22/12/10(土)22:41:02 寝苦し... のスレッド詳細
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画像ファイル名:1670679662935.jpg 22/12/10(土)22:41:02 No.1002692323
寝苦しさを覚えて、目が覚める。 首筋にあたるすぅすぅと小さな寝息。背中越しに伝わってくる体温。そして、圧迫感。 隣で寝ているルナは、俺を抱き枕さながら上半身に腕を、下半身に脚を回してガッチリと拘束していて、かろうじて左手が動く程度だ。 二人で一緒に寝ると起きた時、俺がルナに抱き着いていたり、逆に彼女が俺に抱き着いていたり、お互い向き合っていたり、はたまた背を向けていたり。 いろんな寝相があるけれど、こうやって強く抱きしめられるのは初めてな気がする。 お互いに抱きしめ合うのもいいけど、寝ている彼女に抱きしめられる皇帝専用抱き枕になるのも良いものだ。 ぼんやりとそんなことを思いながら、ふたたび眠りに入ろうとした時だった。 あれ?なんだか抱きしめる力が強くて、ちょっ、苦し……。 「ぐえっ」 ぎゅっと強く抱きしめられて、肺から空気が漏れ、生き物が潰れるような無惨な悲鳴が喉から飛び出てゆく。 「ん」 「トレーナー……くん」 目覚めたのか後ろからまだ状況をいまひとつ理解していないような、寝ぼけ声が聞こえてくる。
1 22/12/10(土)22:41:47 No.1002692610
「ゲホッ……ルナ、ちから、つよっ……」 かろうじて動く左手を使って、ルナの手をぽんぽんと叩くと彼女の力が緩む。 「えっ、あっ……すまない」 「だ、大丈夫」 なんとか荒れた呼吸を整えてから「なんか、あった?」と尋ねる。 壁掛け時計のカチコチと鳴る音をしばらく聞いていると、ゆっくりと彼女が口を開く。 「嫌な夢を……とても嫌な夢を見たんだ」 「……どんな?」 「どこを探しても、トレーナー君が居ない……そんな夢」 抱きしめる力が少し強くなって、それに対して彼女の手の上に自分の手を重ねて指を絡ませる。 「どこにも行かないよ」 「君を置いて、どこかに行ったりしないさ」 彼女は「うん」とぽつりとつぶやくと、込められている力が少し弱くなる。
2 22/12/10(土)22:42:14 No.1002692745
「あー……前に、さ」 「俺が嫌な夢を見て、それで君が俺の部屋に来て弓を鳴らしてくれたことがあったろ」 「そんなこともあったね」 「あの時、どんな夢を見たのか言わなかったけど……あれ、君に契約解除を突きつけられる夢だったんだよな」 「私が、そんなことをするわけがないじゃないか」 「そうだな」 優しい声とともに、彼女の手があやすかのよう俺の頭を撫で、動きにつられて、ふあ、と自然に欠伸が出る。 彼女の為に弓の弦を鳴らすことは出来ないけど。 もう一度だけ、彼女の手を握る。 「おやすみルナ」 「おやすみトレーナー君」
3 22/12/10(土)22:42:50 No.1002692953
ふ、と自然に目が覚める。 目の前には、カーテンの隙間から差し込む朝日によって艶やかに輝くルナの鹿毛と、白い首筋。 いつのまにか夜中とは逆となって、俺が彼女を抱く体勢になっていた。 起きたときに寝顔が見えないのは残念だけど、これはこれでというものである。 そっと髪を指で掬って陽に当てて、流れるような髪と宝石のような煌めきを楽しんでいると、邪魔をするように起床時間を知らせる携帯端末の目覚ましアラームが鳴り響く。 「はぁ……」 5分でいいから二度寝したい、そんな思いを押しとどめながら端末を操作して音を止める。 俺の寝起きに関しては彼女よりはマシな程度。でも、やらなければいけないことがあるのだから仕方がない。 二度目のため息をついて、起き上がろうとしたときだった。 右脚が何かが巻き付いているような、思うように動かない。 なんだ?とシーツをめくると、一体どうやったのか、睡眠中の彼女は器用に尻尾を俺の右脚に巻き付けている。
4 22/12/10(土)22:43:25 No.1002693160
