虹裏img歴史資料館 - imgの文化を学ぶ

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22/12/17(土)23:46:14 「はー... のスレッド詳細

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22/12/17(土)23:46:14 No.1005151530

「はーーーーマジしくった……」 トーセンジョーダンは不機嫌だった。 ウマ娘達やトレーナー達がテーブルを囲み和やかに、はたまた賑やかに食事と会話を楽しんでいる食堂で彼女はハンバーガーの乗ったトレー片手に立ったまま眉間に皺をよせている。 (いや昨日やんなかったあたしが悪いんだけどさ……) 今日提出するはずだった宿題の存在を忘れ授業の合間、そして昼休みの初めの時間を使ってなんとか消化し提出、食堂に着くころには既に席は埋まっていた。 (ダメもとで一周してダメなら屋上いくかー…) 一応見落とした空席がないか、人でごった返すテーブルの脇を縫いながら奥へ進んで行く。するとプランターのある仕切りの向こうのテーブルに空のチェアーを見つけた。 (おっあたしツいてるじゃーん、って) 空席のある二人掛けのテーブルのもう一方には食事中の青鹿毛のウマ娘、マンハッタンカフェがいた。 彼女は空になったトレーに手を合わせてからキョロキョロと周りを見回し、プランター越しにトーセンジョーダンと目が合った。 「あ……よかったら、座りますか?」 「あ、あざー…」

1 22/12/17(土)23:47:26 No.1005151953

二人に面識はなく、強いて言えば学園のどこかですれ違ったか、もしくは見かけたことがあったかもしれない程度のものである。 (この子の事全然知らん。マジかーチョー気まず……あっ席立った、帰るんかな) 「あの、もしよかったら……このまま席を取っておいてもらえませんか?」 「え、うん。いーよ(マジかーマジかー……つーか食い終わったのになんで?)」 返事を聞いたカフェはトレーを片付けに向かう。その隙にジョーダンは彼女のことについて必死に記憶を探るが心霊がヤバいということしか浮かばず、考えるのをやめてハンバーガーを頬張り始めた。

2 22/12/17(土)23:47:41 No.1005152049

3口ほど口を付けたところでカフェが戻ってくる。手には湯気の立つコーヒーカップ、スススと人混みの中を縫ってスムーズに元の場所に着席。 「……ありがとうございます、助かりました」 「いや、あたし座ってただけでなんもしてないけど」 「食後にコーヒーを飲みたかったんですが、席を立ってる間に座られてしまうか……心配だったので」 「こんくらい別にいーし、あ、あたしトーセンジョーダン、よろー」 「……マンハッタンカフェです」 自己紹介を言ってからコーヒーを飲んで一息つくカフェ。ジョーダンにはその様子がすごく大人びて見えた。

3 22/12/17(土)23:48:11 No.1005152246

「……カフェさんってさ、いつもここでランチ食ってんの?」 「たまにですが……食後のコーヒーは別の場所で飲んでいます」 「じゃあなんで今日はここで飲んでんの?」 人によっては質問の意味を誤解しかねない聞き方だったが、カフェは素直に受け取って答える。 「そこはタキオンさんと共同で借りている教室なので……今日は薬品の匂いが酷かったので、こちらで」 「なーる……え、教室借りてんの。やば、ビップじゃん」 まるで知らなかった新事実にジョーダンが目を丸くする。ヤバい子と思っていたらいい意味でヤバかった。 もしかしてめっちゃ面白い子なんじゃないかとジョーダンが考えていた時、カフェがハッとした様子で食堂の入り口に顔を向けた。 「あー……やっぱり混んでますよ、本当に食堂じゃないとダメなんですか?」 「あぁ、第六感ってわけじゃないけどここで昼食にしないとダメな気がして……」

4 22/12/17(土)23:48:51 No.1005152542

会話をしながら食堂に来たトレーナー二人組、ジョーダンとカフェはそれぞれのトレーナーと面識があった。 「あ、うちのトレーナーさんじゃん」 「私のトレーナーさんとなにやら話していますね……」 「もう一人はカフェさんのトレーナーなんだ、なに話してんだろ」 今までお互いのトレーナーの交流は目にしたことが無く、どんな話をするのか気になってくる二人。顔を見合わせた後、ウマ耳をトレーナーの方へ向け注意深く内容を聞き始めた。 「ふぅやっと座れた、もう少し早く来ていれば苦労しなかっただろうに。お時間取らせてしまって申し訳ないです」 「いや、俺のほうこそ話し込んだ割にあまり参考にならなくて悪かった」 「いえ……まさかマンハッタンカフェの爪のトラブルがそこまで特殊だとは思っていなかったので」 爪の話が出てきて納得した様子のカフェと疑問符を浮かべるジョーダン。盗み聞きの途中だが気になったので本人に質問する。 「カフェさん爪でなんかあった系?」 「はい……元々爪が弱かったので、デビュー後はよく怪我を」 「あたしとおんなじじゃん!あたしも爪弱くてデビューしてからしばらく走れなくてマジ終わった~って感じだったわ」

5 22/12/17(土)23:49:35 No.1005152898

意外な共通点が見つかり、親近感を覚え表情が柔らかくなる二人。そんな様子を尻目に神妙な顔でトレーナー達が会話を続ける。 「それにしてもお前、まだトーセンジョーダンの爪のケアのこと考えてたんだな。治療は済んだと聞いてたんだが」 「そりゃあジョーダンが抱えてた一番の問題ですから。元々爪が弱い以上根治した、再発はしないと断言されない限りは備えますよ、先輩だって同じ考えでしょう」 「うーんそう言われたらそうだけど……カフェの場合は自分で爪に負担がかからない走りを完成させてしまったからなぁ」

