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タルマ... のスレッド詳細

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23/01/12(木)21:23:39 No.1014696347

タルマエとの距離感を見直した方がいいのかもしれない──俺にそう決意させたのは、マヤノトップガンの配信だった。 可愛らしく人気の高い配信だったが、彼女のトレーナーが配信に登場した日からチャット欄が嫉妬のようなコメントで荒れ炎上。配信を停止するまでに至った。 いくらなんでもマヤノトップガンとそのトレーナーが可哀想だと思ったが──では、自分達はどうか。 エゴサをしても俺達にとやかく言うアカウントは見当たらない……今のところは。 だがウマ娘にアイドル人気的な側面があるのも事実で、マヤノ達のようなことが起きれば苫小牧のPR活動に大きな痛手となるのは間違いない。 ……それにとても寂しいが、いつかはタルマエも卒業して羽ばたいていくことになる。いつか来る別れに向けて、慣れが必要かもしれない。 『ふるさと』の思い出が、辛く悲しくならないように── 「……それで最近、妙によそよそしかったんですね」 「……ごめん……」 ──が、バレた。俺の思惑は速攻でバレた。 丸い瞳を半目にして睨んでくるタルマエに、「最近態度がおかしくないですか」と問い詰められては、ただ正座をするしかなかった。

1 23/01/12(木)21:24:24 No.1014696671

「はぁ……確かに、そういった事例はあります。ウマ娘とトレーナーの関係について口を挟む人たちがいるのも事実です」 その呆れたような眼差しを俺から外すことなく、タルマエは深々と溜息を吐く。 「ですが」 タルマエはタブレットを取り出す。ロコドル活動の一環で購入したそれが映し出すのはとあるウマッターのアカウント──アカウント名は『@Alice_digital』 見たところ、とあるウマ娘愛好家のアカウントのようだが── 「見てください。この方のように快く応援してくださる方もいるんですよ?」 「ほんとだ……」 『nrtbrianさんとtさんまじ尊い……』『S.Crkさんたち推せるー!かみのこかみのこー!』『fjさんとtさんの大立ち回り……あんなもん生の映画ですよ……』……等々、名前は伏せているようだがウマ娘とトレーナーを推していることが察せられる数々のウマート。 どのようにして情報を収集しているのかは不明だが、手製のファンアートまで投稿していた。

2 23/01/12(木)21:24:44 No.1014696827

「あと、これを」 「これは……あの、温泉旅行の時のか」 『──推せる』 そんな一言と共に投稿されていたウマート。それはタルマエと一緒に参加した温泉旅館でのカラオケ大会。どうやらあの時のデュエットが他の参加者に撮られていたらしく、ウマッターで拡散されていた。 「……このように、トレーナーとウマ娘をコンビで推してくださる方たちもいるんですよ。みんながみんな、マヤノちゃんの配信を荒らしたような人たちばかりではないんです」 もちろん、マヤノちゃんのファンの方々も大多数は二人の仲を応援していますよ、と。タルマエは鼻を鳴らしながらタブレットの電源を落とした。 「みたいだな……ごめん、俺が間違っていた」 「本当ですよ……私、傷付いたんですからね? 何の相談もなしに距離を置かれて。今も怒ってます」 「うっ……」

3 23/01/12(木)21:25:10 No.1014697025

彼女のジト目に、自分はなんてバカなことをしてしまったんだろう──そんな思いと共に流れる汗が止まらなくなる。 何と詫びればいいか──必死に頭を巡らせていると、ふふっと、タルマエは緩やかに口角を持ち上げた。 「……なんて、もういいですよ。反省していただいているのはわかりましたし、私と苫小牧のことを思ってくれているのも伝わりましたから」 「タルマエ……!」 「それに、トレーナーさんの心配ごともわかりますから──」 いい方法を思いつきました、と。 タルマエは苫小牧灯台のように頼もしげに人差し指を立てた。

4 23/01/12(木)21:25:37 No.1014697217

数日後。 「これでいいのか?」 「はい。こういうことは一歩ずつ。開拓のように、小さな一歩から進めていきましょう」 『ハスカップを使ってチーズケーキを作ってみました! 我らが苫小牧の星にもご満足できる仕上がりに!』──それは、俺の作ったチーズケーキを笑顔で食べてくれるタルマエの写真を添えたウマート。 投稿者はもちろん俺。タルマエ曰く── 「『あの二人は一緒にいて当たり前である』──そんな認識をみんなに持ってもらえばいいんですよ。今更クリークさん達に五月蝿く言う人もいないでしょう?」 「確かに……」 「これからも、どんどん私たちのことをみんなに知ってもらいましょう。些細なことでも一緒に……所謂、『匂わせ』というやつですね!」

5 23/01/12(木)21:26:29 No.1014697635

それから、タルマエの指示通りに日常の些細なことでもタルマエの存在感を匂わせてウマートをしていくことにした。レース関係はもちろん、プライベートのお出かけの時まで。 例えば、新しくオープンしたスイーツのお店に行く時は── 「これでいいのか? タルマエは映らなくても」 「はい、全部を見せないことで想像してもらうというのも手の一つです」 「なるほど……」 ケーキと珈琲の写真を撮って投稿する。写真の隅にはタルマエの手だけが映るようにする。 また、新しく冷蔵庫を新調した時も── 「ちょっと大き過ぎないか?」 「ウマ娘用の食材の備蓄を入れるとしたら丁度いいくらいですよ?」 「なるほど……」 タルマエの存在感を感じながら、大きめの冷蔵庫を購入した。他に家具を新調する時もタルマエの指示通りにタルマエのことを意識しながら新しく買い揃え、ウマッターに投稿した。

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