棒をナイフなどで削って粉末にして、火花を起こしてそれに点火する火おこし道具 慣れればライターを使うよりも簡単でガスバーナーのように場所も取らない……らしい らしいばっかりだな今回は、なんて思いながら丁寧にオピネルで棒を削る そして、ナイフの背で力を入れて棒を引っ掻くように削れば……
8 23/02/02(木)21:22:51 No.1022212995
スレッドを立てた人によって削除されました うんこ
9 23/02/02(木)21:23:00 No.1022213066
「う、うわ!!」 思ったよりも強く火が出て一瞬びくっとなってしまう でも、しっかり火は出たみたいだ。薪の位置を調整して上手く火が熾きるようにして…… 「……ん。できた」 ちょっと、自慢げな顔 誰にも見せないけど
10 23/02/02(木)21:23:27 No.1022213248
● 「……そろそろ、ご飯準備しようかな」 焚火の前で暖まりながらのんびり本を読んでいたけど、そろそろ夕方 キャンプの夜……特に冬は早く訪れる。まだ早い時間から準備して、早めに寝る準備をしなければいけない ……この本、面白いな。続刊出てないか探してみよう 「じゃあ、今日は予定通りに………」 用意しておいた野菜などをくーらーから取り出して、準備を始める
11 23/02/02(木)21:23:40 No.1022213339
ニンジン、タマネギ、ジャガイモ、ベーコン。これらはあらかじめ切ってきたのをジップロックに入れて持ってきたから楽だ あと、アサリの水煮缶。これを忘れたら何もできないからね ホワイトソースに、牛乳。ブイヨン1カケラにローリエ これにあと胡椒と塩。これだけ……と言うとちょっと多いけど、実際やってみれば楽。な、はず 「まずは鍋用意して………」 ガスコンロを用意して、鍋を火にかける まずはベーコン。焦げないようにしっかりかき混ぜていると、香ばしい匂いと共に脂が出てくる 一個楊枝で刺して味見。うん、ちゃんと火が通ったみたい しばらくしてここにカット済みの野菜を入れる。ベーコンの脂だけでも十分に炒められるから、肉ってすごい ここでしっかり火を通すのが大事と書いてあった。丁寧に焦げつかないように火を通して…… 「ホワイトソース、牛乳、入れて………」
12 23/02/02(木)21:23:54 No.1022213434
そしたら、煮立つ直前まで加熱。ここで火を通し過ぎてはいけないのでちゃんと見ておかないと ……いやそもそも、火を使ってる料理中に席を外すのがまず駄目なんだけど 「で、アサリ缶だよね」 アサリの水煮缶を入れて、ブイヨンとローリエも入れる あとは、10分から15分煮込むだけ。あまり長く煮込み過ぎると、貝の味が出すぎちゃったりとろみがつき過ぎちゃうから そしたら、鍋を火から下ろして……コンロの上に、網を乗せて 「ん、できた」 アミの上でフランスパンを焼きながら、ちょっと満足気に 今日の晩御飯……クラムチャウダーの完成 本当は、もっとエビとかイカとか入れてみようかとも思ったんだけど……最初だしできるだけシンプルな方が失敗も無いかなっていうのと、あんまり多すぎても自分が食べきれないから
13 23/02/02(木)21:24:10 No.1022213534
「いただきます」 カリッと焼いたパンをあちちっと手に取り、紙皿の上に その上に、熱々のクラムチャウダーを乗せて……少しふうふうと吹いてから頬張る 「あ、ちち……ん。美味しい」 寒い日だから温かい料理がいいだろうと思って選んだけど……大正解だった 寒い冬風に晒されて冷え込んでいた体に芯まで染みわたる。カリカリに焼き上げたパンの香ばしさも手伝って最高の御馳走だ アサリの出汁はいい感じに出てて香りにも表れてる。鼻を抜ける海産出汁の香りに思わず頬も緩んでしまう もう少し多めに乗せて……パンに染みるくらい。あ、美味しい。これは大正解だ 「ん、飲んでも美味しい……」
14 23/02/02(木)21:24:21 No.1022213609
