虹裏img歴史資料館

1 22/12/29(木)23:05:08 No.1009525552

「では、私達は先に失礼します」 翌朝。温泉街入り口のバス停で、トレーナーとフラワーは両親の見送りに来ていた。 「そっちは昼前のバスで帰るんだね？」 「うん。学園の方は距離が近いし、お友達へのお土産を見てから帰るの」 「それじゃフラワーちゃん、頑張ってね」 「うん！お母さんもお父さんも、次会う時まで元気でいてね」 ドアが閉まり、バスが動き出す。 窓ガラス越しに手を振る両親に、二人はバスが遠ざかり見えなくなるまで手を振り返し続けた。 「「……………………」」 バスの気配の余韻も完全に消えて訪れる空白感。二人はしばしそれに浸る。

2 22/12/29(木)23:05:24 No.1009525701

やがて、フラワーがトレーナーの袖を軽く引っ張る。 「トレーナーさん、そろそろ……」 「うん。行こうか」 二人は踵を返して温泉街に戻り、賑やかな大通りを歩いていく。 そして泊まっていた宿を通り過ぎ、さらに奥まったところにある古宿に入った。 「あの、予約していた者ですが──……」 「はい、二名様ですね？お待ちしておりました」

3 22/12/29(木)23:05:40 No.1009525837

「フラワーちゃん、温泉はどうだった？」 「楽しかったですよ、とても」 そしてまた、いつもの日常に戻ってきて。 「これ、お土産のお菓子です。どうぞ」 学園の中庭に設置された木製テーブルを友人達と囲い、フラワーは菓子箱を開ける。 出てきたのは立ち昇る湯気のような、そしてまさに花開く直前の蕾のような形をしたお饅頭。 「おおっ！実にフラワーさんらしいお土産ですねえ！」 バクシンオーの感想に他の面々も同意の頷きをし、そしてありがたく手を付ける。 「おいし～っっ♪」 「お、これが泊まったとこ？シックだけどいかにも温泉キタ！って感じでこーゆー方がアガるじゃん♪」 話作りのため菓子箱と一緒に置かれたガイドブックや写真やら。 その中からパンフを手に取り、ジョーダンが興味深げに読んでいく。 ブルボンもガイドブックをめくっていたが、その間に挟まっていたものがパサリと落ちた。

4 22/12/29(木)23:05:53 No.1009525945

「こちらにもパンフレットを発見。照合…… 　事前に聞いていた宿名との不一致を確認。別の旅館のものと判断します」 「あ、それは……」 「むむ！きっと次回に行く時の候補ですね？さすが優等生仲間、予習に余念がない！」 「あはは、マジ最高のスポットだったわけじゃん」 「──そう、ですね」 フッ…とフラワーの表情が移り変わった。 まどろむように軽く瞼を下ろしここではない内の光景を見つめ、唇は柔らかな笑みを湛え。 ゆったりと紡ぐ声には温かな情がしっかりと込められて。 「忘れられない思い出が、できました」

5 22/12/29(木)23:06:09 No.1009526081

「…………フラワーちゃん、なんか……大人になった？」 戸惑うマヤノの言葉にハッと我に返り、フラワーは取り繕うように言う。 「あ、えっと……きっと温泉のおかげ……かも？」 「ええーーーっ！？大人になれる効能のお湯があるの！？！？」 「あっはははは！あったら激ヤバだし！」 食いつくマヤノに爆笑しながらも、ジョーダンも気になったのかそっちのパンフにも目を通す。 「へえ～っ、こっちには家族風呂があんじゃん。マジいい温泉地だね～」 「はい。次も絶対に行こうって、トレーナーさんと約束してるんです♪」 　　　　　　　　　　　　 こうしてニシノフラワーの『四泊五日』の温泉旅行は幕を下ろすのであった。

6 <a href="mailto:ｓ">22/12/29(木)23:06:24</a> [ｓ] No.1009526194

おしまい。 ニシノフラワーとの間に、かけがえのない絆を感じたひとときだった…