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22/12/20(火)18:22:59 「もう... のスレッド詳細

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22/12/20(火)18:22:59 No.1006119774

「もうじき今年も終わるんだね。何か今年は長かったわ~……」 トレーナー室に備えられたコタツで冬休みの宿題を進めていたジョーダンが伸びをしながらそんな事を言った。 確かに、もう今年は残り数日。もういくつ寝ると何とやら。 しかし、それよりも今年は彼女にとっては長かったようなのが安心した。もう大人になると1年どころか、彼女と出会って二人三脚でやってきた3年間があっという間であるからだ。 曰く、大人になると新しい発見がなくなって、時間が過ぎるのが早く感じてしまうものだと言う。そう言った意味では彼女がまだまだ子供で、まだまだ新しい発見があると言うことは先に大人になった者としては微笑ましく思う。 なんて考えているとどうやら頬が緩んでしまっていたようで、ジョーダンから変な目で見られてしまった。

1 22/12/20(火)18:23:17 No.1006119864

「なにニヤついてんの? なんか面白いこと思い出してたカンジ?」 「あぁ、いや……そうじゃないんだけど、ジョーダンが怪我もなくまた新年を迎えられそうな毎にホッとしてね」 「そーいうトレーナーは不摂生過ぎだっての。アンタのせいだかんね不摂生とかムズい言葉覚えたの」 「良いんだか悪いんだか……」 「いや、マジで。年末進行も大概にってハナシ」 年末進行か。そんな言葉を覚えさせてしまったのも俺のせいかもな。 とは言え、彼女は3年目がもうじき終わりが見えてきた頃だし、年明けから間もない内にURAファイナルズも控えている。他のトレーナーもそれに向けて頑張っている事だろうし、ここで俺も頑張らなければ対策や作戦が完成しない。 今年は年末進行なんて年始に休む前提の日程で余裕をぶっこいてる場合ではないから、年末年始返上の方が正しいか。 「分かってる。“年末進行は”しない。約束だ」 「……なんか含みがある言い方じゃね?」 「嘘は言ってないけど……」 「……ふーん。なら良いけどさ」

2 22/12/20(火)18:23:31 No.1006119934

先刻に述べたように、もう彼女とも3年になる付き合いだ。嘘は言っていないが、真実は述べない大人のやり方にジョーダンが騙されていない気がする。 何しろ彼女は学力こそ悲惨だが地頭は良い方なのだ。理解力もある。この3年で観察眼も鍛えたし、それらのお陰で彼女は相手の言動に対してより詳細に捉え、理解する癖がついた。だからこうして話しているとこちらの思惑がバレているような気がしてならない。 「さ、それよりも宿題を終わらせちゃおう。ジョーダンも年末年始は家に帰るんだから、それまでには完璧にしてゆっくり休むと良い」 「おけ。だからどんどん答え教えて?」 「こら」 「ジョーダン、ジョーダン」 ◆ そして12月31日。今年最後の夜。もう数時間で今年が終わるそんな頃。あたしはいくつも電気がついてるトレーナー棟を下から見上げてた。 「……やっぱ居んじゃん」

3 22/12/20(火)18:24:07 No.1006120098

トレーナーがあの時年末進行はしないとか言ってたけど、含みがある言い方なのが気になってた。トレーナーは気付いてんのか知らねーけど、いつも『嘘は言ってないけどホントの事も言ってないよ』って感じの話の時はクセなのかちょい眉寄ってんだよね。それにこれでもアンタとはもう3年になるんだし、大体何するか位分かるっての。 なんて文句つけてやろーか考えながら暗い棟の階段を上る。トレーナー寮の方はほぼ明かりがついてなかったから、大体のトレーナーも流石に実家に帰ってたりするんだと思う。その点あたしのトレーナーときたら年末年始を潰すつもりなんだからマジで頭いーのにバカでしょ。 「……」 あまり足音は立てないであたしのトレーナー室のドアに耳を当てる。カタカタとキーボード叩く音と風の音。それと……ライブの曲? とりま入ってみるだけっしょ。 「ばんわー」 「え、ジョーダン? 何でこんな時間に?」 「それ半分分かっててきいてんでしょ。ってか寒いし。なんで窓開けてんの」 「暖かいと寝ちゃうかもしれないからね」 「それに……これ、あたしのライブ?」 「あぁ。君のウイニングライブだよ」

4 22/12/20(火)18:24:26 No.1006120210

テレビでデカデカと流されてるのはあたしのこの間のレースの……天皇賞秋のウイニングライブ。なんか必死に走ってたらスーパーレコードとか出してて、さんざんテレビでも取り上げられたっけ。 「うわっ、恥ずいからやめてよ」 「ん、それはすまない」 トレーナーの手元のリモコンでビデオが止まって、テレビの電源も切られる。 突然静かになったトレーナー室で、トレーナーはあたしに話し掛けつつも手を止めてない。あたし知ってる。こーいうヤツの事ワ、ワー……ワーキング、ホリデー? って言うんだわ(※ワーカーホリック)。 「で、なにしてんのアンタは。年末進行はしないけど、年末年始潰して良いワケじゃないかんね?」 「……バレてたのか。本当に成長したねジョーダン。初めの頃は──」 「はいそれも禁止。なんか良い感じにごまかそうとするのもう通じないから」 「──はは、参ったね」 ようやく手を止めたトレーナーが降参とばかりに両手を挙げる。ったく。最初からそーしてりゃ良かったっての。

