虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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23/01/08(日)00:01:04 パソコ... のスレッド詳細

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23/01/08(日)00:01:04 No.1012908786

パソコンの画面を開いたまま、椅子を退かしてシービーに譲る。いつものように目をくりくりと輝かせて画面に見入るかと思っていたが、ぷいと目を背けた彼女によってその予想は裏切られることになった。 「どうした?明日行く水族館のホームページだけど…?」 「きこえなーい」 アナウンスを流すパソコンからそっぽを向いた彼女は両手を頭の上に回して、耳もぴったり畳んでいた。今自分がついた小さな溜め息も聞こえていないといいのだが。 彼女が突拍子も無い行動に出るのは珍しいことではなく、それに付き合うのも楽しみの一つになって久しい。だが、一度彼女が面白そうと言い出したものに対してこんな反応を示したことはなかった。

1 23/01/08(日)00:01:28 No.1012908967

「…大丈夫だぞ?グロい写真とか載ってないし」 「よくなーい。ネタバレ禁止ー」 思わぬ言葉が飛び出してきて返答に窮する。そんな意識は全く持っていなかったが、彼女はどうやら本当にそう思っているらしい。 「ネタバレっていうか…公式サイトに載ってる紹介動画だぞ?」 「いいから、画面閉じて。 そしたら話すから」 それまでは梃子でも動かないと言わんばかりの彼女に、観念してブラウザを切る。こうと決めたことは絶対に曲げない性格だということは、とうの昔に承知していた。

2 23/01/08(日)00:01:46 No.1012909114

「説明どうぞ?」 「こだわりなの、個人的な。行くところとか見るものはできるだけ調べないで行くんだ」 パソコンを消してソファーに座ると、さっきまでの強情さが嘘のように、頬杖をついた彼女の顔は楽しそうに微笑んでいた。 「じゃ、映画の予告とかも見ないのか?」 「見るよ?面白そうって思えるまでね。 面白そうだと思ったら見るのやめるの」 「はは、なんだそりゃ」 もうお互いに遠慮するような間柄でもなく、遠慮なく笑わせてもらうと、笑わないでよー、という彼女のささやかな抗議も応えるようにどこか優しく聞こえた。 「じゃあ、旅行するときは?行き先は決めないと旅に出られないだろ?」 「行く日と帰る日だけ。あとはなんにも決めない。 全部、着いてから考えるんだ」 彼女らしい返答にもう一度口元を緩ませると、話も自然と弾んでいく。 「ははは、じゃあ初日はどうするんだ?」 「あは、確かに初日はいっつも同じことしてるね。 行くところ考えるの。湯船に浸かりながら。だからいっつも大きなお風呂のあるところに泊まってる」

3 23/01/08(日)00:02:13 No.1012909285

「なんでそこまでこだわるんだ?」 口を衝いて出た素朴な疑問に、彼女は機嫌を損ねた様子もなく語り始めた。 「アタシね、レースで走り出す瞬間が一番好きなんだ。ゲートが開いて、今日はどんな楽しいレースになるんだろうって思いながら、ターフに飛び込むのが。 映画も旅もおんなじ。まっさらなままのほうが、いいものに出会ったときに感動できるでしょ?」 今まで見てきた美しいものを反芻しているのだろうか。それとも、これから出会えるものに胸を躍らせているのだろうか。 いずれにせよ、楽しそうにしている彼女が瞳に浮かべる美しい輝きに、自分は魅せられてここまで来ているのだということを、改めて思い出した。 「わかったわかった。じゃ、動画は見ない。 でも、紹介の文は見るよ」 こちらが提示した妥協案のような何かを聞いて、今度はシービーが不思議そうな顔をする番だった。 「俺は心配性だからな。どうしても細かくチェックしたくなっちゃうんだよ。 いいなって思った店が定休日だったり、面白そうって思った施設が予約しなきゃ入れなかったら、悲しいだろ?」

4 23/01/08(日)00:02:56 No.1012909614

彼女と自分は違う。自分は彼女のようには考えないし、自分と彼女の世界の見え方は、どこか根本的なところで異なっているのだろうと思う。 「だから、間を取ってちょっとだけ見るよ。何かあったら、そのときに俺がシービーに伝える。 そうすれば、シービーはそのままでいいだろ?」 けれど、だからこそそれが愛おしいと思う。彼女と同じになれないなら、彼女の見ている世界を守ることが、自分の務めなのだと確信するほどに。 彼女にできないことをするから、彼女にしかできないことを見せてほしい。そう心から願うほどに、すっかり彼女に夢中になっている自分がいた。

5 23/01/08(日)00:03:25 No.1012909812

「走り出す瞬間が楽しいって思えるのは、ゴールがあるってわかってるからなんじゃないかなって思うんだ。 誰が勝つのか、そこに行くまでに何が待ってるのかはわからない。 でも、想像はできる。何が起こるかは知らなくても、何があるかは知ってるから」 彼女の言葉を反芻して、そこに自分の言葉を混ぜる。頭ごなしに否定するでも、何も考えずに褒め称えるでもない。自分ができること、やらなくてはいけないことはきっとこういうことなのだと、心構えのようなものがいつの間にかできていた。 「ちょっとだけ知ってたら、どんな場所なんだろうってたくさん想像するだろ?大きな水槽があるってわかってたら、その中はどんなふうに見えて、魚たちはどんなふうに泳ぐのかって。 そうしたらきっと、そこに行くまでの道のりもずっと楽しくなると思うんだ」

