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  • 泥やや早め のスレッド詳細

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    22/12/16(金)17:49:03 No.1004644255

    泥やや早め

    1 22/12/16(金)18:09:02 [1/2] No.1004650321

    「なんだ、泊まるところ探してるのか?だったらあたしの部屋に泊まればいいよ」 「えっ」 鎧塚博士の何気ない言葉に目が点になった。全く思いがけなかった。つい聞き返してしまったくらいだ。 「いいんですか?私たちが使っちゃって」 ジュラシックパークのロゴが入ったスカジャンのポケットに手を突っ込んだ博士が頷く。 「気にするなって。恩は返せるうちに返さないとな。  あたしはこれから札幌へ行った後に東京だ。渡したカードキーは合鍵だから、出ていく時は梓希がそのまま持っていってくれ。  もっとも寝泊まりにしか使ってないから金目のものは置いてないし、泥棒が入っても困らないんだけどな」 問題がひとつあっさり解決してしまった。いいのかな、本当に…。 男臭い喋り方をし、チェシャ猫のように微笑む博士の表情に無理や遠慮のような色合いはなかった。 「あ、ありがとうございます!」 「構わん構わん。お前らがワケありなのはだいたい分かってるしな。なんだか昔を思い出すよ」 「昔?」 「ん、ああ」 博士が少し遠い目をする。2月の函館はまだ真冬だ。春の青空は未だ遠い。雪のちらつく曇り空を見上げる博士の視線は本州の方を向いていた。

    2 22/12/16(金)18:09:12 [2/2] No.1004650371

    「あたしが高校生だった頃の話だから、もう26、いや7年も前のことになるか。常識の裏側にも世界があると知る機会があった。  幼馴染が実は魔術師でした、なんて大したホラ話だけどな。そいつらの間で騒動があって巻き込まれたんだ。  内容が内容だけにおいそれと誰にも話せない昔話さ。卒業以来あいつらとは会ってないが、今頃どこで何をしているやら」 博士は温かみのある溜め息混じりに言った。 お前らひょっとして魔術師ってやつだろう、といきなり看破してきたのはそういうことだったらしい。 レンタカーの手配が済んだらしく、テアさんたちが事務所から出てくる。おーい、と手を振っているのを見た博士が微笑みながらスーツケースを持ち上げた。 「お前らが函館で何をしようとしているかは知らんが、せいぜい気をつけるこった。  あたしの知る魔術師ってやつはどうも命を安く捉えがちだ。冗談じゃない、命あっての物種だろ?」 「…はい」 「ま、でも無茶せにゃならん時はどうしたって来ちまうんだけどな。その時は根性だ!じゃあな。部屋は大事に使ってくれよ」 そう言い残し、まばらに雪が降る中を小柄な古生物学者は未知の反対方向へ歩き去っていった。

    3 22/12/16(金)18:19:34 No.1004653544

    > あたしの知る魔術師ってやつはどうも命を安く捉えがちだ。冗談じゃない、命あっての物種だろ?」 あの三人はね…

    4 22/12/16(金)18:44:46 No.1004660814

    カイチョーはちゃんと夢を叶えたんだな…