5 22/12/20(火)18:24:46 No.1006120284

「ホンネぶっちゃけね? アンタどうするつもりだったん?」 「……このまま年を越して、目標を達成したら仮眠するつもりだった」 「しんちょくどーですか?」 「実は目標はとっくに達成していた。……けど、やれることは出来るだけやっておきたかった」 「まじ? じゃあもうオシマイ。目標達成してんならあとは帰るだけよ」 「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺は君の──」 「はいダメ。あたしのタメだとか、そんなの理由にされたくない。てかするなし。あたしの事考えてくれんのは嬉しいけどさ……あたしのタメなら、先ず自分の体を大切にしろっての」 「……」 トレーナーが大変なのはあたしのせいなんだって事は自覚してる。あたしがバカだから、こんなワーキングホリデー(※)にさせちゃったって事も。 「あたしだって勝ちたいよ。もうクサりかけてた……ってゆーか、もうクサってたこんなあたしをここまで引っ張ってきてくれたんだもん。最後まで勝ちたい。走りたい。でも……」

6 22/12/20(火)18:25:18 No.1006120438

……あたしを勝たせたいって、ビッグなウマ娘にするってキモチは、きっとあたしよりもアンタの方が強いんだろうね。あたしは……いつかアンタとバイバイするまでもっと一緒に走りたいキモチの方が大きくなってるのにさ。 「……そうだな。そうだった。自己満足も甚だしいなこれは……」 「はなはな……? まぁ、そーいうこと。分かったらパソコン閉じて、さっさと出かける準備して」 「出かけるって……今から?」 「ったりまえじゃん! あたしがこんな年の終わり前に来たのはアンタを連れていくためだかんね。ほら、あたしの親も待ってっから早く」 「親? 連れていく? ちょ、ちょっと待ってくれ」 そもそも、最初は電話とかメールでトレーナーがまだ作業してるようなら帰るように連絡するつもりだった。でも家族がそんな話を聞いたらそのままにはしておけないとか言い出して、結果実家で年を越す瞬間をどうしようかコタツでぬくぬく考えてたあたしは、こうして親に車で学園まで送ってもらってトレーナーを実家へ連行するハメになったワケ。まだいつメンに送るあけおめメールの写真用のネイルとか考えてねーのに。

7 22/12/20(火)18:25:42 No.1006120550

「ほら~、早くしてよ。こっからあたしのウチまでの時間もあるんだからね。車んなかで年越すとかまじカンベンだからー」 「わかった、わかったからっ」 ここまで寒い中来てあげたんだし、冷凍庫の中のアイスを奪ってトレーナー室の電気も勝手に消す。あわてて出てきたトレーナーを引っ張って、あたしらは夜の暗い廊下を駆けていく。 あんなに昼間はどこもかしこもにぎわっていて、明るい学園なのに、今はどこも暗くて不気味で、車の中で食べるつもりのアイスの冷気よりも空気が冷えきっている。 そんな所をアンタに会うために怖いのガマンして来たのに、出ていく時はあっという間。 ──アンタが居るから、あたしは走っていけるんだ。 「ほら、あれあたしの実家の車。あ、そうそう。前にも言ったけど、あたしの親健康オタクだからそんな目の下のクマ、これからなんて言われっか楽しみにしてるからそこんとこヨロ~」 「えぇ……」 なんてこと、恥ずくて言えるわけないけどさ。

8 22/12/20(火)18:25:55 No.1006120609

「……ま、こんな年末も悪くないかな……」 誰にも聞こえないくらい小さく呟いたそれは、寒さで白くなった吐息と一緒に空中に消えていった。

9 22/12/20(火)18:26:57 No.1006120890

しれっとジョーダンの実家に(しかも年の瀬に)招待されたトレーナーのおはなし

10 22/12/20(火)18:29:10 No.1006121560

積極的なのもいいな…

11 22/12/20(火)18:29:23 No.1006121616

幸せなジョーダンはいくら接種してもよいとされている

12 22/12/20(火)18:51:15 No.1006128781

これはバイバイしない世界線では?

13 22/12/20(火)18:57:36 No.1006130850

そういうネタが美しいから勘違いしがちだがそもそもアプリからしてバイバイしない世界だ

14 22/12/20(火)19:12:05 No.1006135442

ジョーダンが思ってるよりトレーナーってジョーダンに惚れ込んでるよね

15 22/12/20(火)19:30:07 No.1006141242

あと2年ぐらいかけて押し切ってくれ

16 22/12/20(火)19:33:44 No.1006142576

>ジョーダンが思ってるよりトレーナーってジョーダンに惚れ込んでるよね 惚れてるでしょ?って聞けば「(真意はわかった上で)指導者として惚れ込んでる!」なんて返すから ジョーダンも「そ(分かって返事してんなコイツ覚悟しとけよ)」って返す

17 22/12/20(火)19:41:38 No.1006145577

自分でもジョーダンに対して下心を抱いてるなと自覚はしてたけどある時思った以上に惹かれてることに気付いて動揺したところをつけこまれて欲しい

18 22/12/20(火)19:45:32 No.1006147024

ジョーダンが冗談…フフッ…

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