虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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    23/01/10(火)21:56:16 No.1014047659

     ある温室に佇む幼いウマ娘が居た。  額に流星を持った鹿毛の少女は、芦毛のぱかプチを抱き締めながらぼんやりと咲き誇る薔薇を眺める。  ちろちろと水道から水の流れる音が温室を満たしていた所、不意にギシ…とドアの開く音がした。  赤みの強い鹿毛の快活な少女が、流星を持った少女に気が付くと顔をパッと明るくしてタッタッタ、と近付く。 「君、見ない顔だね! 此処に来るのは初めて?」 「…ううん、前から来てる。お母様に連れられて」 「そっか! ねえ、もっと此処を見て回ろうよ! 退屈してたんだ! 僕の名前はね───!」  ──…それが運命の出会いとも知らずに…──

    1 23/01/10(火)21:57:34 No.1014048267

     …凡そ10年後。あれから少しだけ古ぼけた温室の中で佇むウマ娘が居た。  彼女は屈み込み、花壇に植えられた薔薇をぼんやりと眺める。憂いや不安と言った表情を携えていた。  短かった赤みの強い鹿毛は伸ばされ、緩やかなウェーブを持って、毛先をリボンで留められていた。  少女が「ほぅ」と溜め息を吐いた時だった。  不意にギシ…とドアの開く音がした。其処にはすっかり鹿毛から芦毛へと生え代わった少女が、古ぼけた芦毛のぱかプチを腕に抱いていた。 「ご機嫌如何。ジェンティルドンナ。それともあの時の様にバロネッサと呼べば良くて?」 「……僕を茶化すのはやめて。シップ」  やれやれとばかりに手を左右に振って、漂う空気を散らす様にジェンティルドンナは言った。 「…何をしに来たんですの。ピンポイントに態々此処へ」 「それは勿論、貴女の事を揶揄いたいから…なんて言うのは冗談でな。二週間位前からアンタがピリピリしてるのに気が付いたから、尾行させて貰った」

    2 23/01/10(火)21:58:03 No.1014048466

     貞淑な乙女らしい言葉遣いから一転、ゴールドシップは彼女の友人らが良く知る言葉遣いへとオセロの様に引っくり返した。 「今度のレース。緊張してるんだろ」 「…言わずもがな、ご覧の通り」  ふぅ。と彼女は珍しくゴールドシップの目の前で弱音と溜め息を吐いた。 「…昔から好きだったよな。オレンジ色の薔薇。花言葉は絆、信頼、熱望、健やか、幸多かれ…縋りたくなる気持ちは分かるよ」  そう呟きながら、ゴールドシップはぱかプチの背中のファスナを開き、中からキャンディを取り出すとジェンティルドンナへ差し出した。 「昔から好きだったよな、マスカット」  鮮やかな緑色の包装に包まれた飴玉を受け取り、ジェンティルドンナは宝石を見る様に摘まみ上げた。 「…お友達の印。そう言って私にくれた貴女の飴玉の味が今でも忘れられませんわ」  そう言うとジェンティルドンナは包装を解いて飴玉を口に含んだ。甘酸っぱい味が、口の中に広がる。 「…不安ですわ。不安なんだよ、シップ。次の大一番、一番を獲れなかったらどうしようって。今まで僕が積み上げ来た物が崩れちゃいそうで」

    3 23/01/10(火)21:58:52 No.1014048849

     こつん、と少しだけジェンティルドンナはゴールドシップの肩に寄り掛かると心を曝け出した。 「心配なんて、喉元過ぎれば所詮はその程度。悩む程じゃないわ、赤毛のバロネッサ。それに貴女は独りきりじゃない。私だって、そして皆が貴女の傍に居るのだから」  ゴールドシップはジェンティルドンナを真っ直ぐ立たせて、彼女に向き合った、そして一輪の花を差し出した。 「ポンチセイア。その花言葉が意味する所は祝福、幸運を祈る、私の心は燃えている、清純。これ以上に今のドンナにお似合いの花なんて無えよ。燃える様な赤毛に燃える様な紅い華。アタシ達皆、誰だって信じてる。ドンナが負けないってさ。だからさ…」  ゴールドシップはそっとジェンティルドンナの髪にポンチセイアを挿した。 「アタシ達の貴婦人は誰よりも麗しく力強いって証明してくれよ。ドンナ」  その言葉を聞いて、ジェンティルドンナは小さく呼吸を繰り返し、そして 「仕方ないな。其処まで言われたら僕の実力、見せ付けないと」  照れ臭そうに、彼女は言った。

    4 23/01/10(火)21:59:17 No.1014049037

    「そうと決まれば、前祝いに行きましょうか? バロネッサ」 「止めてよシップ。恥ずかしいんだから」 「美味しいマスカットのケーキのお店、知りたく有りませんこと?」 「……知りたい!」  そんな少女達の、万華鏡の様な青春劇

    5 23/01/10(火)22:00:09 No.1014049383

    尾終い 僕っ子ジェンティルドンナに頭を焼かれたので シップとドンナが幼い頃に出会っていたら…? と言う妄想になります

    6 23/01/10(火)22:01:56 No.1014050142

    遅くなりましたが2022年マトメとなります fu1810671.zip

    7 23/01/10(火)22:07:19 [🌙] No.1014052414

    素晴らしいですわ!!!!!

    8 23/01/10(火)22:11:48 No.1014054338

    ゴリラアイコンの時点でちょっとううn…ってなる

    9 23/01/10(火)22:41:05 No.1014066846

    わかりやすいアイコンが欲しいですからね 僕っ子ドンナは新しい地平です…