虹裏img歴史資料館

1 23/01/27(金)01:36:57 No.1019828022

しゅぽん、と私以外誰もいないリビングに音が響く。何気なしにテレビをつけると、偶然ついさっき収録を終えた、来月私が出演する予定のトークバラエティ番組がやっていた。 ……私は全くバラエティ番組が得意だとは思わないのだけど、なぜかよく呼ばれるのよね……。 中学生の頃から、すっかりまぐろさんに気に入られてしまっている。年はいくつになったん？　と聞かれ、６１０歳よ！　と答える流れももうお決まりだ。 ずっと頑張ってるなあ、私。 あの頃の私が１０年後、こうやってお酒を飲みながらテレビを見て、昔を懐かしんでいるだなんて聞いたら笑っちゃうだろうな。 あとついでに、かえでとこんなに仲良くしているだなんて。

2 23/01/27(金)01:37:24 No.1019828099

ワイングラスに二杯目を注ぐ。そういえば先週もこうやって飲んでいたっけ。 いちごと蘭の家に行って、横にはやっぱりかえでが座って、その横にはらいち。前にはいちごと――蘭が。 「あ」 なんてことを思っている間に、ワインが切れてしまった。 どうしようか……。おつまみのチーズとクラッカーは残っているし、まだ全然飲み足りないし、もう１本開けるというのもなんだか違う気がするし……。 次の１本を決められないままに棚を見回していると、常備しているトマトジュースはまだあった。 うーん、今日は健康的にノンアルコールと行こうかしら……いやいや、やっぱり飲みたい。 と思いながらトマトジュースを睨んでいると、ふと思い出した。

3 23/01/27(金)01:37:37 No.1019828129

そういえば。 蘭が昔、トマトジュースを使ったカクテルを教えてくれたわね。 トマトジュースと……あと何か……ウイスキー？　いやいや違う。そもそもカクテルの名前も忘れてしまった。 昔の私なら――きっと。 蘭が私の好物について教えてくれたことなんて、絶対に忘れなかったのに。

4 23/01/27(金)01:38:06 No.1019828216

「……なんか、駄目ね、今日は」 まだそんなに酔っていないはずなのに、昔のことを懐かしみすぎてしまう。まだそんな年じゃないわよ。 先週昔の仲間たちに会ったからだろうか。皆忙しくて、３人以上であのときのメンバーで集まれるのなんてなかったし――それに。 やっぱり認めたくないけれど、どこか私も、昔の私に決別できていない――ふんぎりがつけられていないのだと思う。 「……とりあえず、飲んで忘れましょう」 昔と違うのはお酒という解決策がある。しかし、一度半端に思い出してしまうとそのカクテルが飲みたくて仕方なくなってしまった。 名前は……なんとかポン、いや違う……使うお酒はジン、トニック、えーっと……。 と、悩んでいたその瞬間、花火のような音と同時に周りから青や赤の煙が立ち上った。

5 23/01/27(金)01:38:26 No.1019828283

かえユリの夜は遅い

6 23/01/27(金)01:39:02 No.1019828395

ちょっとまって急にこられたらびっくりしちゃうじゃん

7 23/01/27(金)01:39:16 No.1019828430

「Ladies and gentlemen！」 「な、何！？　誰！？」 モクモクと立ち上る煙の中に、人影がひとつ。 赤毛のショートカットに、左手にはステッキ、右手にはマジカルハット。その正体は。 「ハーイ！　ユリカ、さっきぶり！」 アイドルマジシャン、一ノ瀬かえでその人だった。

8 23/01/27(金)01:39:46 ID:FrRBqDYM FrRBqDYM No.1019828530

プリマジオルフレスレ最狂

9 23/01/27(金)01:39:56 No.1019828577

「か……かえで！？　どうして？」 かえでは以前渡していた合鍵を振って、いたずらっぽく笑いながら言う。 「いやー、ユリカと一緒に飲みたくて来ちゃった！Sorry！」 「あなたって人は……」 こういうとこ、ほんっと昔っから全く変わってないんだから。

10 23/01/27(金)01:40:08 No.1019828607

DVD担当まっP

11 23/01/27(金)01:40:10 No.1019828619

呆れながら、左手に持ちっぱなしだったトマトジュースを一旦戸棚に仕舞う。 「あれ、今日はノンアルコールの気分なの？」 「いえ、何を飲もうかと……そうだかえで、カクテルって作れる？」 「ああ、Bloody Maryのこと？　作れるよ」 今度は帽子の中からお酒を取り出した。都合がいいのね、マジシャンって人は……。 「ウォッカとトマトジュースをブレンドするだけのシンプルなカクテルだよ！　そこにコショウとかレモンとか足すのもGood！」 「へえ……じゃあ」 椅子に腰掛けて、かえでに注文する。 「作ってよ、ブラッディーマリー」

