23/01/16(月)20:19:03 「おの…... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1673867943432.jpg 23/01/16(月)20:19:03 No.1016183810
「おの…おのれっ…メイケイエールめっ…!」 鏡を見てもいないのに、自分の肌の色が真っ赤になるのが体温でわかっちゃって嫌になる 突然の出来事で静まり返る教室の中、被害者たるアタシはとても恥ずかしくって俯いていた。クラスメイトのみんなが窓側後ろの席に座るアタシに振り向いてニヤニヤと視線を送っている 何が起こったのかというと…帰りのホームルームが済んで解散となった直後に、廊下から… 「ソングラインちゃあああああああああああん!!!!!!!!!」 という、壁を痺れさせるような大きな叫びが飛び込んできたのだった
1 23/01/16(月)20:19:15 No.1016183882
メイケイエールとは、チームが一緒になったつい最近まで関わり合いがなかった。そもそもクラスが別だったのもあるのだが、数ヶ月前のとあるレースの一件でちょっと気まずかったのだ。昨日に再会して今朝でようやくお互いの誤解を解き、これからはチームで仲良くしていこうと交わした、ただそれだけの仲だったのだが…あれ、そういやアタシのクラス教えたっけ? いやいや今はそれどころじゃない。恥ずかしい思いをさせやがってメイケイエール!急いでアタシは扉の前で待つその彼女に歩み寄る。しかし彼女はアタシを見たとたん、パッ!と咲いた笑顔になってこう言った
2 23/01/16(月)20:19:28 No.1016183965
「会いたくて来ちゃいましたああああああああああ!!!!!!!!一緒に部室行きませんかああああああ?!?!?!?」 なっ…眩しい…!そんな、混じりっ気のない好意をいきなりぶつけてくるな!声は喧しいが…ちょっと嬉しくなるだろう!恥ずかしさで顔が茹でダコのままのアタシは怒るにも怒れず 「お…おう…ありがとうな」 などという照れ隠しのような言葉を吐きながら屈してしまった おのれ…
3 23/01/16(月)20:19:44 No.1016184075
言うべきか、言わないべきか 喜色満面のメイケイエールと共に廊下を歩きながら、その二択のどちらを取るか苦悶するアタシ 色々あった関係なのに、仲良くするため積極的に来てくれるのはとても嬉しくて、だからアタシはあまり拒絶に取られるようなことはしたくなかった。でも、常時大声は流石に勘弁して欲しい… そうだ、優しく…慎重にだ…!彼女を傷付けないようそれとなく指摘するんだソングライン!
4 23/01/16(月)20:20:00 No.1016184183
「…メイケイエール」 「どうかしましたかあああああああ!!??」 「あー…あのな。すぐにアタシのクラスに来てくれて、びっくりしたけど、本当に嬉しかった」 「はい!!!!!!私もお会いしたかったので!!!!!!」 「そっ…そうか…それでだ」 「なんでしょうか!!!!!!!!」 「その声のボリュームは…抑えて欲しいなって」 「え?あっはい」 すると豹変したかのように彼女は落ち着く。その変わり映えに、なんだかひんやりとした嫌な空気が自分の胸をくすぐった。それをどうにかすぐに紛らわしたくて、アタシは雑談のつもりで余計な言葉を付け足してしまったのだ
5 23/01/16(月)20:20:13 No.1016184297
「ほら、さっきクラスでアタシの名前を叫んでたの恥ずかしかったからさ。今度呼ぶときは小さな声で頼むぞ!」 「えっ!?あっ!?ごめっ…!誠に申し訳ございませんでした…!そんなつもりじゃ…」 その一言が怒りとして感じてしまったのだろう、顔面蒼白になったメイケイエールはその場で足を止め、アタシに向けてすぐに最敬礼のお辞儀で謝罪し始めてしまった。マズい!言わなくてもいいことまで言ってしまった…!早く誤解を解かなきゃまた拗れてしまう! 「そっそんなに謝らなくても…次から気を付けてくれれば大丈夫だから」 「はい…すいません…」 「悪意がないのはわかってるしさ!」 「はい…」
6 23/01/16(月)20:20:25 No.1016184387