脚を動かそうとすると尻尾の締め付けがきつくなって、ベッドから離れることを許さないと言わんばかり。 どうしたもんかな、どのみち起きてもらわないといけないのだから起きてもらおうか。 そんなことを考えていた時だった。ルナの耳がピクピクと動く。 「……ん」 ゆっくりと彼女が体を起こして――また頭が枕へと戻る。いつものパターンだ。 「おはよ」 「はふ」と欠伸だけが返ってくる。 窓の向こうから、チチチと雀のさえずりが聞こえる。このままずっと過ごして居たくなるようなゆっくりとした時間。 それでも、もう一度彼女を起こそうとした時だった。
5 22/12/10(土)22:43:52 No.1002693322
「……トレーナー君、いくら私が起きないからって」 「尻尾を握らなくてもいいじゃないか」 いやいやいや。思わず笑いだしそうになるのを抑える。 「俺が握ってるんじゃなくて、君の尻尾が俺を握ってるんだよ」 ルナは、唸りながら再び半身を起こして眠たそうに眼を擦る。ようやく自分が巻き付けている側であることに気が付いたようで。 しゅるると擦れる音を鳴らしながら、尻尾が解かれてゆく。 「尻尾を脚に巻き付けるだなんて、もしかして俺がベッド抜け出した後一人になるのが寂しかった?」 横目でちらりとこちらを見てきて。 「そうとも」 ベッドの上に仰向けに引き倒されて、手首を押さえられる形で彼女に上から覆い被さられる。
6 <a href="mailto:おわり">22/12/10(土)22:44:36</a> [おわり] No.1002693606
「朝、目が覚めた時、ベッドに一人きりにされている私の気持ちを考えてほしいものだね」 「大体だ、私を一人にしないと言った傍からこれだよトレーナー君」 「それは、その……」 ルナをベッドに一人置いて行ってしまうのは、先に朝の支度をしないといけないし、彼女の寝起きの悪さゆえ仕方なくそうなってしまう。 彼女が寮に居た頃のように一人で起きてくれたら良いだけなのだが、こうやって甘えられるというかワガママを言われるのも嬉しくあって。 「えっと、その、ごめん、なさい……?」 彼女は眠たげな眼を細めてにっと微笑むと、俺の鼻先に口づけを落とす。 「もうちょっと朝の起こし方を考えて欲しいね」 そう言うと彼女はベッドから降りて、ゆらりと尻尾をなびかせて寝室を出てゆく。 うーん?明日はどんな起こし方にしてあげたら良いか。まあ、別に今まで通りで良いのかもしれないけども。 皇帝の朝の起こし方。悩ましくも楽しい問題を抱えて起き上がると、彼女のあとに続いて寝室を出た。
7 22/12/10(土)22:45:36 No.1002694017
ありがたい...
8 22/12/10(土)22:50:31 No.1002695919
そういえば寝起きが悪いんだっけカイチョー
9 22/12/10(土)22:52:57 No.1002696866
弓の話どっかで読んだな...
10 22/12/10(土)22:55:19 No.1002697756
>弓の話どっかで読んだな... あれの後日談的というか何年も経ってようやく怖い夢見たんだよと告白できたトレーナー君です
11 22/12/10(土)23:09:06 No.1002703690
>>弓の話どっかで読んだな... >あれの後日談的というか何年も経ってようやく怖い夢見たんだよと告白できたトレーナー君です あっちの話も読みたい...
12 22/12/10(土)23:16:35 No.1002706957
ウマ娘に抱き枕にされるのコワー…
13 22/12/10(土)23:20:14 No.1002708660
トレーナー君相手にわがままになるカイチョーありがたい…
14 22/12/10(土)23:20:48 No.1002708958
>ウマ娘に抱き枕にされるのコワー… だがウマ娘を抱き枕にできる
15 22/12/10(土)23:30:19 No.1002712897
睡眠中という一番無意識の時に尻尾使ってトレーナー君を傍に居させようとするルナちゃんいい…
16 22/12/10(土)23:49:23 No.1002720471
独占欲を出す会長は健康にいい
17 22/12/10(土)23:52:04 No.1002721478
まさか続編が見られるとは