12 23/01/27(金)01:40:35 No.1019828708

「経験があるわけじゃないから、蘭みたいに上手くはできないケド」 「ううん、なかなかサマになってるわよ」 お世辞じゃなく、バーテンダーさながらにシェイクする様子は相当なものだった。けっこう格好いいじゃない。 「どうぞ」 「ありがとう。これは誰からのプレゼントかしら？」 「こちらのえびポン様からです」 「って、貴女じゃないの！？」 かえでがスマホにつけているイヤホンジャックを指して笑いながら言う。ああ――くだらない。 って、そうだわ。

13 23/01/27(金)01:40:54 No.1019828768

「そうよ、えびポンよ！」 「？　えびポンが……どうしたの？」 「その蘭が昔好きだったマスコットよ」 「ああこれ？　この前おとめと会った時もらったんだ」 ポテポとアランのぬいぐるみストラップも一緒にね、とまたもや帽子の中から取り出す。四次元にでも繋がってるのかしら……。 とりあえず名前が思い出せてスッキリしたわ。 先週蘭に教えてもらったのに、また忘れていたのね、私は――いや、あの日はめちゃくちゃ酔っていたから仕方ないけれど。 とはいえ。

14 23/01/27(金)01:41:16 No.1019828832

私はあのころと――蘭のちょっとした言葉にもどぎまぎしていた頃と違って、大人になったのね。 棺桶以外で眠る生活にも、日傘を差さない日常にも、かえでと一緒の毎日にもとっくに慣れきって。 「かえで」 「何？　ユリカ」 「これからも、よろしくね」 「ど、どうしたのサ、急に改まって」 急な私の言葉に、顔を赤らめて困惑している。 そんなかえでを尻目に、かえでの作ってくれたカクテルを口に含む。 美味しい。 「ほら、あなたも飲みなさいよ。そのためにわざわざ来たんでしょう？」 「うん、じゃあ――お邪魔しようかな」

15 23/01/27(金)01:41:35 No.1019828905

かえではそう言って、私の横に座る。 こんな毎日が、これからも続いていくのだろう。 ありがとう、でもおやすみ。 私の初恋。

16 23/01/27(金)01:42:31 No.1019829095

終わりです 一応言っておくと「ユリカ様の住んでるのがオートロックのマンション」「今は色々落ち着いている」「バラエティに割とよく出ている」は別に映画のネタバレじゃないよ！

17 23/01/27(金)01:42:46 No.1019829145

寝る前に良いものを見た ありがとう

18 23/01/27(金)01:44:38 No.1019829526

ちょうど今日見てきてこれ絶対お持ち帰りするやつじゃん…とやらしい目で見てしまった俺を諫めるちょうどいいかえユリをありがとう

19 23/01/27(金)01:46:17 No.1019829876

ユリカ様めっちゃいいマンション住んでそう ファン濃そうだし

20 23/01/27(金)01:46:28 No.1019829924

ユリカ様はかえでちゃんみたいに強引に引っ張っていくタイプの方がむしろ合ってたのかな

21 23/01/27(金)01:47:40 No.1019830166

蘭ユリ派だけど読んでしまった ありがとうでもおやすみはずるい

22 23/01/27(金)01:50:00 No.1019830646

>ありがとう、でもおやすみ。 >私の初恋。 蘭ユリ初恋学会ですがここだけは支持します

23 23/01/27(金)01:54:44 No.1019831591

こいつらかえで寿司したんだ！

24 23/01/27(金)02:01:21 No.1019832882

かえでさん美人だったなあ…

25 23/01/27(金)02:06:39 No.1019833860

ユリカ様一人でいる時はなんか余計な事ばかり考えてそうなとこある

26 23/01/27(金)02:35:12 No.1019838208

病人久々に見た

27 23/01/27(金)03:08:10 No.1019841603

いいもの見た ありがとう

28 23/01/27(金)03:22:10 No.1019842769

改めて氷の森の歌詞がシリーズファンを殺しに来ている事が実感出来た

29 23/01/27(金)04:35:13 No.1019846452

>改めて氷の森の歌詞がシリーズファンを殺しに来ている事が実感出来た ミ…ミーにはゾンビが墓の下から這い出てきてるように見える…

30 23/01/27(金)04:51:34 No.1019847012

ユリカ様のことをユリカ様と呼ぶ人間は信頼できる