ハイテンションガールだったメイケイエールの姿は見る影も無くなってしまった。静かに歩みを再開するアタシたち。非常に気まずい…なんとか軌道を戻さなくては… 「でもほら…元気なのはいいなって思ったぞ!」 「はい…」 「"エール"という名前の通り、みんなを応援できそうでいいだろう?」 「あ、いや、この名前はみんなから応援”される”ようなウマ娘になって欲しいって意味でつけた名前らしいです」 「あっそうなんだ…」 「…」「…」
7 23/01/16(月)20:20:36 No.1016184454
どうしよう!?余計微妙な空気になるばかりだ!こうなったらもうしょうがない。あともうすぐで部室だし…かくなる上は強引にっ! 「そっ…そういや今日の朝にアタシが取り付けた約束のことを覚えているか?」 「えっと…お菓子のお返しがしたいことでしょうか…?」 「そう!ここの近辺でコーヒーがとびきり美味しい店を知ってるんだ!奢るからさ、チーム練が終わったら一緒に行ってみないか?」
8 23/01/16(月)20:20:46 No.1016184526
□ 「カフェオレとビターエスプレッソを一つずつ、それと日替わりケーキを二つお願いします」 「かしこまりました」 ソングラインさんは白髪の店主さんに注文を伝えます。手慣れているその彼女の仕草から、私に欠けたこなれ感のようなものを感じてしまいます 初めてのチーム練習を終えた私は、彼女に連れられてとある喫茶店に来ていました。横の窓から街が見える壁側テーブル席、私の向かいにはその彼女が座っています 香るコーヒー豆のいい匂い…店内を彩るレトロな装飾が外の夕焼け空と溶け合っていて、暖かな雰囲気を作り出しています 対照的に私はというと、胸の内が氷のように緊張をし続けていました
9 23/01/16(月)20:21:10 No.1016184693
そっそうだ。今日の出来事の感謝を伝えなきゃっ! 「あの!練習の時、ずっと一緒にいて頂きありがとうございました。練習の内容とか、メンバーのこととか、色々親切に教えて貰っちゃって」 「チームとしてこのぐらいやるのは当たり前だろう?なにも気にすることはないぞ」 強張る私に、大したことではないようサラりと返答するソングラインさん。様々なご迷惑をお掛けしてしまったはずなのに、彼女は嫌な顔一つせず私にさまざまなことを教えて頂きました 「今度何か、このお礼をさせて欲しいです」 「いいっていいって!あーでもそうだな…」 「なんでも言ってくださいっ!!!!!」
10 23/01/16(月)20:21:26 No.1016184806
お手拭きを使いながら少し考えるそぶりを見せた後、彼女はこう続けます 「…お礼とはちょっと違うが一つある。練習のときもそうだったけど、やっぱよそよそしく喋るのをやめにして欲しいな」 「…やっぱり、私の喋り方ってよそよそしいのでしょうか」 「そうだな。せっかく同年代なんだし、アタシもメイケイエールともっと仲良くしたいんだ。もちろん無理にとは言わないが、できれば楽にして接してもらえると嬉しい」 仲良くしたいという気持ちは私も同じでした。ですがそれ以上に、優しくしてくれた彼女にはもうこれ以上嫌われるようなことはしたく無いという気持ちが強くて、あらかじめ距離をとるような態度をわざと取っていたのでした。その上私は…
11 23/01/16(月)20:21:43 No.1016184935
「お待たせしました。カフェオレとビターエスプレッソです。本日のケーキは苺のタルトになります」 「あ、ありがとうございます」 と、複雑な心境の私の元に、ホットカフェオレが運ばれてきました。仄かで上品な匂いが上記と共に立ち昇っています。ソングラインさんは早速ティーカップを持ち上げて珈琲の香りを楽しんでいるようです。とても満足げな笑顔…その様子を私はぼーっと眺めていると、それに気が付いたのか彼女のカップを持つ手が止まりました 「…飲まないのか?」 「え?あの…私も一緒に飲んでも大丈夫でしょうか?」 「当然だろう!不思議なことを聞くんじゃないぞメイケイエール」 「わっわかりました…それでは失礼して…」
12 23/01/16(月)20:21:57 No.1016185032