6 22/12/17(土)23:49:49 No.1005152988

……自分の居ない所で改めて自分の話をされてむず痒さを覚える二人のウマ娘。ジョーダンはう~~と唸りながら付け合わせのポテトを咀嚼し、カフェはカップのふちを指でなぞり続けている。 「もしかして担当が自立して寂しいんですか?」 「そんなことはない……と思う、相変わらずなにもない時はアンティーク部屋で一緒にくつろいだりしてるし」 「……いきなり惚気ないでくださいよ、適切な距離感じゃありませんよそれ」 「ぶふっ!の、惚気ではないだろ!ただ読書とか簡単なデスクワークのときにお邪魔してコーヒーをご馳走してもらってるだけだ、至って健全だよ」 カフェのトレーナーは疚しいことなどないというように話しているが、当のカフェ本人は顔を赤くして置かれたコーヒーカップに平行になるほど俯いていた。

7 22/12/17(土)23:50:16 No.1005153152

「へーカフェさんってコーヒーいれられんだね、バリスタってやつ?」 「……いえ、資格を持っているわけでは。こだわりがあるだけです」 「つーかなんもしないで一緒にいるってじゅくねんふーふみたいじゃん」 話題が逸れたと思っていたのにデリケートなところをつつかれて頬の赤さが増す。ギャルの緩急は侮りがたい。 「っ……!そこは触れなくていいですからっ……」 もうやめてと言わんばかりにカフェは掌を突き出して待ったをかける。まだトレーナー達の雑談は続いているので会話を切り上げて再び意識をあちらに。 「不適切だとか言ってるけどお前はどうなんだお前は」 「教え子と指導者の関係そのものだと思いますよ……多分」 「多分ってなんだそりゃ……秀才のお前が言い切らないとは珍しいな」 「初めての担当ウマ娘だからというのもありますが、別れの時を考えるとどこまで踏み込んでいいやら……」 「ふーん……つまりもうちょっと踏み込みたいと」

8 22/12/17(土)23:50:52 No.1005153428

「そう言うことじゃなくて!……ジョーダン本人はすでに別れのことを考えてるようでしたから、自分も少し考えただけです」 「自分が悲しまないようにしてるだけのように思えるが」 「っ!……そうかも、しれません。辛いですよ、いつか別れるだなんて」 「なんだかんだ言ってても結局担当に惚れこんでるわけだ」 「そりゃそうでしょう、3年以上共に過ごしてるんです。ジョーダンは走り以外の魅力にも溢れた子ですよ、三女神に誓ってもいい」 定食を前にして自信満々に誓うなどと言っているヒトミミの担当ウマ娘は、紙ナプキンで顔を覆って今にも後ろに倒れそうなほどのけ反っていた。 「いや言ったけどさー……あたしのメンドーみきれなくなったりしたらって言ったけどさー……!」 「……とても、大事に想われているんですね」 「うん……ホントあたしにもったいないくらいのトレーナーだと思ってる……」 くしゃくしゃになったナプキンを握りしめながらジョーダンが呟くように返す。その瞳は感情で溢れていた。

9 22/12/17(土)23:51:24 No.1005153661

「周囲からジョーダンやジョーダンへの指導方法について色々言われたこともありましたけど、ジョーダンを担当出来て良かった」 「気持ちは分かる、カフェも心霊やら気味が悪いやら言われてたけど、彼女のことを知れて良かったと思うよ」 「さて、ちょうど食べ終わって話の区切りも付いたし戻りますか」 「そうだな、あぁ次都合が合ったらお前の爪のケアに関する知識もぜひ共有してくれ」 「構いませんよ、資料を揃えておきますから……――――」 椅子を引く音が聞こえて、トレーナー達の声が遠ざかっていく。やっと終わったと言わんばかりに二人して大きなため息。 「……盗み聞きなど、するものではありませんね……」 「それなー……メシ食ってるだけなのにチョー疲れたわ……」 十数分前までぎこちない会話をしていたとは思えないほど打ち解けた二人の雰囲気は、死線を共に潜り抜けた戦友そのものである。

10 22/12/17(土)23:51:49 No.1005153808

「……あの、コーヒーはお好きですか?」 「ん?まー好きかも、スタホとかターフィーズとかよく飲むし」 「でしたら、後日私の部屋に遊びに来ませんか……?おもてなししますよ」 「マ?あたしが出入りしていーの?」 「構いません。チェーン店程ではありませんが、コーヒーのクエストも受け付けてますから……お気軽に」 ジョーダンは少し考え込み、思いついたような表情を浮かべてスカートのポケットを探ってスマホを取り出す。 「じゃーさ、LANE交換しよ。そのほうがいついるかとか聞きやすいし」 「……ふふっ、いいですよ。よろしくお願いします……」 縁とは奇妙なもので、不釣り合いに見えて、意外にもウマが合う。

11 <a href="mailto:おわり">22/12/17(土)23:52:08</a> [おわり] No.1005153939

「あれ、カフェさんアイコン初期のまんまじゃん」 「あぁ……写真を撮ったり撮られたりすると、たまに良くないものが写り込むので……」 「やば……ツーショ撮んのやめとこ……」

12 <a href="mailto:s">22/12/17(土)23:53:08</a> [s] No.1005154355

相席シリーズが好きなので今更リスペクト 甘口怪文書の適性がないのでこれで失礼する

13 22/12/17(土)23:53:09 No.1005154364

抱けーーーー!!!

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