スプーンで直接飲めば、アサリの出汁と牛乳のまろやかさが合わさって口いっぱいに風味が溶け出す 野菜も煮崩れなんかもしておらず、いい食感だ。個人的に、もう少しニンジン多めでも……と思ったけど、甘くなっちゃうか 「これ、寮でも作れるよね………」 寮で作るならもっと手の込んだこともできるし、試してみたい気もする ……でも、この美味しさはきっと違う この冬空で、テントを張って、焚火に身をさらして。その中でしか得られない美味しさというものは、きっとあるはずだ 「……今は独り占め」 くすっと笑って。この美味しさは、今この場でなければ味わえない物だから 今度、誰かに作るにしても……それとはまた違う今を美味しくいただこう
15 23/02/02(木)21:24:34 No.1022213692
「あ、コーヒー、コーヒー………」 飲み物を忘れるところだった。一度パンを焼く網を下ろして沸かしていくことにする コーヒーに詳しい人から教えてもらった、いい豆。これでまた温まるはず せっかくだし、余った牛乳を入れてマイルドにしてみよう。カリカリと豆を挽きながらその香りを楽しみつつ、色々と考えは巡る 「……今度は、豆も自分で選んでみようかな」 そしたら、また本とかで調べないと 気の早い話に楽しみを託しながら、寒くても温かいご飯の時間は過ぎていった
16 23/02/02(木)21:24:49 No.1022213790
● 「そろそろ、寝ようかな」 焚火を始末し、火の元をしっかり確認して テントの中に入って、LEDランタンを付ける。あえて電球色にしたそれは優しくテント内を照らしてくれて、温かさは無いのに暖房のように心地よい このまま、もう少しこの灯りの下で読書でも……とも考えたけど、目が悪くなりそうだし、何より明日も早いからやめておこう 「タイマーセットして……充電も十分だよね」 明日も一日オフにはなってるけど、出来るだけ早く帰途についた方がいいだろう なにより、同室や友人たちが心配性ばかり揃っててあまり遅くなると何を言われるか。こちとらそんな歳でもないのに、みんな気を揉み過ぎだと思う でも………まぁ
17 23/02/02(木)21:25:02 No.1022213859
「心配されてること自体は、悪い気はしないけどね………」 夏のキャンプとは違う、虫の声も無い静寂。虫刺されの心配をしなくていいのは助かる 冬用の寝袋でも少し寒いので、カイロを入れて 「……おやすみなさい」 誰に言うでもなく、ぼそっと呟いて (次のキャンプも、きっと楽しくなる)
18 23/02/02(木)21:25:14 No.1022213931
その確信をもって……目を閉じる だから、今はゆっくり休もう 帰宅を待っているであろう面々の顔が脳裏に浮かぶ。ああ、帰りにお土産も選ばないと (騒がしい毎日に戻る前に、今は………) 心地よい孤独と静寂の中で……一日の思い出を振り返りながら、微睡の中に落ちていった
19 23/02/02(木)21:25:28 No.1022214024
おわり。タイシンに冬のキャンプしてもらいたかった
20 23/02/02(木)21:27:05 No.1022214687
いい空気感だ…
21 23/02/02(木)21:30:32 No.1022216157
タイシンがでかいナイフ買ったとか知ったら狼狽える心当たりが多すぎる…
22 23/02/02(木)21:33:58 No.1022217511
タイシンファイア警戒してすまない…
23 23/02/02(木)21:34:25 No.1022217661
fu1883305.txt fu1883307.txt 忘れてた 過去の二つです
24 23/02/02(木)21:35:09 No.1022217935
いつ印結ぶのかと…
25 23/02/02(木)21:38:44 No.1022219341
ソロキャンタイシン怪文書有り難い… フェザースティックの辺り特に好きびっくりしてたり得意げな感じになってたりするの絶対可愛い
26 23/02/02(木)21:42:34 No.1022220879
どんどん成長してる…
27 23/02/02(木)21:51:08 No.1022224364
孤独をポジティブに選んで楽しめるようになったタイシン…
28 23/02/02(木)22:05:36 No.1022229751
チケットが今頃あたふたしてそう