私もカップを持ちあげ、慎重に口に含ませます。あたたかくも飲みやすい温度で提供されたホットカフェオレの、コーヒーの深いコクとミルクの甘みが綺麗にブレンドされた風味が口いっぱいに広がります。今朝ぶりに緊張していた私の体全体が、その熱でゆっくり融解されていきました 「美味しい…」 「だろう?よかった…」 緊張が緩まり思わず溢してしまった私の言葉を、彼女はニカっと笑いながら掬い取ります。私もなんだかとても嬉しくなりました 一緒に運ばれた苺のタルトも絶品でした。優しい口当たりのタルト生地と鮮やかな苺の柔らかで少し芳ばしい香りと甘さがとても素晴らしくて、ほっぺたがとろけちゃうんじゃ無いかと思うほどによかったです
13 23/01/16(月)20:22:08 No.1016185119
カフェインと甘味と熱で癒された私は、自分を落ち着かせるためのため息を一つつきます。そしてついに、初めて他人に、自分のことを打ち明け始めたのです。この人なら…話を聞いてくださると信じて 「…えっと、実を言うと私は、あんまり器用にコミュニケーションが取れないと言いますか…えと、ソングラインさんみたいに、誰かとフランクに話す方法がよくわからないのです」
14 23/01/16(月)20:22:19 No.1016185199
名古屋レース株式会社社長令嬢 それが、シラユキ一族から養子に出された私に最初に背負わされた肩書きでした ありがたい事に、大好きな育てのお父さんとお母さんは私を実の子の様に、大事にだいじに育てていただきました。反面、社長令嬢としてのマナーや口調だけはとても厳しく、徹底的に教育されてきました その教育は、月一の頻度で付き添い出席する会食での作法は教えてくれても、同級生と親しくなる方法までは教えてくれませんでした 当時分別の付けられないほどに幼かった私は、令嬢としての正しい振る舞いを小学校の同級生に対してもしてしまい、結果お互いの間に不可視の大きな壁を作ってしまったのです。といっても、優しい方ばかりだったので、話し相手として仲良くなる事は何度かありました。ですがクラスメイトやその友達皆さんにとっての私は、ずっと『上品なお嬢様』のまま。その透明の壁が壊れる事は永久になかったのです
15 23/01/16(月)20:22:30 No.1016185279
「敬語なのはそれが理由か…もしかしてさっきのような大声を出す癖ってのは、人と距離を縮めたいがためにわざとやってることなのか」 「その通りです。唯一友達として仲良くしていただいた、親戚でもある同級生から『立場を一旦忘れて、素の自分で他の人と接すればいい』とアドバイスしてくれたのがきっかけで。でも、素の自分がなんなのかわからなかったから…いつもより元気に発言することが、親しみやすさに繋がるのかなって」 そうだったのか…とソングラインさんは呟きます。少しこそばゆいですが、私が喋っている間はずっと、真剣な眼差しで私の話を聞いてくれていました
16 23/01/16(月)20:22:40 No.1016185343
「さっきは悪いことしたな」 「いえっ!あれは私が空気を読まなかったせいですし…」 「まあでも確かにアタシは、今よりもさっきのハイテンションな時のメイケイエールが好きだな」 「…そうなのですか?」 「アタシは元気な奴と一緒にいる方が嬉しいからさ。まあ時と場合によるだろうが…そっちのほうが、きっと楽しいからさ!」 そう言って彼女は笑ってくれました。打ち明け話をした初めての血の繋がりのないウマ娘が、彼女でよかったと、そう思いました 「でも、お恥ずかしいことに…先ほどのように、叫んでいい時とダメな時のタイミングがあんまりわかんなくて…」 「…そうか。ならばわかった!」
17 23/01/16(月)20:22:58 No.1016185483
すると彼女は手に持っていたカップのコーヒーを飲み干し、そのまま笑顔を崩さずにこう宣言しました 「メイケイエールにはこれからもアタシが付いていってやる!なんかあったらすぐに注意してやるからな!」 それはまるでもう、親友にでもなったかのように 「えっと…魅力的な提案で、すごく嬉しいんですけど…流石にソングラインさんの負担になるのでは…?私たちまだ昨日初めて会話したってだけの仲なのに、そんなご迷惑は…」 「いやいや。そもそも同じチームの新人を、ましてや右も左も分からないお嬢様を、そのままほっとくわけにはいかないだろう?そんぐらいどうってことはないさ」 「そう…ですかね」