6 23/01/08(日)00:04:07 No.1012910109

話を始めたときの少し困惑していたような表情は、もう今の彼女にはない。遠くの方にうっすらと見える景色に思いを馳せるような、微睡みの中で夢を見ているような、甘やかな色の瞳がこちらを捉えた。 「…レースもそうかな」 「ん?」 レースそのものの楽しさを語ることは数あれど、普通のトレーナーとウマ娘が話すような誰もが憧れるG1の舞台についての話が、彼女から出ることはほとんどない。他人の賞賛を決して自ら欲しない彼女の口から出たその言葉は、ミーティングの時とは違った、何か感情に響く重みがあった。 「皐月賞出て、ダービー走って、菊花賞出て。そのあとも。 どんなレースになって、どんなライバルが出てくるんだろうって。それを知って、その道のりを想像したら、もっと楽しくなるかな」 けれど、それを語る彼女の表情は── ──いつもと同じように、心から楽しそうに微笑んでいた。

7 23/01/08(日)00:04:28 No.1012910315

「…ああ。きっとそうだよ。 大丈夫だよ。誰にもネタばらしはできないから。どんなに知っても、きっとシービーは退屈しないさ」 なら、自分のやることは決まっている。心のコンパスが向く方に、彼女という船を押す風になるだけ。 その航海の先に待つ、とびきりの絶景を目指して。 「わかった。じゃあ、アタシも間を取るね」 いいことを思いついたと言いたいかのように、彼女の目はらんらんと輝いていた。こうなると自分の仕事が増えることは十分承知しているけれど、トレーナーとして彼女のために働ける一番の瞬間だとわかってもいるから、それを決して拒むことはない。 「きみに話してもらおっかな。これから行く場所のこと。お出かけも、レースも。 アタシの行きたいところも、きみの見たいものも、きみがアタシに話して聞かせてね? それで決めるよ。面白そうだったら、一緒に行こ? ね、約束」

8 23/01/08(日)00:04:44 No.1012910448

何処までも美しく、何処までも自由。 そんな気まぐれな冒険者の、果てない好奇心を掻き立てるストーリーテラー。 「はは、それは責任重大だな」 なんともまぁ、大変で── ──これ以上ないほど、やりがいに満ちた仕事だろうか。 「ふふ、そうだね。ほら、がんばれ、トレーナー。 期待してるから。面白い話、いっぱい聞かせて」 「──ああ。頑張るよ。 シービーがほんの少しでも、楽しいって思えるように」

9 <a href="mailto:s">23/01/08(日)00:05:58</a> [s] No.1012910976

俺は贅沢野郎 最高に顔がいいおもしれー自由な女の羅針盤になって一緒に冒険したい

10 23/01/08(日)00:06:35 No.1012911252

シービーはこういうことやりそうでいいね…

11 23/01/08(日)00:07:37 No.1012911718

ずっと連れ回される側だったのが逆に連れて行ってって言われるようになるんだ…

12 23/01/08(日)00:11:25 No.1012913269

何と言っても顔がいい

13 23/01/08(日)00:19:16 No.1012916475

いろんな奴の脳味噌を焼き続けてる女

14 23/01/08(日)00:21:48 No.1012917464

待ってたぞ贅沢野郎 シービー怪文書とてもありがたい…

15 <a href="mailto:s">23/01/08(日)00:23:08</a> [s] No.1012917987

fu1801807.txt 一応今までの

16 23/01/08(日)00:26:43 No.1012919491

シービーにこのくらい信頼されたいよね

17 23/01/08(日)00:33:31 No.1012922009

多分話すとき自然と距離が近くなってると思う

18 23/01/08(日)00:35:02 No.1012922620

顔がいい浮世離れした女はどうしてこう人を引き付けるのか

19 23/01/08(日)00:38:21 No.1012923777

次のお出かけの場所探して雑誌読んだりしてると肩越しに覗いてきたりするんだよね ネタバレ禁止じゃなかったのか?って聞いたらきみが楽しそうにしてるから我慢できなかったのって言ってくるんだよね

20 23/01/08(日)00:41:39 No.1012925088

シービーと一緒ならどこ行っても楽しいよって言うと嬉しいけどちょっと不満そうな顔するんだよね そのあときみに選んでほしいのって言ってくる

21 23/01/08(日)00:44:52 No.1012926214

このくらいいい女に気に入られたい

22 23/01/08(日)00:54:23 No.1012929772

マルゼンさんとかもそうだけどいかにして勝つかよりもどれだけ楽しくさせてあげられるかを考えることになりそう

23 23/01/08(日)00:58:27 No.1012931220

自由に生きたいと思ってるが故不器用さを補ってあげたい

24 23/01/08(日)01:01:22 No.1012932117

シービーにがんばれって言われたら嫌でも張り切っちゃうと思う

25 23/01/08(日)01:10:23 No.1012934866

別の目線で同じものを見れる関係いいよね

26 23/01/08(日)01:14:04 No.1012936004

スレッドを立てた人によって削除されました ウマガイジdel

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