18 23/01/16(月)20:23:33 No.1016185770
咄嗟に並べてしまう、身についてしまった形式上の謙遜。それとは裏腹に、私はすごくすごく嬉しくてたまりませんでした これからチームメンバーとしてソングラインさんと沢山関わっていく中で、やっと不器用なままの自分を変えられるかもしれない。そうでなくとも私を受け入れてくれる彼女となら、この先きっと上手くやれるのでは無いのかと。そう思うほどに… 感情が私の後ろでみるみると大きくなっていくのを感じました。どうしよう、うずうずする。このままでは胸が爆発してしまって、自分という殻が粉々になってしまうような、そんな不安感。とにかく何かをすることで発散させたい。この気持ちを吐き出したい …あぁもしかして 今の私は、この気持ちを声に出して、叫びたくて仕方がないんだ
19 23/01/16(月)20:23:55 No.1016185937
「…ソングラインさん、ちょっといいですか?」 「どうした?」 「あの…なんだか、すぐにでも叫びたくて仕方がなくなってきちゃいました…」 「唐突だなメイケイエール!?でもさすがに店内は迷惑になるぞ…?」 「そうですよね…ごめんなさい、忘れてください」 「いや待て…そうだな…」 そうするとソングラインさんは少し悩んだ後突如立ち上がり、私の腕を取りながら笑顔でこう続けました 「…店の外ならギリ許されるだろう!叫びに行くぞメイケイエール!」 「は、はいっ…!!!!!!」 「え!?お客様!?」 「アタシの財布とスマホ渡しておきます!すぐ戻りますんで!」
20 23/01/16(月)20:24:12 No.1016186052
叫びたい気持ちを押し殺す方が断然いいのは当然わかっていました。なのにも関わらず、自分の欲に忠実になってしまったのは。こうでもしないと、自分がどうにかなっちゃいそうで。そして彼女がこうやって手を引いてくれるのが、嬉しくって。喫茶店から飛び出した途端すぐに、夜になったばかりの空へ向けて私の全てをぶちまけたのです。この気持ちを悟られないよう、別の言葉で誤魔化しながら 「この店のカフェオレとタルト!!!!!!!!すごくすっっっっっっごく!!!!!!!!!美味しいでええええええええええええええええええええええええす!!!!!!!!!!!!!!!!!!」 「ははっ…すーーーっ…声量の加減を知らないのかーーーーー!!!!!!!メイケイエェーーーーーール!!!!!!!!」 「底なしですよおおおおおおおお!!!!!!!ソングラインちゃあああああああああああん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
21 23/01/16(月)20:24:28 No.1016186184
私たち二人は、トレセンまで届きうるまでに大きな叫びを一緒に轟かせました 今だけは、難しいことなど全部忘れて
22 23/01/16(月)20:25:09 No.1016186449
プレハブ後輩sの結成秘話について妄想してたら一本のSSが出来上がったので共有します 前回 fu1829425.txt
23 23/01/16(月)20:28:35 No.1016187969
エルライの時代はすでにキてる
24 23/01/16(月)20:29:15 No.1016188225
メイソンなのかエルライなのか 何はともあれいい物語だ
25 23/01/16(月)20:30:46 No.1016188924
ガラスが割れそうなシャウトだ…
26 23/01/16(月)20:36:09 No.1016191292
心が叫びたがっているんだ…
27 23/01/16(月)20:39:17 No.1016192745
セントウルでも大体どこも扱いがライバルポジションだったね二人 お陰で池添が二人に分身しとる!
28 23/01/16(月)20:44:04 No.1016194821
>メイソン やめティ~~~~~~~!!!!!
29 23/01/16(月)20:55:16 No.1016199670
普段から叫んでるイメージだけどエールちゃんもいいとこのお嬢様なんだよな…